テクニカル指標を深く理解しているトレーダーは、そうでない人に比べて金融マーケットを上手く渡り歩いていくことができます。戦略とトレードプランを決めるのに役立つのは、自分の投資目標やリスクの許容度、トレードスタイルですが、どのようなテクニカル指標でアプローチするかを知っておけば、エントリーとエグジットのポイントを判断する助けになるのです。
テクニカル指標は何百種類もありますが、効果的な指標を戦略の一部として使えば明確なシグナルを見極めることができます。本記事では、株式トレードで代表的な6つのテクニカル指標を紹介します。
株式トレードにおすすめのテクニカル指標
最も効果的なテクニカル指標を見つけ出すには、現在のマーケット状況を把握することに加えて、トレード戦略の目標を考慮することが大切です。また、個別株をトレードする場合においても、その株が含まれている株価指数に指標を当てはめれば、マーケットの全体像を把握できます。
以下、株式分析に使用する代表的なテクニカル指標を6つ紹介します。
指標の名称 | 指標の種類 | 特徴 |
---|---|---|
クライアントセンチメント | 逆張り系 |
|
相対力指数(RSI) | モメンタム系 |
|
ストキャスティクス | モメンタム系 |
|
単純移動平均線(SMA) | トレンド系 |
|
指数平滑移動平均線(EMA) | トレンド系 |
|
移動平均収束拡散手法(MACD) | モメンタム系 |
|
おすすめのテクニカル指標1:クライアントセンチメント
クライアントセンチメントのデータは、証券会社のトレーディングデスクのデータにもとづいたもので、本番口座の個人顧客のトレードを測定し、マーケットの方向性にバイアスが生じているかどうかを判断します。センチメントが極端なレベルに近づくと、トレーダーは反転の可能性が高いと考え始めます。そのため、この指標は逆張り(コントラリアン)の指標であるとともに、先行指標の要素もあると考えられています。
下図の例は、トレーディングデスクのデータにもとづくIGのセンチメントゲージであるIGクライアントセンチメント指数の例で、ダウ平均株価指数(ティッカー: Wall Street)を表しています。このデータでは、トレーダーの64%がショートポジションを持つため、大多数のトレーダーがWall Streetの株価は下がると予想していることを意味しています。しかし、センチメントは強気となっているため、データにもとづけばWall Streetの株価は上昇が期待できることになります。センチメント(または個別の指標)だけでトレードを実行することはおすすめしませんが、ダウ平均の構成銘柄をトレードする人なら、追加の指標を使う前にこのデータを情報ツールとして利用するといいでしょう。

DailyFXでは、FX、コモディティ、仮想通貨、主要株価指数においてIG個人顧客の本番口座でのトレードにもとづいたクライアントセンチメントのデータを提供しています。IGプラットフォーム上の個別銘柄で該当するものについては株式のセンチメント分析もご利用いただけます。



おすすめのテクニカル指標2:相対力指数(RSI)
相対力指数(RSI)は、値動きの大きさを測定し、マーケットが買われ過ぎか売られ過ぎかを判断するモメンタム系のオシレーターです。RSIが30未満なら売られ過ぎ、70を超えていれば買われ過ぎと考えられます。この値は反転の可能性を示す重要な水準であるため、RSIは先行指標に分類されます。
下記のチャートは、ウーバー・テクノロジーズ(ティッカー:UBER)の日足チャートにRSIを当てはめたものです。RSIは30から70の間でしばらく推移した後に、30のレベルを割り込んでいます。30を下回ってからトレンドがいったん上向きに反転するように見えますが、価格は下がり続けているため、最初のシグナルは「だましのシグナル」です。しかし、RSIが30を下回っていて上昇に転じるときに2つ目のシグナルが出ています。翌日にRSIが30のラインを突破したことで、初めて反転が確認されるわけです。

