※2024年2月21日12時10分更新
20日の原油価格は軟化したが、2月の安値からは10%近く回復している。中国政府の最近の支援措置が下支えとなっているようだ。
原油価格(ブレント、WTI)の分析
- 中国政府が低迷する経済をさらに下支え
- ブレント原油は過去のスイングローで下落も、200日SMAが支えに
- WTI原油は、長期的に重要な水準付近でもみ合い
- このレポートは、チャートパターンと主要なサポートとレジスタンスを利用して分析しています。テクニカル指標に関する詳細については、当社の学習コンテンツをご覧ください
中国、住宅ローン指標金利の大幅引き下げで下支え
中国人民銀行(中央銀行)は20日、住宅ローン金利の基準となる5年物ローンプライムレート(LPR)を3.95%とし、25ベーシスポイント引き下げたことを明らかにした。8カ月ぶりの引き下げで、同金利が2019年に導入されて以来最大の下げ幅となる。中国経済だけでなく、特に不動産セクターへの新たな支援材料となる可能性がある。
ただ、中国経済は今年も5%の成長率にとどまると予想されており、多くの懸念材料が残っている。不動産セクターは、特に大手不動産デベロッパーの恒大集団(エバーグランデ)が香港の高裁から清算を命じられた後、先行き不透明感が拭えないようにも見える。また、世界の他地域がインフレと闘っているのに対し、中国では物価が低下しており、デフレの脅威にさらされている。
世界経済の成長に対する懸念が根強い中、中国は石油需要の増加に大きく寄与している。とはいえ、中国の景気回復に対する疑念が続けば、原油価格の下落につながるかもしれない。
ブレント原油:過去のスイングローで下落も200日SMAが下支え
原油価格は驚異的な回復を見せ、2月初旬の安値から9%超上昇した。83.50ドルがレジスタンスとなり、その後82ドル付近まで下落したが、82ドルの水準は200日単純移動平均線(SMA)に非常に近いことを考えると、ここでサポートされる可能性がある。200日SMAを下回って弱気なモメンタムが継続しない限り、もみ合い局面とはならないと見ている。
下図で紫色に表示されたゾーンは、中国の株式相場に連動した原油の値動きを示している。原油は中国株急落で積極的に売られたが、その後、市場の信頼性を回復するため、中国国家関連の投資機関が株式や上場投資信託(ETF)を大量に買い占めて中国株が回復すると、原油価格も反発した。
当面のレジスタンスは引き続き83.50ドルである。RSI(相対力指数)では買われ過ぎの水準に達する前に下降に転じている。一方、当面のサポートは82.00ドルであり、その後は200日SMAが控えている。
ブレント原油 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
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WTI原油:(英国産原油)長期的に重要な水準で揺れ動く
WTI原油は20日に下落し、200日SMAと長期的に重要な水準である77.40ドルで構成されるレベルを試す展開となった。中期的には、上昇チャネルの中で高値と安値の切り上げが続いている。
この先、さらに弱気な勢いが強まれば、原油価格は73.84ドル付近の50日SMAを試した後、再びチャネルのサポートが視野に入る可能性がある。原油価格は、英国と日本の景気後退がすでに確定していることから、悪化しているように見える世界経済の成長鈍化懸念に反応し続けている。また、欧州最大の経済大国であるドイツは、ドイツ連邦銀行(中央銀行)によると、すでに景気後退に陥っているという。
WTI原油(米国産原油) 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
IG顧客センチメント:シグナルは混在
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 5% | 0% | 3% |
週次 | 37% | -31% | 13% |
IGクライアントセンチメント(IGCS)によると、米国産原油を取引するトレーダーの63.69%がネットロングで、ロングとショートの比率は1.75対1となっている。
IGCSは逆張り指標として機能する傾向があり、トレーダーがネットロングであることは、原油価格が下落し続ける可能性を示唆している。
ポジション状況を見ると、ネットロングは昨日より増えたが、先週よりは減っている。現在のセンチメント(ポジション状況)および最近の変化(日次、週次でのポジションの変化)からのシグナルは混在しており、目先の見通しは中立となる。
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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