日本株、日銀、日経平均株価、米ドル円、銀行、政策維持、多角的レビュー―トーキングポイント
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大規模政策修正は見込めず
植田日銀総裁のもとでの初の金融政策決定会合が開催され、現行の金融政策の維持が決定された。一部で修正観測が高まっていた長短金利操作(イールドカーブコントロール政策、YCC)の修正は見送られた。インフレ(除く生鮮食品・エネルギー)は2023年度は2.5%、2024年度は1.7%、2025年度は1.8%との見通しが示された。また、今までの長期緩和の多角的レビュー・検証を1年から1年半程度の時間をかけて実施することが表明された。長期緩和の多角的レビュー・検証は政策判断には短期的な金融政策に結びつくものではないと植田日銀総裁は述べている。政策金利をめぐるフォワードガイダンス(先行き指針)は一部見直された。米ドル円は米ドル高円安、日本株は上昇しており、今回の結果はハト派的(金融緩和的)な結果であったと言えるだろう。
日本銀行インフレ見通し

資料:4月日銀展望レポート。日銀政策委員見通しの中央値
しかしながら、2024、2025年度のインフレは2%目標には到達しないものの、目標に近いとの判断もでき、副作用が効果を上回っている金融政策を早期に修正する可能性がある。早期の金融政策修正として、国債の流動性の枯渇を招いているイールドカーブコントロール(YCC)政策の修正が予想される。修正する場合は、日本10年国債利回りを現在0%±0.5%としている変動許容幅を拡大(±0.75%や±1.0%)、コントロールしている年限を10年国債利回りから5年国債利回りに変更といった修正が考えられる。一方、デフレ脱却の兆しが見え始めた中、日本銀行による金融緩和環境の維持は重要であり、早期に大規模な金融政策修正を実施する可能性は低いと見る。
変動許容幅を拡大した場合、現状の日本のスワップレート(約0.67%)程度まで日本10年国債利回りが0.2%前後上昇する可能性がある。5年国債利回りを0%±0.5%とした場合、現状の5年国債利回りは約0.13%であるので、5年国債利回りは大きく変動しないだろう。どちらの政策修正においても、利回りの変動は大きくなく、金融緩和環境が大きく損なわれる可能性は低いと考える。
今まで10年国債利回りが低く抑えられていた結果、銀行等は金利収入が低迷、収益悪化懸念から株価も軟調に推移していた。10年金利の変動を許容することで長い年限の日本国債利回りが上昇、銀行等の金融機関が金利収入を得られることから収益改善期待が高まり、金融セクターを中心に日本株が上昇していく可能性があるが、テクニカル分析を踏まえた日本株(日経平均株価先物)及び米ドル円の見通しは?
YCC政策導入(2016年9月21日)以降の日本株のパフォーマンス

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。起点を100として指数化。東証株価指数(TOPIX)及びTOPIX銀行業指数
日本株:上昇。日経平均株価(先物)は30,000円台が視野に入る。
日本の賃金上昇、デフレ脱却の兆しといったマクロファンダメンタルズの変化、東京証券取引所による低PBR改善要請等、日本株独自の好材料が整いつつある。日銀のYCC政策修正による金融セクターの収益改善期待が加わることで、中長期的に一段と日本株が上昇する展開を予想する。テクニカル面では、日本株(日経平均株価先物)の週足チャートを確認すると、強気を示唆する三役好転が成立している。
日経平均株価先物週足チャート

資料:Trading View
日足チャートを確認すると、上昇トレンドを示唆するアセンディングトライアングルパターンを形成している。パターンのレジスタンスを上抜ける攻防が続いている。日本のマクロファンダメンタルズは好転しつつあり、日銀の金融政策も日本株のサポート要因になることが見込まれ、日本株の一段の上昇を見込む。日経平均株価先物は2022年来の29,000円台を突破し、30,000円台が視野に入る。
日経平均株価先物日足チャート

資料:Trading View
米ドル円:米ドル高円安。年初来高値が視野
日銀の金融政策決定会合の結果を受け、日銀は早期に大規模な金融政策修正を実施する可能性は低くなったと考える。来週は米国で金融政策決定会合(FOMC)が開催され、利上げが実施される見込みである。日米の金融政策格差の違いは、米ドル高円安要因となろう。テクニカル面では、米ドル円の日足チャートは一目均衡表の強いレジスタンスとなっていた雲の上限を上抜け、米ドル高円安トレンドを示唆する三役好転が成立しており、年初来高値の137.911が視野に入る。
米ドル円日足チャート

資料:Trading View



-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著