※2023年10月25日13時06分更新
豪ドル、豪ドル/米ドル、豪CPI、米ドル、豪中銀、実質キャッシュレート - トーキングポイント
25日午前のオーストラリアドル相場は、2023年7―9月期(第3四半期)の豪消費者物価指数(CPI)総合指数が前年同期比5.4%上昇と、予想(5.3%上昇) を上回ったことを受け、上昇した。前期は6.0%上昇だった。
恐らく重要なのは、前期比での伸び率が1.2%と、予想(1.1%)、前期(0.8%)をともに上回ったことだろう。これは物価上昇圧力が再び加速していることを意味する。
コアインフレ率の指標としてオーストリア準備銀行(RBA、中央銀行)が注目するトリム平均値は前年同期比5.2%上昇で、予想(5.5%上昇)、 前期(5.9%上昇)ともに下回った。
とはいえ、前期比では1.2%上昇と、予想(1.0%上昇)を上回った。
今日発表された豪CPIは、特にRBAが注視しているトリム平均値としては、望ましくないものであったことは否めない。
市場関係者の中には、きょうの豪CPIについて、年率の数値が前期比で減少したことを理由に安穏としている者もいる。ただ、この年間数値の減少は、現状を示すというよりは比較対象効果によるものである。2022年第3四半期のCPI総合指数は前期比1.8%上昇だった。
政策立案者にとっての問題は、第3四半期にインフレが再燃したことである。
きょうのCPI発表に先立ち、RBAは興味深いコメントを発表した。議事録を見てみよう。
11日(水) - クリス・ケントRBA総裁補佐は、「まだ高すぎるインフレ率を目標水準に確実に戻すためには、さらなる引き締めが必要かもしれない」と述べた。
10月17日(火)- RBAの10月理事会の議事要旨が公表され、「理事会は、インフレ率の目標値への戻りが現在予想されているペースより遅くなることを許容しがたい。従って、追加利上げが必要かどうかは、今後発表される経済指標、それらが経済見通しやリスク評価をどのように変化させるかにかかっている」との見解が示された。
10月18日(水)-ミシェル・ブロックRBA総裁は、「問題は、ショックに次ぐショックが続いていることだ。たとえそれが供給ショックによるものであったとしても、インフレ率が上昇を続ければ続けるほど、人々は考え方を適応させていく」と述べた。
10月24日(火)-ミシェル・ブロックRBA総裁は、インフレ率を低下させる政策に関して次のように述べた。「キャッシュレートを現在の水準に据え置くことで、これを達成することは可能だが、インフレ率が目標水準に戻るのが現在の予想より遅くなるリスクがある。インフレ見通しがしっかりと上方修正された場合、理事会はさらなる利上げを躊躇しない。」
ブロック総裁はまた、「理事会は、インフレ率が現在の予想よりも緩やかに目標に戻ることを容認しがたいと明言している」とも述べた。
RBAが今月初めに発表した下図を見ると、2つの側面が際立っている。
第一に、実質キャッシュレートが大きくマイナスに落ち込んでいる点、第二に、実質キャッシュレートと90日バンクビル先物利回りの間に大きな格差がある点である。
実質キャッシュレートとは、RBAのキャッシュレートターゲットからインフレ率(CPI総合指数)を差し引いたものである。
実質金利がマイナスになると、将来の現金よりも現在の現金の価値が高くなり、国民の富が損なわれる。特に貯蓄者はこのような状況下で最も大きな打撃を受ける。
もちろん、解決策は簡単だ。この状況を改善するには金利を引き上げるか、インフレ率を下げるかの二択である。
下図は、インフレターゲットがオーストラリア政府からRBAに命じられて以降のインフレ率を反映している。過去30年間と比較し、最近のインフレ率は痛いほど高い。
この指令は現政権下で見直され、若干の手直しが行われた。
重要なのは、インフレ目標が維持されていることである。きょう示された物価上昇圧力の再加速は、実質キャッシュレートをさらに押し下げる。インフレ率が高止まりし、金利が据え置かれる期間が長ければ長いほど、長期的には経済へのダメージが大きくなる。
きょうの豪CPI発表前は、金利先物市場では11月7日の金融政策決定会合でRBAが25ベーシスポイントの利上げを実施する確率は0%近くになっていた。
CPI発表後、利上げ実施の可能性が若干高まった。市場はRBAによる2022年5月の最初の利上げを予想していなかった点を強調しておきたい。
パンデミック(世界的大流行)は今や、ほとんどの歴史の教科書に載っているが、インフレは現在進行形で、いまだに上昇が止まらない。
RBAの元総裁らは以前、広い意味で、金融政策にとって25ベーシスポイントはそんなにインパクトはないと発言している。RBAが11月と12月の理事会で利上げに踏み切らなければ、次の機会は2月までないことになる。
11月に利上げを実施すれば、新総裁にとっては高インフレ対策をおこなっているというジェスチャーになり、総裁にとっての保険にもなるかもしれない。
豪CPIを受けた直後の豪ドル/米ドルの反応
資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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