カップアンドハンドルのパターンは金融マーケットで日常的に発生します。カップアンドハンドル戦略をトレードシステムに組み込むことでマーケットの分析テクニックを向上させることができます。
カップアンドハンドルとは
カップアンドハンドルは、先行する強気または弱気のトレンドの後で発生するコンティニュエーション(継続)パターンです。このパターンの形成はトレーダーに独特の機能をいくつか提供します。「カップアンドハンドル」という名称はバーチャートのパターンに由来があります。「カップ」は、ボウル型を表し、「ハンドル」は下方へ傾く保ち合い期間を表しています。

カップアンドハンドルとはチャートパターンの一つ
前述した通り、カップアンドハンドルとはチャートパターンの一つであり、取手のついたコーヒーカップのような形をしています。米国の著名投資家であるウィリアム・オニールが著書の中で詳しく紹介し、日本でも話題になりました。カップアンドハンドルを形成した後は価格が上昇する可能性が高いと言われており、FXや株など多くのマーケットで利用されているチャートパターンです。
カップアンドハンドルでは頻繁に利益確定をおこなう傾向がある個人投資家や短期トレーダーによって、一時的に価格が下落してカップが形成されます。さらに、買いポジションで含み損を抱えていたトレーダーがカップの高値で決済することにより、取手の部分が形成されるのです。その後は個人投資家や短期トレーダーに加えて、大きな資金を動かす機関投資家も買いポジションを保有することで大きく上昇することになります。
カップアンドハンドルの特徴
カップアンドハンドルの特徴は、まずコーヒーカップに取手のついたような形が挙げられます。視覚的にわかりやすく認識しやすいチャートパターンだと言えるでしょう。ただし、ダブルトップと間違えやすい点には注意が必要です。
カップアンドハンドルは日足チャートの場合、カップを形成し始めてから7〜65週間かけて形成され、多くは3〜6ヶ月ほどでチャートパターンが完成します。実際のチャートではきれいに形成されることはあまり無いため、形にこだわりすぎないようにしてください。
ハンドルが形成された後には機関投資家が入ってくるため、ポジションを保有する投資家の構成が変化することもポイントになります。大きな資金を動かす機関投資家によって、価格が上昇しやすくなるのです。
カップアンドハンドルパターンの見つけ方
他のチャートパターンと比べると、カップアンドハンドルのパターンは少し複雑であるため、トレーダーによっては見つけることが難しいかもしれません。カップアンドハンドルのパターンを上手に見つけるためのステップを解説します。
- カップアンドハンドルのパターンは強気の継続パターンであると考えられているため、先行する上昇トレンドの見極めは必須です。これはプライスアクションテクニックまたは移動平均線などのテクニカル指標を使用しておこないます。
- カップは「V字型」ではなく「U字型」に近い形状をしていて、カップの両側の高値はおおよそ同じ価格となっています。
- このハンドルの形状は、通常フラッグやペナントパターンの形態の調整局面(保合い、もみ合い期間)に似ています。ハンドルには下向きの傾斜がありますが、横に進む保ち合い状態となっており、レクタングルパターンに似ている場合もあります。
- ブレイクアウトシグナルは、トレーダーの好みにより発生の仕方が異なります。一部のトレーダーはカップの高値を水平に結んだレジスタンスラインに注目し、このラインをブレイクアウトするとエントリーをおこないます。また別のトレーダーは、ハンドルのトレンドラインのブレイクアウトをロングのエントリーポイントとします。

カップアンドハンドルパターンのトレード方法
カップアンドハンドルパターンのトレード方法は、FXと株式で少し異なります。株式では、出来高表示機能がよく使用されます。出来高の急上昇はブレイクアウトを示唆し、エントリーシグナルを確認します。
FXでは通常この機能を使用せず、代わりにレジスタンスラインの上方へのブレイクアウトなどのより典型的なブレイクアウトの確認方法を採用します。カップアンドハンドルのトレードでは、その他のプロセスは同じです。
カップアンドハンドルパターンを使用する株式のトレード方法
Wynn Resorts Ltdの例:

上の図は有名なホテル・カジノ企業Wynn Resorts Ltdの月足チャートです。このチャートでは、高値と安値を切り上げていくトレンドラインが裏付ける明確な上昇トレンドの後でカップアンドハンドルが形成されています。上昇トレンドの確認には代わりに移動平均線を用いることもできるでしょう。
チャートには緑の矢印で示した2つの潜在的なエントリーポイントがあります。1つめのエントリーは、上昇フラッグに似た価格チャンネルの上端をブレイクアウトした場所で、これは出来高の急騰で上向きの動きを確認できます。2つめのエントリーは、カップの両側の高値を結んだレジスタンスラインを、節目となる価格として使用します。このラインが突破されたら、ロングでのエントリーを検討することができます。この方法は積極的ではないように見えますが、追加の確認をおこなうことは、ハンドルチャンネルに関するダマシのブレイクアウト対策となるでしょう。
ストップ価格は、通常ハンドルの安値に設定します。ストップにもとづき1:2のリスク・リワード比率を使って2倍の値幅でテイクプロフィット(リミット)を設定することができます。リミット価格の設定にあたってフィボナッチエクステンションを好むトレーダーもいます。この選択はトレーダーの好みとなります。
カップアンドハンドルパターンを使用するFXのトレード方法
EUR/USDの例:

上のEUR/USDの月足チャートに見られるカップアンドハンドルのフォーメーションは潜在的な買いの機会を示しています。この例では先行する上昇トレンドの判定に移動平均線を使用しています(価格が100日移動平均線の上にある)。
このチャートのユニークな点は、カップの両端の高値を結んだレジスタンスラインが、ハンドルの価格チャンネルと一致している点です。このため、2つのレジスタンスラインのブレイクアウトポイントが同じとなり、エントリーポイントは1つとなります。ストップとリミットの価格は、上述の株式の例と同じ方法で決定します。このFXチャートが株式チャートと唯一異なるのは、出来高ツールがない点です。
カップアンドハンドルのエントリーポイント
基本的にはカップアンドハンドルは順張りで使用します。逆張りで使うことも可能ですが、順張りと比較して少し難易度が高いです。なぜかと言うと、カップが形成された後の値動きが反転するタイミングを素早くとらえる必要があるからです。短期トレードを目的に逆張りでエントリーをするのも一つの手ですが、まずは順張りでのトレードをしっかりとマスターしてからの方がよいでしょう。
前述した通り、逆張りでのエントリーポイントはカップが形成されたタイミングです。ここで売りポジションを保有し、その後のハンドルで利益確定をおこないます。カップが形成された後は、カップアンドハンドルが成立した場合でも価格が反転するポイントです。さらに、上位足やその他のテクニカル指標によって売りが優勢であると判断できれば、勝率を上げやすくなります。
カップアンドハンドルの逆張りは短期トレードになるため、損切りを早めにおこないリスクを軽減させるようにしましょう。
カップアンドハンドルを活用する際に注意すべきこと
カップアンドハンドルは有効なチャートパターンですが、使う際に注意すべきこともあります。チャートパターンの形成に時間がかかることが注目されがちですが、その他にも注意すべき点があるため、しっかりと理解しておきましょう。以下で主な注意すべきことについて解説させていただきます。
チャートパターンには逆もある
カップアンドハンドルには、逆パターンの「インバース・カップアンドハンドル(逆カップアンドハンドル)」もあります。インバース・カップアンドハンドルは、カップアンドハンドルを逆さまにした形になります。例えば、ダブルトップとダブルボトムのような関係です。
トレードの仕方はハンドルやレジスタンスラインをブレイクした場合に売りポジションを保有すること以外、カップアンドハンドルと特に異なる部分はありません。単純に真逆のパターンと考えてください。
インバース・カップアンドハンドルは、価格が下落するサインとして活用できる有効なチャートパターンです。
崩れパターンに注意
カップアンドハンドルを使ってトレードをする際は、崩れパターンに注意してください。なぜなら、カップアンドハンドルは完全な形で形成されることがあまりないからです。要するに、きれいな形のカップアンドハンドルはあまりチャート上に現れないのです。
チャート上に現れるカップアンドハンドルは、ある程度崩れた状態であることが多く、慣れないうちは少々識別に時間がかかると思います。とはいえ、慣れてくれば短時間で見つけることが可能です。
カップアンドハンドルの崩れパターンに慣れるには、実際にチャートを見ることが一番よい方法になります。カップアンドハンドルの識別を実践し、経験を積んでいきましょう。
カップアンドハンドルパターンのメリットとデメリット
利点 | 欠点 |
---|---|
経験のあるトレーダーならば見極めが容易。 | 初心者トレーダーには見極めが困難。 |
カップアンドハンドルは株式とFXの両方で使用可能。 | 他のテクニカル指標による追加の裏付けが必要なことが多い。 |
明確なストップ、エントリー、リミットの価格を提示する。 | カップアンドハンドルは実行に長い時間がかかる場合がある。 |
カップアンドハンドルは識別できるようになればトレードチャンスを増やすことにつながる上、特徴的な形であることから、経験のあるトレーダーであれば見極めが比較的容易です。初心者の方は見極めが難しいかもしれませんが、実際にチャートを見て慣れていくことで自然と識別できるようになります。
また、カップアンドハンドルはFXや株など様々なマーケットで使用されており、一度使えるようになってしまえば、マーケットを選ばずに使用できます。カップアンドハンドルに限ったことではありませんが、他のテクニカル指標と組み合わせることで、さらに信頼性を上げることが可能です。
利益確定は出来高が減少したタイミング、他のテクニカル指標でトレンド終了を示唆するサインが出たタイミングでおこなうことが一般的になります。
まとめ
カップアンドハンドルは高値を更新したタイミングで適切にエントリーをすれば、大きな利益を得られる可能性があるチャートパターンです。順張りでのトレードを好む方は、覚えておけば重宝するでしょう。
とはいえ、初心者の方には始めは見極めが難しく、チャートを見ながら識別に慣れていくことが必要になります。カップアンドハンドルを探す練習から始め、慣れてきたら実戦でぜひカップアンドハンドルを使ってみてください。
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