中国不動産セクターが厳しさを増しており、21日大手不動産企業融創中国の株価が1香港ドルを下回った。中国人民銀行は、景気テコ入れのために1年物ローンプライムレートの引き下げを実施した。中国景気と経済的に結びつきの豪ドルの対ドル、対円での見通しとは



サマリー
- 中国大手不動産企業融創中国が苦境に
- 中国追加利下げも大規模政策打ち出せず
- 中国経済と結びつきの強い豪ドルの対ドル、対円での見通し
また中国大手不動産企業が・・・
中国恒大集団の破産申請、売上高でかつて中国最大の不動産開発会社であった碧桂園の経緯問題など、中国の不動産市場の苦境が鮮明になっており、チャイナショック再来の可能性が高まっている。8月21日、かつて売上高が中国4位の不動産ディベロッパーであった融創中国の株価が1香港ドルを初めて下回り、経営問題が深刻化している。1-6月期の純損益が150億元(約3000億円)の赤字になった模様だと明らかにしていた。同社株は現在0.97香港ドルで推移しており、2019年のピークと比べて株価は約98%下落している。
融創中国株価

資料:Trading view
中国、追加利下げも・・・
中央銀行に相当する中国人民銀行は、1年物MLF(中期貸出ファシリティ)金利に続き、景気テコ入れのために「1年物ローンプライムレート(LPR)」を6月に続き3.55%から3.45%に引き下げた。しかしながら、住宅ローン金利に連動する「5年物ローンプライムレート(LPR)」は4.20%で据え置きとなり、利下げ幅は限定なものにとどまった。不動産セクターを中心に中国経済の低迷が鮮明になる中、人民銀行、中国政府は景気テコ入れ姿勢が鮮明であるものの、大規模な金融緩和、経済対策を打ち出せていない。中国不動産市場の苦境、そしてチャイナリスクの懸念は今後も継続しよう。

資料:Trading economics
中国経済の低迷が続く中、中国景気に対する期待感は萎んでいる。中国景気、政策動向は、中国経済と結びつきの強い豪ドルにとって重要であるが、当面は中国景気回復による豪ドルのサポートは見込みづらい。
豪ドル/米ドルの見通し
豪ドル/米ドルの日足チャートで、RSIは売られ過ぎを示唆する30を下回っている。昨年11月10日安値0.639レベルへ豪ドル安米ドル高が進展したものの、同レベルがサポートラインとして機能し、小幅に反発している。
テクニカル面では、豪ドル安トレンドの勢いが衰えつつあるものの、中国当局からの効果的な緩和・刺激策が打ち出されておらず、主要中央銀行トップが集まるジャクソンホール会議を控える中、引き続き豪ドル安を見込む。ジャクソンホール会議は、米FRBをはじめ主要中銀の今後の金融政策に対する重要なヒントが与えられることがある。同会議を前にして金融政策の不透明感が漂う中、リスク資産通貨である豪ドルの下押し圧力になろう。11月10日安値0.639レベルを下回ると、豪ドル安圧力が再度高まり昨年11月3日安値0.627レベルへの豪ドル安米ドル高が視野に入る。
一方、ジャクソンホール会議でFRBの利上げ終了の可能性が高まった場合や中国当局から大規模刺激策が打ち出され、チャイナショックの懸念が後退した場合、5月26日安値0.649レベルを上回って豪ドル高米ドル安が進展するかに注目。レジスタンス転換している可能性がある同レベルを上方ブレイクすると、豪ドル安トレンド終了の可能性が高まる。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -13% | 41% | -3% |
週次 | -11% | 18% | -5% |
豪ドル/米ドル日足チャート

資料:Trading Viewより作成
豪ドル円の見通し
6月19日を起点とした下向きのレジスタンスラインに上値が抑えられており、豪ドル安円高トレンドが継続している。低迷する中国景気、ジャクソンホールを控えて神経質な展開を見込む中、引き続き豪ドル安円高トレンド継続を見込む。豪ドル円は3月から6月のAUDJPYの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準93.172円でサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、次の下値として、現在92.505円にある200日指数移動平均線が視野に入る。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -33% | 6% | -10% |
週次 | -38% | 11% | -10% |
豪ドル円日足チャート

資料:Trading View



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--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著