【サマリー】
- 今日の外為市場は2つの重要イベント-日銀金融政策決定会合と米雇用統計が焦点に
- 日銀が予想外に追加の政策修正に動く場合は円高の加速を警戒したい
- 2月の米雇用統計では賃金の伸びが焦点に
- ドルインデックスはトレンドの分岐点106.00の攻防に注目
日銀金融政策決定会合と円相場の展望
日銀は10日、金融政策決定会合の結果を公表する。
黒田東彦総裁にとって任期中最後となる今回の会合では、22年12月に決定したイールドカーブ・コントロール(YCC)の上限引き上げの影響について議論すると思われる。
国債市場の機能改善は重要だが、物価の上昇に賃金の伸びが追い付いていない状況(1月の実質賃金は前年同月比で4.1%減と8年8か月ぶりの落ち込み幅となったこと)や日銀が現在の物価高を一時的とみていることも考えるならば、現行の金融緩和政策を維持する公算が大きい。
しかし、一部ではイールドカーブ・コントロール(YCC)のさらなる修正もしくは撤廃の可能性が意識されている。日銀が追加の政策修正に踏み切る場合、外為市場では円高の加速が予想される。
一方、日銀が現行の金融緩和政策を維持する場合は、円安が予想される。昨日の円相場は前者の可能性を意識してか、主要通貨に対して円高優勢の展開となった。
3月9日の円相場の動向
為替データ:Bloomberg / 基準日:3月8日
2月の米雇用統計と米ドル相場
2月米雇用統計の焦点
今日は2月の米雇用統計が発表される。今回の雇用統計は、次回の連邦公開市場委員会(FOMC、3月21~22日開催)の動向を大きく左右する材料である。ゆえに、米ドル相場を大きく動かす重要なイベントになり得る。
非農業部門雇用者数変化の予想は22.5万人増、失業率は3.4%と1月から横ばいの予想となっている。
インフレのリスクが再燃している状況を考えるならば、より注目したいのが平均時給(賃金)の伸びである。2月は前月比で0.3%増と1月から横ばいの予想だが、前年同月比は4.7%増と1月の4.4%から伸びが加速すると予想されている。
賃金インフレを伴う労働市場のひっ迫した状況が確認される場合、米金利は上昇で反応することが予想される。米金利の上昇は米国株の下落または急落の要因となり得る。よって、“強い” 米雇用統計は米ドル高の進行を促す要因となろう。
アメリカ雇用統計の動向
米労働省のデータを基に作成 / 月次:2022年~
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ドルインデックス(米ドル相場)の見通しとテクニカルポイントについて
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、106.00レベルで上昇が止められている。昨年の12月上旬から今年の1月上旬にかけて相場の戻りを何度も止めた経緯のあるこの水準(106.00)を突破するきっかけとなり得るのが、2月の米雇用統計である。
強い米雇用統計によりドルインデックスが106.00ポイント台の攻防へシフトすれば、106.60レベルで推移している200日MAのトライおよびブレイクとなるか?この点に注目したい。
一方、2月の米雇用統計が米ドル売りのイベントとなれば、“レジスタンスポイントとしての106.00“ が鮮明となろう。ドルインデックスの下落幅が拡大する場合は、21日MA(104.36レベル)の維持が焦点となろう。
ドルインデックスがこの移動平均線(21日MA)をも難なく下方ブレイクする場合は、“サポート転換” が確認されている104.00の攻防が焦点として浮上しよう。
ドルインデックスのチャート
TradingViewの日足チャート:22年11月~
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 14% | 2% | 6% |
週次 | 53% | -21% | -6% |
ドル円の見通しとテクニカルポイント
下落リスクを警戒する局面にある
今日のドル円(USDJPY)は、日銀金融政策決定会合と2月の米雇用統計で上下に大きく振れる展開が予想される。
通貨オプション市場では、リスクリバーサル(1ヶ月)が昨年12月の水準(-1.925)を越える-1.975までドル・プットに傾いている。予想変動率(1ヶ月)は13%台まで上昇している。これらはドル円の下落を警戒する動きである。
一方、テクニカルの面ではMACDでデッドクロスのムードが出ている。また、200日MA(137.48レベル)がレジスタンスラインとなり、かつ昨日の日足ローソク足で大陰線が示現したことも考えるならば、今のドル円は下落リスクを警戒する局面にある。
今日の金融政策決定会合で日銀が追加の政策修正を決断する場合は、円高の進行が予想される。このケースでは135円台の維持が焦点となろう。21日(135.13レベル)のブレイクは、135.00トライのシグナルと想定しておきたい。
だが、昨年12月の変動幅を考えるならば、政策修正による円高の圧力が高まる場合、ドル円はあっさりと135円を下方ブレイクする可能性が高い。
ドル円が135円をブレイクすれば、“サポート転換” が確認されている134.00の維持が焦点として浮上しよう。この水準(134.00)をも難なく下方ブレイクすれば、50日MA(132.42レベル)を視野に下落幅の拡大を警戒したい。
2月の米雇用統計が総じて予想どおりか、それ以下となる場合もドル円の下落を想定しておきたい。日銀による政策修正ほどのインパクトはないと思われるが、「米金利の低下→米ドル安」により21日MAや135円をブレイクする可能性を想定しておきたい。
上昇局面での注目ポイント
一方、日銀金融政策決定会合で現行の金融緩和政策が維持される場合は、円安がサポート要因となりドル円が上昇する展開を予想する。強い雇用統計も確認される場合は、200日MAの完全突破と138円台への攻防シフトを想定しておきたい。
ドル円が138円台へ上昇する場合は、2つの点に注目したい。
ひとつは、反落の局面で200日MAまたは138.00レベルが相場を下支えするかどうか?である。レジスタンスとして相場の上昇を止めたこれらの水準が “サポート転換” すれば、市場参加者に地合いの強さを印象付けよう。
もうひとつの注目点は、半値戻しの水準139.59レベルの攻防となるかどうか?である。この水準のブレイクは、節目の140.00トライのシグナルとなり得る。
ドル円のチャート
TradingViewの日足チャート:22年10月~