おすすめのテクニカル指標3:ストキャスティクス
ストキャスティクスもモメンタム系の指標の一つで、買われ過ぎや売られ過ぎを判断するのに用いられます。RSIが値動きのスピードを測定するのに対して、ストキャスティクスは一定期間の価格のレンジに対する現在の株価を測定します。
%Kライン(黒線)は、一定期間の最安値と最高値に対する直近の終値を使って計算し、%Dライン(赤の点線)は%Kラインの単純移動平均線(最も一般的なのは3日間移動平均線)を示しています。ストキャスティクスでは、%Kラインが%Dラインの上に突き抜けると強気のクロスオーバーとなります。同じように、%Kラインが%Dラインの下に突き抜けた場合は、弱気のシグナルとなります。最も強いシグナルが出ることが多いのは、20の下から上に抜ける動きとなる強気のクロスと、80を割り込む動きとなる弱気のシグナルです。
下の図は、ストキャスティクス指標を S&P 500の価格チャート(ティッカー: US 500) に適用しているものです。このチャートでは、80のラインの上で弱気のクロスオーバーが起こり、トレンドが下向きに反転する可能性を示しています。また、このラインが80をクロスした時に反転が確認されます。同じように、強気のクロスオーバーは20未満で起こり、20のラインをクロスした時に反転が確認されます。

おすすめのテクニカル指標4:単純移動平均線(SMA)
単純移動平均線(SMA)は、一定期間の平均株価を表す遅行指標です。トレンド相場では、移動平均線は短期的な値動きの変動を調整するため、単純にトレンドを見極めることができます。
下のチャートで示しているように、移動平均線を使えば、レンジ相場でサポートラインやレジスタンスラインを見極められます。50日移動平均線をボーイングの株価のチャートに当てはめると、ボーイングの株価がレンジ相場で推移している場合でも、50日移動平均線をサポートと見なせばよいことが明らかです。

おすすめのテクニカル指標5:指数平滑移動平均線(EMA)
前述したSMAと同様に、指数平滑移動平均線(EMA)は遅行指標で、一定期間における株式の平均価格を表しています。しかし、SMAでは期間内のすべてのデータを均等に加重しますが、EMAでは直近の株価に比重を置くという違いがあります。これにより、SMAで見られるようなタイムラグを軽減させることができます。このため単純移動平均線のタイムラグによってチャンスを逃すことなくマーケットの全体像を把握できるため、EMAはトレンドフォローでのトレードに最適な指標の1つになるわけです。
おすすめのテクニカル指標6:MACD
MACD(移動平均収束拡散法)は、モメンタムとトレンドの強さの両方を測定できるテクニカル指標です。MACDでは、MACDライン(青)とシグナルライン(赤)に加えて、MACDラインとシグナルラインの差を示すヒストグラム(緑)が表示されます。
MACDラインは、2本の指数平滑移動平均線(一般的なデフォルト設定では12日と26日の移動平滑平均線)の差で、シグナルラインは一般的にMACDラインの9日の指数移動平均線です。これらの線がゼロラインを中心にして推移するため、MACDはオシレーターのような性質があり、買われ過ぎのシグナルはゼロラインの上に、売られ過ぎのシグナルはゼロラインの下に出ます。
下の図で、アップル(ティッカー:AAPL)の例を見てみましょう。
- MACDラインが、ゼロラインの下でシグナルラインの上にクロスしたときは、強気のシグナルになります。
- MACDラインが、ゼロラインの上でシグナルラインの下にクロスしたときは、弱気のシグナルになります。

テクニカル指標でよくある質問(FAQ)
先行指標と遅行指標の違い とは?
先行指標と遅行指標は、どちらも過去の株価データにもとづいていますが、先行指標はマーケットで予想される値動きを示しています。これに対して遅行指標は、トレンドが確認された時に、エントリーとエグジットのシグナルを見極めるために使われます。
この2つの指標には類似点と相違点がありますが、どちらも同じように重要です。トレーダーは両方の指標を同時に使うのが有益でしょう。
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