FX取引の基礎知識とは？市場環境の種類や戦略の立て方を解説

FXを取引する前に、まず基礎知識やリスクを学ぶことが大切です。そのうえで、適切な戦略や自身の取引スタイルを選択してください。本記事では、FXの取引を始めるうえで学ぶべき基礎知識や取引戦略の立て方、検証・改善方法を解説します。

FX取引の基礎知識とは

FXの取引を始める前には、FXの仕組みについて理解しておかなければなりません。

FX取引の仕組みとは

FXとは「Foreign Exchange」の略で、外国為替取引のことです。FXの取引は、1つの通貨を別の通貨と交換することで成り立ちます。取引は、通貨ペアと呼ばれる2つの通貨間で行われます。

以下は、主要な通貨ペアです。

• USD/JPY（米ドル/円）
• EUR/USD（ユーロ/米ドル）
• GBP/USD（英ポンド/米ドル）
• AUD/USD（豪ドル/米ドル）

そして、FXの取引は一定の通貨を売り、別の通貨を買うことで行われ、その差額が利益または損失となります。このように、FXの取引は通貨の価値の変動を利用した投資方法と言えます。

FXで得られる利益

FXの取引による利益は、「金利差」と「価格差」の2つから生じます。

高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売ることで金利の差（スワップポイント）を得られます。例えば、高金利の通貨Aを持ち、低金利の通貨Bを借りているとしましょう。その際、通貨Aの金利が通貨Bの金利を上回っていれば、その差分が利益です。

また、FXの取引では、通貨の価値が変動することで利益を得ることが可能です。通貨を安値で購入し、高値で売却すると、その価格差が利益となります。

FXで取引する通貨の選び方

FX取引では、どの通貨を選ぶかが重要なポイントです。世界中にさまざまな通貨が存在していますが、すべての通貨がFXの取引対象になるわけではありません。主に取引される通貨は以下の8種類で、メジャー通貨と呼びます。

• 米ドル（USD）
• ユーロ（EUR）
• 英ポンド（GBP）
• 豪ドル（AUD）
• ニュージーランドドル（NZD）
• カナダドル（CAD）
• スイスフラン（CHF）
• 日本円（JPY）

これらの通貨と他の通貨の組み合わせを選び、取引します。選ぶ際の基準としては、その通貨の経済状況や金利、政治情勢などを考慮します。また、取引量が多いペアは流動性が高く、スプレッド（売値と買値の差）が狭いため取引しやすいと言えます。FXの取引初心者の場合、まずはメジャー通貨から選ぶことがおすすめです。

FXの特徴：レバレッジと24時間取引可能

FXの特徴として、「レバレッジ」と「24時間取引」が挙げられます。

レバレッジとは、一部の証拠金で大きな取引が可能になる仕組みのことです。例えば、1,000円を預けて2万5,000円分の取引が可能な場合、レバレッジは25倍となります。そのため、少額の資金でも高い利益を狙うことができます。ただし、損失の金額も同様に大きくなる可能性があるため、無理なレバレッジは避けるべきでしょう。

また、FXは世界中の通貨を対象にした取引なので、時間帯により取引できる為替市場が移動します。これにより、24時間いつでも取引できることが特徴です。ただし、一部時間帯（例えば日本時間で土日）は取引が停止する場合もあるので注意しなければなりません。

FX取引で重要な分析方法、エントリー・エグジットポイント、取引戦略

FXの取引では、適切なエントリー・エグジットポイントを選ぶためにテクニカル分析やファンダメンタルズ分析を理解し、適切な戦略を採用することが大切です。

テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の役割

FXの取引において、テクニカル分析とファンダメンタル分析は非常に重要な役割を果たします。

テクニカル分析は、過去の価格や取引量のデータを利用して未来の市場動向を予測します。チャートや指標を用いて、エントリー（買い）やエグジット（売り）のタイミングを見極めることが主な目的です。

一方、ファンダメンタルズ分析は、経済指標や政策、地政学的な情報などをもとに通貨の本質的な価値を評価します。長期的な市場の方向性を理解するために使用されます。

言い換えると、テクニカル分析で「いつ」取引を行うかを、そして、ファンダメンタルズ分析で「何」を取引するかを判断します。2つの分析方法は違う視点から市場を分析するため、組み合わせて使うことでより優れた取引戦略を立てられるでしょう。

