米国500種株価指数(S&P500)は米国経済の強さを表し、景気循環の先行指標として使われる時価総額加重平均方式で算出される指数です。SPXまたは単にS&Pとされることもあります。この記事では、米国500種株価指数を取引するための戦略と秘訣について解説します。
米国500種株価指数(S&P500)の取引をおすすめする理由
米国500種株価指数の取引では、短期取引でも長期保有しても米国の株式市場に分散投資できます。
その他、米国500種株価指数を取引する理由がいくつかあります。
- 明確なチャートパターンが現れやすく、取引開始と決済のタイミングを示すシグナルがわかりやすい
- スプレッドが狭いため、新規注文と決済時の取引コストが低い
- 包括的なテクニカル分析とファンダメンタルズ分析をおこなうアナリストによって、広範囲にわたりカバーされている
- 1日ほぼ24時間、週5日取引されているため、柔軟な取引ができる
米国500種株価指数(S&P500)の取引方法:戦略の重要性
米国500種株価指数の取引においては、戦略が最も重要です。プロのトレーダーには、成功に必要な一連の指針と原則があります。
取引戦略の重要性
- 効果的な取引戦略により、マーケットのノイズを無視し、取引の開始と決済のタイミングを示すシグナルに集中できる。
- 戦略が、予め決めておいた水準での新規注文、決済、ポジションサイズを可能にする。プロのトレーダーは取引を始める前から、自分が負うリスクと得られる利益をわかっている。
- 戦略がトレーダーの感情を制御する。レバレッジ、リスク管理、新規注文と決済の位置について、より計画的な取引を可能にする。
米国500種株価指数の取引時間
米国500種株価指数は、1日ほぼ24時間、週5日取引されています。プロのトレーダーは、流動性が高まり、スプレッドがより狭くなるため、通常の取引時間(立会時間)内の取引を好みます。立会時間は、米国東部標準時の9:30から16:00です。
米国500種株価指数取引における次のステップとして考えられるのは、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、またはその両方の組み合わせにもとづいて戦略を立てることです。
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析による米国500種株価指数(S&P500)の買い時の見極め方
トレーダーは一般的に、経済指標(経済指標カレンダーでご覧いただけます)のようなファンダメンタルズかテクニカル指標(インジケーター)を利用します。詳しくは、専門家によるガイド、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の違いと有効な組み合わせ方!をお読みください。
米国500種株価指数のファンダメンタルズ
雇用、CPI、金利、GDPなどの経済指標は、米国500種株価指数を動かす可能性があります。これらの経済指標は経済の過熱によるインフレを抑えるために、連邦準備銀行(FRB)が利上げをおこなうかどうかを示唆します。金利の上昇は国債利回りの上昇をもたらし、投資家はより大きなリターンと資本にかかるリスクの低減を求めて、株式から債券に投資先を移し替えることが考えられます。
株式から債券への移行は、売り圧力の高まりによって米国500種株価指数の下落を引き起こす可能性があります。基本的なトレンドは米国経済全体の健全性にもとづいているため、戦略を立てる際には、こうしたファンダメンタルズを考慮することが重要です。DailyFXの経済指標カレンダーには、米国の経済イベントが掲載されています。
インジケーターを使った米国500種株価指数の取引
米国500種株価指数の取引戦略では、プライスアクション、オシレーター、サポートラインとレジスタンスラインの水準(支持線と抵抗線)、チャネルライン、一目均衡表、移動平均線、三角保ちあいのパターンなどを組み合わせることができます。下のグラフは、米国500種株価指数先物の支持線と抵抗線、チャネルラインを示しています。これらは、戦略に使えるインジケーターのほんの一部です。
トレーダーは現在のマーケットのトレンドと一致する買いシグナルを探すことで、取引が成功する可能性を高めます。例えば、米国500種株価指数が上昇トレンドにある場合、トレーダーは支持線(下のチャートで緑の線)で買おうとし、同様に相場が下降トレンドなら抵抗線(赤の線)で売ろうとします。
トレーダーはまた、相対力指数(RSI)のような、一般的なインジケーターで取引の開始を微調整します。上のチャートは米国500種株価指数の1時間足チャートで、緑の丸の部分は相対力指数(RSI)の買いシグナルです。RSIが30を下回るときは、売られ過ぎを示します。大きな上昇トレンドが続くと判断した場合、この状況を買いシグナルとして利用できます。同様に、下降トレンドでRSIが70を突破した場合は売りシグナルとして利用できます。
テクニカル分析に用いられる一般的なインジケーターには、以下のものがあります。
オシレーター系
- 相対力指数(RSI)
- 移動平均収束拡散法(MACD)
- ストキャスティクス -ストキャスティクスのトレード手法をプロが解説!基礎知識と使い方!
