※2023年8月16日17時45分更新
ユーロ vs 米ドル・豪ドル・英ポンド - 見通し



ユーロは、きょう発表のユーロ圏の国内総生産(GDP)と米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(17日予定)の公表を控える中、いくつかの通貨に対して重要な水準を試している。
ユーロ圏の2023年4-6月期の経済成長率は、前期の1.1%から0.6%に鈍化すると見られている。欧州中央銀行(ECB)による積極的な利上げの影響が波及し、信用環境が引き締まったことが背景にある。ユーロ圏のエコノミックサプライズ指数(ESI)は3年ぶりの低水準にとどまっている。マクロ経済データが市場の期待を裏切る結果となったことはESIにも反映されたている。ESIは各種経済指標の発表値と事前の市場予想との乖離の度合いを指数化したもので、 各種指標の実績がエコノミストなどによる事前予想を上回れば指数はプラス方向に振れ、逆に下回れば指数はマイナス方向に振れる。
エコノミックサプライズ指数 - ユーロ圏と米国
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
8月にドイツの投資家の士気(German investor morale)が予想外に改善したことは好材料だが、ユーロが持続的に反発するには、ユーロ圏の経済成長見通しが、特に米国を上回る必要がある。2024年半ばまで安定しているECBの金利見通し(市場予想)を反映し、ユーロは他の通貨に対しては概ね底堅く推移している。
ユーロ/米ドル 240分足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
米国のエコノミックサプライズ指数は2021年初頭以来の高水準近辺で推移している。加えて、アナリストなどによる今年度の米経済見通しは相次いで上方修正されている。経済指標を重視する米連邦準備制度理事会(FRB)は、楽観的な2024年の利下げ期待をけん制する可能性が高い。この観点から、17日に予定されている6月のFOMC議事要旨が注目される。特に、回復力のある米国経済、ひっ迫した労働市場、そしてFRBによる政策金利がピークに達したかもしれないという市場の期待を鑑みると、この議事要旨は重要である。
ユーロ/米ドル 月足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/米ドル:重要なサポートに接近中
テクニカルチャートを見ると、ユーロ/米ドルは現在、7月の安値1.0830、200日移動平均線、89日移動平均線を含む、かなり強力なサポートゾーンに近づいている。これは、7月31日の高値1.1045を上方ブレイクできなかった値動きに続く流れで、前回の記事で指摘したリスクである。8月2日付記事「ユーロ相場見通し:米国債格下げで小幅高、でも上昇は続くか?」をご参照ください。
ユーロ/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
1.0500-1.0600を割り込むと、2023年初頭の安値圏を含む1.0500-1.0600エリアに向かい下降する可能性が出てくる。幅広い上昇トレンドを持続させるためには、このサポートエリアが維持される必要がある。上値では、先週の高値1.1065を上抜ければ、当面の脆弱さが薄れるだろう。
ユーロ/豪ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/豪ドル:上方ブレイクを試す展開
ユーロ/豪ドルは、2020年から続く水平トレンドラインという重要なレジスタンスである1.6800付近の上方ブレイクを試している。これを上抜けた場合、1.7700(2020―2022年にかけての下落のリトレースメント61.8%の水準)に向かい上昇する可能性が開かれる。中期的な観点からは、前回の記事で指摘したように、2022年後半から上値・下値の切り上げパターンが継続している流れを考えると、トレンドは上向きである。
ユーロ/英ポンド 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/英ポンド:上値は限定的
ユーロ/英ポンドは、200日移動平均線、7月の高値0.8700付近に位置する2023年初頭からの下降トレンドラインを含む、堅い収束レジスタンスが引き続き重しとなっている。短期的な値動きは横ばいだとしても、レジスタンスが維持されている間は、広範なトレンドが下向きであることに変わりはない。



--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。