エントリーポイントとエグジットポイントの重要性とは

FXの取引では、エントリーポイントとエグジットポイントの選択が重要です。これらのポイントは、投資を開始するタイミングと利益を確定するタイミングを示しています。

エントリーポイントは、価格が上昇または下落すると予想されるポイントを指し、それに合わせて売りまたは買いの注文を出します。例えば、テクニカル分析によって買いシグナルが出たときにエントリーを行います。一方で、エグジットポイントは、すでに持っているポジションを手放すタイミングを指します。取引の目標値点に到達したときや、損失制限ラインに達したときに設定されます。

2つのポイントを適切に選択することで、リスクを管理しながら利益を最大化できるはずです。

取引戦略の選択が及ぼす影響

FXの取引では、市場環境に応じて適切な戦略を選ばなければなりません。例えば、トレンド相場でレンジ戦略を取れば、結果は悲惨なものとなり、大きな損失を被る可能性があるでしょう。一方、市場がレンジ相場を示しているときは、ほとんどのケースでレンジ戦略を試すのが得策です。また、相場が不安定で動きが速い場合は、ブレイクアウトの戦略で取引したほうがよりよい結果を得られる可能性があります。

このようにFXの取引では、相場の状況に応じて適した戦略を選ぶ必要があることを念頭に置いておかなければなりません。ただし、完璧な取引戦略を求めてしまうと、トレーダーとして致命的な間違いを引き起こす原因となるでしょう。なぜなら完璧な戦略を求めることは不可能で、その追求が大きな代償を伴うこともあるからです。

取引戦略の構築とは、すなわち「トレードの結果」に集中することです。戦略が設計された市場環境に特化することで、トレーダーは最善の「結果」を生み出すことに集中できます。そのため、FXの取引戦略を設計する前に、「どのような市場環境を想定してこの戦略を設計したいのか？」を明確にしておくことが大切です。

FX取引で理解しておきたい市場環境の種類

市場環境には、「トレンド」「レンジ」「ブレイクアウト」の3つが挙げられます。これらの要因が、FXの取引に大きな影響を与えています。

以下のチャートでは、トレンド、レンジ、ブレイクアウトが発生していることを示しています。

Marketscope及びトレードステーションでチャート作成

これらの市場環境では、それぞれ売買のタイミングが異なります。続いて、各市場環境の特徴や売買方法について解説します。

トレンド相場

トレンド相場は、FXの取引において売買を判断しやすいため、トレーダーにとって重要な指針と言えます。一般的にトレンドを狙う場合は、主要なサポートラインやレジスタンスラインが突破されるのを見守り、チャート上で明確なトレンドが形成されるのを待ちます。レンジ相場を狙うときと同様に、「安く買って高く売る」というのが基本的な原則です。

以下のチャートは、上昇トレンドと下降トレンドを表しています。これらのトレンドは、実際にFXを取引するときに重要な指標となります。

Trading Station 2.0及びMarketscopeでチャート作成

下降トレンドは連続する低い安値と高値が続く状態で、上昇トレンドは連続する高い安値と高値が続く状態のことです。トレンドを数値で表す方法としては、移動平均などの指標を使ってトレンドを識別することが多いでしょう。また上記のチャートのように、価格の動き自体に注目して指標を使わない方法もあります。

トレンド相場では、「上昇トレンドで安価な時に買う」「下降トレンドで高価なときに売る」ことが王道の手法です。割安、または割高かを判断するためには、さまざまな方法が用いられます。

レンジ相場

レンジ相場では、価格が一定の範囲内で動くことが特徴です。この範囲は「チャネル」と呼ばれ、価格はこのチャネルの下限と上限の間を行き来します。レンジ相場では、「価格が低いときに買い、高いときに売る」という基本的な戦略を守る必要があります。

レンジ相場は、市場があまり活発ではないときやトレーダーが十分な情報を得られない場合によく見られ、価格がレジスタンスラインを超えたり、サポートラインを下回ったりすることがあります。

以下のチャートは、「プライスアクションでレンジを分析して取引する方法」で説明した手法を使って、売買のタイミングを示しています。

Marketscope及びトレードステーションでチャート作成

ただし、レンジ相場が続くことはありません。多くの場合、新しいニュースが市場に入ってくるとトレーダーはそのニュースを考慮して、価格を上げるか、または下げるかの動きに迅速に反応します。ニュースによって急変した状況では、市場は不安定になり、予測が難しくなる場合がよくあります。

この変動により、レンジ相場はブレイクアウトに変わります。市場環境が変化し、新たな情報が市場に影響を与えることで、価格はこれまでのサポートラインやレジスタンスラインの境界を超えて動き始めます。

