※2024年1月25日17時32分更新
植田日銀総裁は今週の日銀会合で、金融政策の正常化に向けて前向きな見方を示した。これに伴い、日本国債利回りが上昇し、円相場を後押ししている。円相場の今後の見通しとは?
ドル/円の分析
- 日銀会合での植田総裁の発言が消化されるにつれ、円は買い戻されている
- 日銀会合の翌日、日本国債利回りが上昇し、円買いに拍車をかけた
- ドル/円は150の大台から遠ざかっており、146.50が当面のサポートとなる
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植田日銀総裁の発言を受け、円は買い戻される
22―23日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な収穫は、インフレ率に鈍化の兆しがあるにもかかわらず、植田日銀総裁が引き続き、マイナス金利からの最終的な脱却を見据えていると明らかになったことだった。植田総裁は、物価目標2%に向け「少しずつ確度が高まっている」とし、需給キャップ(景気による変動をならした日本経済の平均的な供給力と実際の総需要との差)が改善すれば、マイナス金利解除は可能であるとさえ述べた。
市場は現在のところ、6月の日銀会合までに10ベーシスポイントの引き上げ実施を予想している。日銀は、まずはインフレと賃金の好循環の継続を見極めたいとしている。賃金交渉は3月中にまとまる可能性が高いため、金利の変動は4月の会合に期待することになる。
市場が織り込んだ金利予想(ベーシスポイント)
資料:Refinitiv、チャート作成:リチャード・スノー
日本国債利回りの上昇が円高に拍車をかける
長期金利の指標である10年物国債利回りは日銀会合の余波を受け、23日も上昇し続けた。日本国債利回りは、インフレ圧力が鈍化の兆しを見せ、早期に政策修正観測が後退する前のピークだった昨年11月上旬の高水準からはまだ遠い。利回りの上昇は通常、その国の通貨の魅力を高める。円も利回り上昇の恩恵を受け、上昇している。
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
下記の等加重指数で見ると、円は多くの主要FX通貨(英ポンド、豪ドル、ユーロ、米ドル)に対して幅広く上昇している。
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
ドル/円は150の大台から遠ざかり、146.50が当面のサポートに
ドル/円は、日銀総裁がマイナス金利政策からの最終的な脱却を示唆し、その可能性が高まったことで、150の心理的水準には届かなかった。
もっともドル/円の短中期上昇トレンドはまだ崩れておらず、146.50が直近のサポートとなり、その後は145.00と長期上昇チャネルの下方(青色でハイライト)が控えている。しかし、25日(日本時間22:30)と26日(同22:30)には2023年10―12月期(第4四半期)の米国内総生産(GDP)と米個人消費支出(PCE)が発表されるため、円相場にとっては試練となる可能性がある。
24日夜(日本時間)に発表された1月の購買担当者景気指数(PMI)は強い内容となり、経済がしっかいとしたペースで成長していることが示唆された。予想を上回った昨年12月の米消費者物価指数(CPI)がまだトレーダーの記憶に新しい中、インフレ懸念が今後発表されるデータで強まった場合、米ドルは支持され続ける可能性がある。
ドル/円 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
今週は日銀会合後、日本固有の注目されているデータ開示はないようだが、米GDPとPCEの発表は、週末前の日中のボラティリティを高めることが予想される。
1月のPMIが予想を上回ったことは、米国経済が順調に推移していることを示唆しているが、市場は明日発表の第4四半期のGDP成長率という過去のデータに注目するだろう。
ドル/円は、金融政策が示される米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開催される来週も、多くの関心を集めるだろう。その前に、2023年12月の米PCEが発表されるが、コア指数は低下が予想されている一方、総合指数は粘り強い物価上昇圧力が依然として残っていることが明らかになると見られている。
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--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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