チャートパターン
米国500種株価指数を取引する際には、インジケーターとファンダメンタルズのどちらも理解していることが重要です。両方を理解していれば、自分の戦略に何を用いるか決めることができます。まだ取引戦略をお持ちでない、あるいは今お持ちの戦略を改良したいと考えるなら、DailyFXの取引戦略の立て方をご覧ください。
トレーダーによって取引の期間は異なるため、自身の性格に合ったトレードスタイルを見極めることが重要です。
スキャルピング/デイトレード – プライスアクションを利用して、非常に短い時間枠で極めて小さな値動きを巧みに活かそうと試みる取引です。デイトレーダーは、米国500種株価指数の高い流動性や狭いスプレッド、一日24時間週5日間の取引時間に魅力を感じます。
イントラデイ – 主にテクニカル分析、場合によってファンダメンタルズ分析や報道された出来事を用いる、2~3日以内の短期的な取引です。イントラデイのトレーダーは、米国500種株価指数のマーケットが作り出すことで知られる明確なチャートパターンや日々のモメンタムの動きに引きつけられます。
スイングトレード – 数日から数週間、場合によっては数カ月の中期的な取引です。スイングトレードは、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析にもとづいて取引されます。スイングトレードのトレーダーは、取引回数は少なくても一般にリスクリワードレシオの高い取引を好みます。
DailyFXによる四半期ごとの株式相場見通しでは、実際のファンダメンタルズ分析とテクニカル分析をご覧になれます。
センチメント分析をする(投資家の売買動向をチェックする)
個人投資家のセンチメント分析をする(売買動向をチェックする)ことも、米国500種株価指数の買い時や売り時を見極める一つの方法になります。なぜなら、個人投資家の売買動向は逆張り指標として機能することがあるからです。
センチメント分析は、「IGクライアントセンチメント(IGCS)」を見ることで簡単におこなうことができます。下のチャートは、IGCSの米国500種株価指数(S&P500)のものです。
上のIGCSを見ると、S&P500を取引する個人投資家の約33%がネットロング(S&P500を買い持ち)にしていることが分かります。つまり、売りと買いの比率が約2対1になっているということです。
半分以上の持ち高がネットショートに傾いているため、IGCSが逆張り指標であることを考えれば、これはS&P500が上昇する可能性を示唆しています。もし、半分以上の持ち高がネットロングに傾いている場合は、S&P500が下落する可能性が考えられるということになります。
また、チャートを見ると先週からネットロングが低下していることも、S&P500が上昇する可能性があることを示唆するものです。ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析に加え、センチメント分析をすることで取引の精度向上を狙うことができます。
ボラティリティー指数(VIX指数)を参考にする
出所:IG証券
ボラティリティー指数(VIX指数)を活用し、米国500種株価指数をいつ買うかの参考にすることもできます。ボラティリティー指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、株価の変動率を表し、米株の底打ちの目安になると言われているからです。
ボラティリティー指数が極端に上昇すると、マーケットがパニックになっている可能性が示唆されます。要するに、株の投げ売りが起こっているかもしれないということです。
そのため、株価が底打ちした兆しを探したい場合は、ボラティリティー指数に注目してみるのも一つの方法になります。なお、IG証券ではボラティリティー指数自体を取引することも可能です。
PERやPBRをチェックする
米国株全体のPERやPBRをチェックするのもよいでしょう。というのも、米国株が現在割高なのか割安なのかが分かるからです。
PERとは「Price Earnings Ratio」の略で、株価が1株当たり純利益(EPS:Earnings Per Share)の何倍まで買われているかを見るための指標です。一方、PBRとは「Price Book-value Ratio」の略で、株価が1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)の何倍まで買われているかを見るための指標になります。
PERやPBRが低いほど株は割安、高いほど割高と判断することが可能です。例えば過去一定期間のPERの平均が25であった場合、現在が20なら割安、30なら割高と判断できます。
したがって、PERやPBRを活用し、米国500種株価指数の買い時や売り時の参考にすることが可能です。
SNSで個人投資家の心理をチェックする
SNSで個人投資家の心理をチェックするのも、非常に参考になります。なぜなら、大衆が恐怖に包まれている時は、株の買い場とされているからです。
米国の著名投資家であるジョン・テンプルトン氏は次のような言葉を残しています。「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」
例えば、SNS上で「米国株はやめとけ」、「米国株はもうだめだ」といった悲観的な言葉が見られた時は、絶好の買い時になる可能性があります。マーケットが総悲観となった局面は、強気相場の出発点になりやすいとされていることから、米国500種株価指数を買うタイミングのヒントになるかもしれません。
AIを使った米国500種株価指数の取引
近年ではAIを使った相場の予測が広まりつつあり、「米国500種株価指数を今買うべきか」の参考としてAIを使いたいという方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、AIを使った予想は現時点ではおすすめできません。なぜなら、日本語かつ無料で提供されている米国500種株価指数(S&P500)のAIを使った予測がほとんど無いからです。特に、信頼できる機関が提供しているAIという条件も加えると、ほぼ皆無といってよい状況になっています。
そのため、現段階ではAIを使った予想は気軽に手を出しづらく、まずはテクニカル分析とファンダメンタルズ分析を利用して取引をすることをおすすめします。
米国500種株価指数(S&P500)の取引の秘訣
- 取引を始める前に、損切りと利益確定の水準を決めておきましょう。取引のリスクリワードレシオはプラスにすることです。
- リスクを管理し、制限しましょう。すべての未決済取引のリスクは5%未満にしておくことを推奨します。詳細は、適切なレバレッジを決める方法をご覧ください。
- 大きな損失を阻止するため、逆指値注文を常に設定しておきましょう。
- 損を取り返すためや、退屈だからという理由で取引をしてはいけません。
- 経済指標はマーケットにボラティリティーをもたらす可能性があるため、影響力の大きい経済指標が発表になるタイミングには注意しましょう。
- トレード日記をつけましょう。自分のおこなった取引について、取引理由、リスクリワードの値、取引前の確信度を日記に記録しておきましょう。
- トレード日記を毎週見直し、どの取引が成功したか、あるいは失敗したか、そしてその理由を評価しましょう。なぜ正しかったのか間違っていたのかがわかれば、それに応じて戦略を進化させることができます。