ブレイクアウト

サポートラインやレジスタンスラインが突破されると、価格は長期間にわたって上昇し続けることがあります。このような突破を予測して取引する戦略が、ブレイクアウト取引です。多くのトレーダーは、ブレイクアウトを狙う際にはエントリー注文を使用します。エントリー注文とは、価格が特定のポイントに達したときに自動的に取引が開始されるように設定された注文のことです。

ただし、ブレイクアウト取引を計画する際には、「サポートラインやレジスタンスラインがいつ、どのように突破されるかは予測不可能である」ことを理解しておきましょう。また、これらのラインが突破された後に価格がどの方向に動くかを判断するのも難しいため、その点を考慮しておかなければなりません。

ブレイクアウトの取引には不確実性が伴いますが、大きなメリットも存在します。例えば、ブレイクアウト取引が成功すると、価格は長期間にわたって一定の方向に動き、トレーダーは多くの利益を得られます。

例として、豪ドル/米ドルの典型的なブレイクアウトの図を見てみましょう。レジスタンスラインが突破された後に価格が長期間上昇し続けています。特に、3回目の突破が成功したことに注目してください。

Marketscope及びトレードステーションでチャート作成

レジスタンスラインでブレイクした後、価格は上昇し続けています。このように、サポートラインやレジスタンスラインでブレイクした後、通貨ペアは長期間にわたってトレンドが続くことがあります。

FX取引で戦略を立てるための5ステップ

次に、FXの取引で戦略を立てるためのステップを5つ紹介します。

自己分析

FXの取引において、成功する戦略を構築するための最初のステップは、自己分析をすることです。FXの取引では感情に振り回されず、論理的な判断を下すことが鍵となります。

まずは、自分を分析するところから始めましょう。以下の表を参考に、自分の弱点や取引時の感情を思い出してください。

次に、これらの弱点や感情に振り回されないための具体的な戦略を立てます。例えば、「勝った後は一定時間取引を止める」などのルール作りや、「損切りラインを明確に設定する」などの戦略作りにつながります。

取引チャンスを探す

FXの取引チャンスとは、取引の成功を引き寄せる適切なタイミングのことを指します。

まず、市場の動向を理解することが重要です。各通貨ペアの価格変動や経済指標、ニュースなど、市場を左右するさまざまな要素に注目しましょう。これらの要素を総合的に考慮することで、通貨ペアの買い時と売り時を判断できます。

また、テクニカル分析も重要なツールと言えます。リアルタイムで市場の動向を把握できるので、短期的な取引には特に有効です。

自身の取引スタイルを見つける

自分に合った取引スタイルを見つけるには、以下のステップを実施するのが効果的です。

• 自己分析：自己分析は取引スタイルを見つける最初のステップです。自身の性格やリスク耐性、目指す利益、持っている資金量などを包括的に評価します。例えば、リスクをあまり取りたくない方は、長期的な取引スタイルが適しています
• 時間帯を決める：次に、自身の生活スタイルと時間的な制約を考慮します。FXは24時間取引できますが、それぞれの時間帯で市場の動きは異なるため、自身が取引するタイミングによっても適した取引スタイルは変わります
• 試行と検討：実際にさまざまな取引スタイルを試し、それぞれの結果を検証してください。試行と検証を繰り返すことで、自身に最も適した取引スタイルを見つけられるはずです

取引するための資本を検討する

取引資本の検討は、FXの取引における成功を左右する重要なステップです。リスクを取れる金額、つまり「投資可能な資金」を決定します。

まず、自己資本（定期預金などの安全な資産）と投資資本を明確に区別しましょう。投資資本は、損失が発生しても生活に影響を与えない範囲の金額を指定することが重要です。

次に、取引1回あたりのリスク金額を決定します。例えば、投資資本の2～5％のリスクを設定すると、投資資本が100万円の場合、1回の取引で許容するリスクは2万～5万円となります。

投資可能な資本をあらかじめ決定しておくことで、一時的な損失からもすばやく立ち直ることが可能になり、長期的な成功へと導きます。

自身に適した取引戦略を選ぶ

FXの取引では、自身のライフスタイルやリスク許容度、取引目標などの要素に合わせた戦略を選ぶことが重要です。

例えば、短期間で高いリターンを求めるアグレッシブなトレーダーであれば、高ボラティリティの通貨ペアを利用したデイトレードやスキャルピングが適しています。逆に、堅実に着実な利益を追求する保守的なトレーダーであれば、スイングトレードやポジショントレードによる長期投資がよいでしょう。

