楽観主義をもたらすハト派、行動は慎重に
オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は2023年末、予想はされていたものの、2回連続での利上げを見送った。RBAのメンバーは、労働市場に弱さが見られることや、国内および世界的にインフレ率の低下が進行していることを理由に挙げた。以下のグラフは、インフレ圧力を抑えるための制限的な金融政策措置による進展を示している(黄色)。大幅な改善が見られるとはいえ、RBAは物価上昇の再燃を避けるために緩和のペースをうまく調整しなければならないという難しい課題を抱えており、これまでの引き締め分のほとんどは取り消された状態だ。現在の総合インフレ率は5.4%で、RBAの目標水準である2―3%のレンジからは大きく離れているが、予測では2025年後半には望ましいレンジに戻るとされている。
オーストラリア消費者物価指数(CPI)vs 失業率 vs 金利
出所:Refinitiv、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
以下に示す現在の金融市場のプライシング(予想)を見る限り、マーケットは2024年にRBAが追加利上げを実施することはないと見ているようだが、インフレ率が高水準にあるため、外的ショックがあればインフレ抑制に向けた最後の動きが弱まり、金利予測が「タカ派的」に見直される可能性がある。他の多くの世界の中央銀行と同様、経済データの動向がRBAのフォワードガイダンスの鍵を握る。マーケットの予想が正確であれば、RBAと米連邦準備制度理事会(FRB)は2024年12月までに政策金利をほぼ同水準にするはずで、FRBはRBAの46ベーシスポイント(bp)に対し約143bpの利下げを予想している。FRBによるこの大幅な利下げは、この期間に豪ドルを支える可能性があるが、利下げが2024年第1四半期に開始される可能性は低いため、豪ドル相場は現在のファンダメンタルズ的な背景をより鮮明にするようなデータの発表に敏感になるだろう。
RBA(豪州準備銀行)の2024年の金利予想
出所:Refinitiv、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
コモディティの観点では米ドルと中国が鍵に
コモディティの観点からは、2023年の後半は商品価格指数に反映されるように、明るい兆しが見えている(下図参照)。成長は限定的だが、2023年12月にFRBがハト派的な姿勢を示したことを受けたパブロフ反応により米ドルは弱含み、豪ドルのような資源国通貨は多大な恩恵を受けている。今後の問題は、「これがいつまで続くのか」ということだ。FRBとRBAはまだ方向転換をした訳ではないが、マーケットはすでにこの動きを先取りしており、今後のデータがより重要となっている。 。
コモディティの市況におけるもうひとつの重要な要素は、中国とオーストラリアの輸出品との密接な関係である。中国は多くの予想通りコロナ禍の制限から抜け出せず、インフレ率の低下、低成長、PMIデータが示すような厳しい生産状況が中国政府の大きな懸念材料となっている。これを受けて、中国人民銀行(中央銀行)は流動性の注入と緩和的な金融政策スタンスによる景気刺激策を導入した。これらの措置が必要な結果をもたらした場合、豪州の商品価格は上昇を続け、豪ドルの上値をけん引する可能性がある。
オーストラリア商品価格指数 vs 豪ドル
出所:Refinitiv、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
要約すると、豪ドル/米ドルはFRB当局者が第1四半期中に姿勢を翻した場合、市場参加者の過度な期待があるだけに、下落に転じる可能性がある。しかし、前述したように、インフレと労働に焦点を当てた新しいデータが増えるたびに、豪ドルのトレーダーにとっては先行き見通しがより明確になるだろう。
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