9月の英ポンド相場は、市場予想に反して英中銀が政策金利を据え置いたことを受け、主要通貨に対して下落した。英中銀の利上げ停止を受けた個人トレーダーセンチメントは?そして、英ポンドの対円、対ドルでの10月の見通しとは
サマリー
9月の英ポンド相場振り返り
BOE(英国中銀)に加え、日米欧を含めた多くの中央銀行が金融政策決定会合を開催した。BOEは、インフレ鈍化の兆しが見られたことに加え、景気減速懸念が強まっていることから、事前の市場予想に反して政策金利を据え置いたことを受け、英ポンドは主要通貨の中で最も下落した。
一方、米ドル高が進展した。ロシアとサウジの原油供給の制限を受け、原油の供給リスクが意識された結果、FRBが高い政策金利を長期間維持するとの思惑から、米国金利が上昇し、米ドルが主要通貨に対して上昇した。
ECB(欧州中央銀行)は利上げを実施したものの、利上げサイクル終了との見方が強まった。FOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRBが政策金利を「より高くより長く」する方針であることが明らかになり、米国金利が上昇した。
日本銀行は、植田日銀総裁が一部報道機関に対して、年内のマイナス金利政策解除の可能性について言及したことから、金融政策不透明感が高まっていた。しかしながら、金融政策決定会合にて金融政策を維持し、当面の金融緩和維持との見方が強まった。
資料:Trading EconomicsよりDaily FXが作成。9月27日時点。
英中銀は政策金利を据え置いたものの、今後の利上げの可能性は残しており、金融市場では利上げ終了とあと1回の追加利上げで意見が分かれている。インフレや雇用、景気関連の指標によって、英中銀の政策金利見通しが変化し、英ポンドの変動要因になろう。
英ポンド/米ドルの個人トレーダーセンチメント
IG顧客センチメント(IGCS)によると、英ポンド/米ドルを取引する個人トレーダーの約72%がネットロング(英ポンド買い持ち・米ドル売り持ち、英ポンドに強気)にしている。ほとんどの持ち高はネットロング(英ポンドに強気、米ドルに弱気)に傾いているため、IGCSが逆張り指標として機能する傾向があることを勘案すると、GBPUSDは下落(英ポンド安ドル高)する可能性がある。
しかしながら、昨日と比べてネットロングのトレーダーの割合が減少している一方、先週と比べてネットロングのトレーダーの割合が増加しており、まちまちである。このことを考えると、個人トレーダーセンチメントはGBPUSDに対して中立である。
IGCS:GBPUSD
資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
英ポンド/米ドルの見通し
英中銀の政策金利据え置きを受け、英ポンド/米ドルが下落基調である。GBPUSDは、週足チャートで、9期間指数移動平均線が20期間指数移動平均線を下抜ける英ポンドに弱気の「デッドクロス」が示現している。更に、RSIも50割れに転換し、英ポンドのモメンタムが弱いことを示している。テクニカル面では、GBPUSDに弱気シグナル(英ポンド安ドル高)が点灯している。
個人トレーダーのセンチメントは中立であるものの、テクニカル面の弱気シグナルに加え、英中銀の更なる利上げ織り込みが剥落する余地が残る中、GBPUSDの一段安を見込む。2022年9月26日の週から2023年7月10日の週にかけてのGBPUSDの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準1.208レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、フィボナッチ50%水準である1.175レベルが視野に入る。
GBPUSDが上昇した局面では、フィボナッチ23.6%水準1.248レベルがレジスタンスとして機能するかに注目。レジスタンスであることが確認された場合、GBPUSDの上値が重いことを投資家に印象付けよう。
英ポンド/米ドル(GBPUSD)週足チャート
資料:Trading Viewより作成
英ポンド円の個人トレーダーセンチメント
IG顧客センチメント(IGCS)によると、英ポンド円を取引する個人トレーダーの約33%がネットロング(英ポンド買い持ち・円売り持ち、英ポンドに強気)にしている。ほとんどの持ち高はネットショート(英ポンドに弱気、円に強気)に傾いているため、IGCSが逆張り指標として機能する傾向があることを勘案すると、GBPJPYは上昇(英ポンド高円安)する可能性がある。
しかしながら、昨日、先週と比べてネットショートのトレーダーの割合が減少している(英ポンドに弱気、円に強気なトレーダーの割合が減少)。このことを考えると、個人トレーダーセンチメントはGBPJPYの下落(英ポンド安円高)を示唆している。
IGCS:GBPJPY
資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
英ポンド/日本円の見通し
英ポンド円は、英中銀の政策金利を据え置きを受けて下落している。英ポンド円は、週足チャートで、MACDラインがシグナルラインを下抜ける、英ポンドに弱気の「デッドクロス」が示現している。また、RSI及びMACDにて英ポンド高円安の勢いが衰えていることを示す「弱気の乖離(ダイバージェンス)」が示現している。テクニカル面では、英ポンド円に弱気シグナル(英ポンド安円高)が点灯している。
テクニカル面の弱気シグナルおよびGBPJPYの個人トレーダーセンチメントに加え、英中銀の更なる利上げ織り込みが剥落する余地がある中、英ポンド円の一段安を見込む。2023年1月2日の週から2023年8月21日の週にかけてのGBPJPYの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント23.6%水準179.35レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、英ポンド円の下落トレンドへの転換が鮮明になり、フィボナッチ38.2%水準174.76レベルが視野に入る。
一方、英ポンド円が上昇した局面では8月21日の週の高値186.76レベルを上方ブレイクできるかに注目。上方ブレイクに成功した場合、英ポンド円の上昇トレンド再開の可能性が高まる。
英ポンド/日本円(GBPJPY)の週足チャート
資料:Trading View
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--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著