以下の表は、各取引スタイルとその特徴をまとめたものです。

適切な取引戦略を選ぶことは、FXの取引で安定した利益を得るための大切なステップです。

FX取引における検証と改善

FXの取引では、戦略の検証と改善が欠かせません。

取引記録の重要性

取引記録はFXの取引戦略を構築し、改善するうえで非常に重要と言えます。過去の取引結果を詳細に振り返り、どの戦略が成功し、どの戦略が失敗したかを理解するために必要です。

例えば、取引記録の内容は以下のように記載するとよいでしょう。

FXを取引するごとにこれらの情報を記録し、後から確認することで、自身の取引パターンや傾向を把握できます。これにより、成功パターンの再現や失敗パターンの改善が行え、より効果的な取引戦略を作り出すことが可能となります。

利益と損失の分析方法

FXの取引で成果を評価するためには、利益と損失の分析が必要です。主に、以下の流れで分析します。

まずは、取引結果を記録します。エントリーレベル、エグジットレベル、取引通貨ペア、取引時間帯などの詳細情報を含めることが重要です。

次に、各取引の利益と損失を計算し、その傾向を把握します。例えば、以下のような表を作成してみるとよいでしょう。

この表から、各通貨ペアの取引結果とその傾向を一目で確認できます。これをもとに、取引戦略の改善策を立てられます。

改善を続けるための方法とは

FXの取引で戦略を常に改善し続けることは、大切な作業です。以下の4つのポイントを参考にしてください。

・自己評価：取引記録を見直すことで、自身の取引の成功点と失敗点を理解し、適応可能な改善策を見つけ出します。

・新しい戦略の導入：市場の動向を理解し、それに適応した新しい取引戦略を試してみてください。

・検証・評価・新たな戦略が自身の取引スタイルや市場状況に合っているかを検証します。期間を定めてそのパフォーマンスを評価します。

・反復：上記のステップを定期的に繰り返すことで、取引戦略は常に最適化され、成功へと近づくはずです。

これらのステップを踏むことで、自身のFXの取引戦略は常に改善されて、市場の変化に対応する柔軟性を持てるでしょう。

FX取引のリスクとは

最後に、FXを取引することで生じるリスクについて解説します。

ロスカットが執行される可能性

FXの取引では、予期せぬ損失リスクを抑えるために「ロスカット」という仕組みが利用されます。ロスカットとは、保有ポジションの含み損が一定の範囲を超えた場合、自動的にそのポジションを決済するシステムのことです。

FX会社では、証拠金維持率がロスカットラインとして設定されます。そのため、突発的な市場の変動などで一時的に大きな含み損が生じ、ロスカットラインを超えた場合、自動的にポジションが強制決済されます。したがって、FXの取引を始める際は、ロスカットラインを意識した資金管理が必要です。

為替と金利の変動リスク

FX取引における大きなリスクとして、為替と金利の変動リスクが挙げられます。

為替リスクとは、外国為替が予想外に変動することによって生じるリスクです。FXの取引は、一国の通貨を売り、他国の通貨を買うことで成り立っています。そのため、買った通貨の価値が下落した場合、損失を被ることになります。

金利の変動リスクとは、中央銀行の政策金利が変動することで生じます。金利が上昇すると、その国の通貨価値が増す傾向にあります。逆に、金利が下落すると通貨価値も下がります。

これらのリスクを理解し、適切にリスクを管理することがFX取引の成功へとつながるでしょう。

取引が成立しづらいケースがある

FXの取引では、すべての注文が即座に成立するわけではありません。特に、以下2つのケースでは注文が成立しづらい場合があります。

市場の流動性が低いとき：市場の流動性が高い場合は、大量の注文が出ても価格が大きく動かない傾向があります。しかし、一部の通貨や時間帯では流動性が低下し、注文の成立が困難になることがあります。例えば、日本時間の深夜から早朝、またはマイナーな通貨ペアを取り扱うときなどが挙げられます

大量注文が一斉に出たとき：重要な経済指標発表時などに多くのトレーダーが一斉に注文を出すと、一時的に市場のバランスが崩れ、注文がすぐには成立しづらくなることがあります

FX取引は基礎知識やリスクを学び、自身に適した取引スタイルを選ぼう

FXの取引において、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析、市場環境、リスクなど、取引の結果を左右する要素をまず学ぶことが大切です。そのうえで、自己分析して自身に適した取引スタイルを見定めて取引戦略を選択するとよいでしょう。たとえFXの取引が失敗したとしても、取引戦略を検証・改善していくことが次の成功に結びつくはずです。また、FX会社でデモトレードが用意されているのであれば、まず利用してみて取引の仕組みを理解することもおすすめです。

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推薦者： DailyFX

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