※2023年8月24日14時57分更新
米ドル 見通し:対ユーロ・英ポンド・豪ドル
- 23日の米ドル安進行は、上昇トレンドに亀裂が生じた初期のシグナルかもしれない
- 米ドルにとって、予想を下回った米PMIが痛手に
- ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルの見通しと注目すべき水準とは?



米ドル相場は当面、頭打ちとなる可能性が高まっている。公正を期して言えば、これは必ずしも上昇トレンドの終焉を意味するものではない。
23日に発表された8月の米製造業およびサービス業の購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回ったことを受け、米ドルは幅広く下落した。8月の米PMIは下振れこそしたが、景気拡大と縮小の節目である50を7カ月連続で上回った。PMIの水準を他国と比較した場合、ユーロ圏と英国の製造業活動が縮小したことからも分かるように、それほど悪いわけではない。このような状況下、1つの経済指標に対する過剰とも言える米ドルの反応は、より広範な通貨トレンドに対する市場のムードを反映しているように見える。鉱工業生産、小売売上高、住宅着工件数など、直近の米経済指標が堅調だったことを考えれば、なおさらである。詳細については、前回8月22日付記事「ドル見通し:ジャクソンホールを控えて、ユーロ/ドル・英ポンド/ドル・ドル/円の値動きを読む」をご覧ください。
米ドル指数 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
きょう24日から3日間にわたって開催される米カンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は最終日の26日に講演する。市場の注目が集まる中、パウエル議長が経済指標に依存したバランスの取れた見解を示せば、多くの通貨に対して米ドルがさらに下降する手掛かりとなるかもしれない。しかし、最近の堅調な米経済指標を背景にパウエル議長のタカ派的なトーンが強まれば、米ドル安は限定的となる可能性がある。
米ドル指数 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
テクニカルチャートでは、米ドル指数は、200日移動平均線と2023年初頭からの下降トレンドラインという堅いレジスタンスをなかなか突破できずにいる。ここ数日で見られる実体の小さいローソク足パターンである同時線に加え、23日には逆ハンマー(トンカチ)が示現し、米ドルの上昇が一服する可能性が高まっている。4時間足チャートに目を移すと、89期間移動平均線、一目均衡表の雲下限を含む、102.50-1.0300に収束した当面のサポートを割り込むと、上昇圧力が弱まったことが確認できるだろう。
ユーロ/米ドル 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/米ドル:底値の確認待ち
日足チャートでユーロ/米ドルは、89日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表の雲下端という重要なサポートを上回る水準を維持している。底値を付けたことを確認するための必要条件は揃ってきているが、サポートを上回る水準の維持だけでは最悪期が終わったと結論づけるには不十分だ。当面の下値リスクを後退させるには、当初のレジスタンス1.0900-1.0950を上抜ける必要がある。その上の水準では8月10日の高値1.1065が次のレジスタンスとして控えている。
英ポンド/米ドル 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/米ドル:狭いレンジで落ち着いている
今月の英ポンド/米ドルは、1.2600-1.2800の狭いレンジに落ち着いているようだ。レンジの下限は89日移動平均線、日足チャート上の一目均衡表の雲下限、そして6月末の安値1.2600が位置するエリアである。1.2600の下には、200日移動平均線や5月の安値1.2300など、下値を限定的にしそうなサポートが多数存在している。上昇局面では、英ポンド/米ドルが8月10日の高値1.2820を上回れば、当面の下落圧力は薄れるだろう。
豪ドル/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
豪ドル/米ドル:重要な収束サポート近辺で推移
豪ドル/米ドルは、6月から続く右肩下がりのピッチフォークチャネルの中央線と2023年末を始点とする下降トレンドラインという重要な収束サポートを試しているが、売られ過ぎ感が強い。23日に、22日の高値0.6450という小型のレジスタンスを上回ったことが、豪ドル/米ドルが反転する初期のシグナルかもしれない。4時間足チャートで価格が89期間移動平均線と一目均衡表の雲上端を上回れば、当面の底を形成したことが確認できるだろう。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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