※2023年9月5日16時20分更新
米ドル見通し:対ユーロ/英ポンド/カナダドルでの値動き



最近の重要なレジスタンスでの攻防は、このところの米経済指標の軟化を受け、米国経済の力強い成長観測が後退する中、米ドル指数が上昇の勢いを失いつつあるとの見方を強めている。
米国のエコノミックサプライズ指数は2年ぶりの高水準から低下しており、楽観的な見方がほぼ価格に転嫁された可能性を示している。現在進行しているディスインフレに加え、労働市場の減速(8月は失業率が上昇)を示す初期兆候が見られることから、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加引き締め観測は後退している。市場は現在、FRBが今月後半に開催予定の米連邦準備制度理事会(FOMC)会合で金利を据え置く確率を90%以上、年内の利上げ見送りの確率を60%程度と見ている。
さらに、中国政府がここ数カ月間に迅速に打ち出した経済活性化のための支援策が、センチメントに底入れ感を与えており、少なくとも今のところは米ドルの重しとなっている。とはいえ、米ドル指数が102.50-103.00を割り込まない限り、上昇トレンドが反転することはないだろう。さらに詳しく知りたい方は、8月22日付記事「ドル見通し:ジャクソンホール会議を控えて、ユーロ/ドル、英ポンド/ドル、ドル/円の値動きを読む」をご覧ください。
米ドル指数 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
テクニカルチャートでは、米ドル指数が先週、4時間足チャート上の89期間移動平均線や一目均衡表の雲下端を含む、かなり強い収束エリア102.50-1.0300から反発したため、短期的な上昇の勢いは維持されている。先日の記事で指摘したように、上昇トレンドの転換には、指数がサポートを下回る必要がある。詳しくは、8月24日付記事「米ドル見通し:頭打ち? 米PMIへの過剰反応が物語る市場ムード」をご参照ください。
米ドル指数 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
米ドル指数は、200日移動平均線をわずかに上回る水準にある5月の高値104.70という厳しい壁を乗り越えるのに苦戦している。日足チャートでは弱気のダイバージェンス(指数水準は横ばい、モメンタムは低下)が示現し、指数には壁を突破する力が不足していることを示しており、指数の低下リスクが高まっている。詳細については、8月28日付記事「米ドル見通し:レジスタンス試す展開、パウエル議長講演を受けて」をご参照ください。



ユーロ/米ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/米ドル:安値の確認待ち
ユーロ/米ドルは、右肩上がりのチャネル下端、89週移動平均線とも重なる200日移動平均線というかなり強力なサポートに近い水準で推移している。2023年に入ってから不安定な値動きが続いているにもかかわらず、価格は昨年終盤以来、安値圏での安値更新には至っておらず、より広範な見通しが上向きであることを示唆している。しかし、1.0500-1.0600を下回ると、上昇トレンドが転換するリスクが浮上する。一方、ユーロ/米ドルは売られ過ぎの状態にあるようで、反発の可能性が高まっている。ただ、反発するには、先週の高値1.0950を上回る必要がある。
英ポンド/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/米ドル:レンジ内での推移
英ポンド/米ドルは、8月10日の高値1.2820という直近の重要なレジスタンスに圧迫され続けている。1.2820は7 月末の高値1.30というもう一つのレジスタンスをわずかに下回る水準にあり、大局的にもみ合いの展開となる可能性が高まっている。詳しくは、8月23日付記事「英ポンド見通し:上昇一服の兆し? 対ドル・ユーロ・円での値動き」をご覧ください。これまでのところ、英ポンド/米ドルは、200日移動平均線の上方に位置する6月末の安値1.2600というかなり強い収束サポートを上回る水準を維持している。5月の安値1.2300を割り込むようなことさえなければ、2022年後半から続く高値圏での高値・安値の切り上げパターンが崩れることはないだろう。それまでは、トレンドはよくても横ばいとなりそうだ。
米ドル/加ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
米ドル/加ドル:重要な閾値で攻防
米ドル/カナダドルは、2023年4-6月期(第2四半期)の高値1.3650という重要なレジスタンスを試している。これは7月に、200週移動平均線と89週移動平均線という強力なサポートから反発した流れを受けている。ただ、先週の安値1.3500を下回れば、短期的な上昇の勢いが弱まったことを確認することになる。より広範な下降バイアスを維持するには、価格がこのレジスタンスを下回る水準で推移する必要がある。



--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。
新たなレポートの配信等はtwitterアカウント @DailyFXJapan で確認できます。