サマリー
- インフレの鈍化と利上げサイクルの終了が意識され米ドル安が進行
- ドルインデックスは2月2日の安値100.82レベルの攻防が焦点に
- 今の米ドル安はドル円の下落要因となる一方、クロス円の下支え要因に
- 今日の外為市場も米経済指標にらみの展開が予想される
- ドル円の見通しとテクニカル分析について
インフレ鈍化で米ドル安が進行
鈍化の傾向を辿るアメリカのインフレ率
3月消費者物価指数(CPI)に続き、同月生産者物価指数(PPI)でもアメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。
次回の連邦公開市場委員会(FOMC, 5月2日~3日)での0.25%利上げについては、70%前後の確率で織り込まれている(CEMのFEDウォッチ)。しかし、インフレの鈍化傾向が確認されたことで外為市場の参加者の関心は、5月会合の先にある早期の利上げ停止と利下げ政策への転換に向いている。それを示唆するかのうように外為市場では米ドル安が進行している。
米ドル相場の動向:4月12日以降
ブルームバーグの為替データをもとに作成 / 基準日:4月11日
米ドル安の進行と円相場への影響
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は昨日、100.84レベルまで下落する局面が見られた。
103.00レベルでの “レジスタンス転換” が確認された後は上値の水準がジリジリと切り下がり、21日MA(102.33レベル)と10日MA(101.77レベル)で戻りが止められる状況にある。そしてMACDは、ドルインデックス(米ドル相場)の地合いの弱さを示唆する動きへ転じている。これらテクニカルの動向は、さらなる米ドル安進行の可能性を示唆している。
今日以降、ドルインデックスが2月2日の安値100.82レベルを下方ブレイクする場合は、新たなトレンドが発生するシグナルになり得る。
ドルインデックスのチャート
TradingViewの日足:年初来
米ドル安の進行はドル円(USDJPY)の重石となろう。
一方、株式市場が堅調地合いを維持している間は米ドル安がクロス円のサポート要因となろう。
ユーロ円(EURJPY)、ポンド円(GBPJPY)そして豪ドル円(AUDJPY)などの主要なクロス円は、新たなレジスタンスの見極めが目先の焦点となろう。
一方、アメリカを含めたインフレの高止まりや景気後退のリスクが意識され株安が進行する場合は、クロス円が総崩れとなる展開が予想される。
上のケースでのドル円は、米金利の動向次第となろう。インフレの高止まりは米金利の反発要因であり、ドル円のサポート要因となり得る。
景気後退のリスクが意識される場合は、米金利の低下と株安が同時に発生するだろう。このケースでは、外為市場で円高の圧力が最も高まることが予想される。
トレードの基礎知識
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米経済指標にらみの展開が続く
3月の小売売上高
今日は3月のアメリカ小売売上高が発表される。景気の先行きリスクが意識されるなか、個人消費が堅調さを維持していることが確認される場合は、米ドルを買い戻す要因になり得る。
だが、上で述べたとおり市場参加者は米利上げサイクルの終了を意識している。よって小売売上が米ドル買いの要因となっても、現時点では調整の反発にとどまる展開を想定しておきたい。
また、堅調な個人消費は米株高の要因になり得る。インフレの鈍化と利上げサイクル終了の思惑により米金利の上昇が抑制される場合、株高は米ドル安の要因となろう。
ドルインデックスは重要サポートポイント100.82のブレイクを想定しておきたい。反発しても10日MA(101.77レベル)で戻りが止められる展開が予想される(上の日足チャートを参照)。
アメリカ小売売上高の推移
アメリカ商務省とブルームバーグのデータをもとに作成 / 月次:2022年以降
4月のミシガン大学消費者信頼感指数
消費者マインドを表す4月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)も米ドル相場の変動要因となる可能性がある。
この経済指標では、低下の傾向にある1年先の期待インフレ率の動向にも注目したい。4月は、3月の3.6%から3.7%へ若干ながら上昇する予想となっている。予想以上の伸びを示す場合は、米金利の反発と米ドルを買い戻す要因になり得る。
逆に期待インフレ率の低下傾向が確認される場合は、米金利の低下と米株高の要因になり得る。この上で述べた3月小売売上の内容にもよるが、期待インフレ率の低下は米ドル安の要因になり得る。
ミシガン大学消費者信頼感指数の推移
ミシガン大学サーベイ・リサーチセンターとブルームバーグのデータをもとに作成 / 月次:2022年以降
テクニカル分析入門
テクニカル分析について
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ドル円の見通しとテクニカル分析
金利差の縮小がドル円の重石に
今日のドル円(USDJPY)は、引き続き下値を試す展開を予想する。
インフレの鈍化が確認されて以降、米債市場では2年債、5年債そして10年債の各利回りがレンジ相場の状況にある。だが反発しても、その幅は限られている。
一方、国内の債券市場では植田日銀による政策修正の思惑が根強く長期金利は3月中旬以降反発へ転じ、現在は0.46%前後で高止まりしている。これらの動向を反映し日米の利回り格差は今年の3月以降、縮小の傾向にある。
ドル円は調整の反発が見られるも、日米利回り格差の縮小傾向を受け上値の水準を切り下げる状況にある。
今日のドル円も米経済指標の内容でトレンドが左右される展開が予想される。上で取り上げた2つの米経済指標が総じて予想以下となる場合は、アメリカの景気リスクが意識されることで金利差の縮小傾向が続くだろう。それはドル円の重石となろう。
ドル円と日米の利回り格差
ブルームバーグのデータをもとに作成 / 日足:2022年以降
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 3% | 3% | 3% |
週次 | 49% | -24% | -8% |
上下のテクニカルポイント
ドル円(USDJPY)がさらに下値を試す場合、目先の焦点は21日MA(132.07レベル)の攻防となろう。昨日は、この移動平均線で相場が反転した。
21日MAの攻防では、日足ローソク足で下ヒゲが示現した。この状況を考えるならば、21日MAは下落局面でサポートラインとして意識される可能性がある。10日MA(132.46レベル)のブレイクは、21日MAをトライするシグナルとなろう。
米金利の低下と株安が同時に発生する場合は、ドル円の21日MAブレイクを想定しておきたい。上で述べた2つの米経済指標が総じて予想以下となる場合は、景気の先行きリスクが意識されることでこのケース(21日MAブレイク)が発生する可能性があろう。
ドル円が21日MAをブレイクする場合、次の焦点は短期サポートライン(131.35レベル)の維持となろう。このラインは、現在の反発相場を象徴している。ゆえに短期サポートラインの下方ブレイクは、反発相場の終焉シグナルとして警戒しておきたい。
一方、今日の米経済指標が米ドル買い要因となる場合は133円台への再上昇、そして新たなレジスタンスの候補として浮上している半値戻しの水準133.80レベルのトライおよびブレイクが焦点となろう。昨日、日足ローソク足の実体ベースで相場の上昇を止めた100日MA(133.11レベル)の突破は、133.80レベルを再び目指すシグナルと想定しておきたい。
ドル円のチャート
TradingViewの日足:年初来