ファンダメンタルズ分析による英ポンド（為替）の見通し
2023年第4四半期の英ポンド相場見通しでは、英中銀（イングランド銀行、BOE）が一連の利上げを終了し、利上げ効果を経済全体に行き渡らせるための安定期に移行させるのかが論点だったが、この点は既に明らかとなっている。今のところ、BOEが再び利上げに踏み切る可能性は極めて低く、今後は0.25ポイントずつ複数回にわたる利下げの実施があることを、マーケットは既に織り込み済みである。そして、新たな論点はBOEが金融緩和に踏み切る前に、こうしたマーケットからの利下げ観測にいつまで抵抗するのかということだ。
英国のインフレ率が急落
最近公表されたインフレ報告書によると、昨年11月は物価上昇圧力が大幅に緩和され、過去2年以上で最低の水準を記録した。そして、エネルギー価格、食品価格、家庭用品価格の低下が重なったことで、年間インフレ率は昨年10月の4.6％に対し、翌月11月は市場予想の4.4％を大きく下回る3.9％にまで低下した。今回の4％割れは、昨年11月の英金融政策委員会（MPC）会合におけるBOEの予測とは対照的で、この時は消費者物価指数（CPI）が2024年第1四半期に4.5％、続く2024年第2四半期に3.75％といった経緯で低下すると見られていた。インフレ報告書によると、インフレ率は2年後に目標値の2%にまで低下する。次回2月に公表予定の金融政策報告書（BOEが四半期毎に公表）では、インフレ予測が大幅に引き下げられることになりそうだ。
2023年11月の金融政策報告書 – 予測値の要約
上表の金融政策報告書の要約によると、英国のGDP成長率は2024年に横ばいで推移し、その後2025年に非常に緩やかな上昇に転じる見込みである。そして、2月に上方修正の可能性があるこれらの予測値が正しいとすれば、遅かれ早かれ来年実施されるであろう一連の利下げに対するマーケットの期待を、BOEが無視することがますます難しくなるだろう。
来年の英政策金利に対する現時点の予測を見ると、最初の利下げが5月のMPC会合で決定されることを含め、25ベーシスポイントの利下げが来年は5回実施されることが、金融市場では既に織り込み済みである。
BOEとマーケットが思い描く今後の政策金利の道筋の違いが、次の四半期には英ポンド相場を左右することになりそうだ。利下げ観測を和らげようとしているのはBOEだけではなく、米連邦準備制度理事会（FRB）や欧州中央銀行（ECB）も、マーケットの利下げ観測を後退させようとしている。そして、3行の中央銀行のこうした姿勢は、今後数カ月間に、英ポンド/米ドルとユーロ/英ポンドのボラティリティを高め、いずれかの中央銀行から今後発信されるメッセージが、様々な形で投資のチャンスを生み出すだろう。
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