※2023年8月23日17時21分更新
英ポンド見通し:対ドル・ユーロ・円の値動き
- 英ポンド/ドルは、7月の英コアインフレ率が上振れたにもかかわらず、上げ幅を拡大できずにいる
- ユーロ/英ポンドは下値を切り下げそうな状況にある。英ポンド/円の上昇は、今のところ勢いを失っている
- 英ポンドクロス通貨の注目すべき重要な水準とは?



英ポンドは、先週発表の英コアインフレ率が上振れたものの、いくつかの主要通貨に対して上げ幅を拡大するには至っていない。これは、2022年後半から20%超上昇したことを考えると、より広範な上昇トレンドが一服するシグナルかもしれない。
7月の英消費者物価指数(CPI)コア指数が予想を上回ったことで、イングランド銀行(BOE、中央銀行)が来月の金融政策委員会(MPC)で25ベーシスポイントの利上げを実施することが決定的となった。しかし、英ポンドはその恩恵をあまり受けていない。投機的な英ポンドのロングポジションが膨らんでいること、買われ過ぎの状況、そして引き締めはすでに織り込まれている可能性があることが、利上げ観測に対する英ポンドの感応度を悪くしているようだ。さらには、インフレ率は依然としてBOEの目標水準を大きく上回っているうえ、賃金の伸びも堅調だが、先行きの物価や経済活動を示す指標の中には、物価上昇圧力が和らいできていることを示すものもある。
英ポンド/ドル 月足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/ドル:まだ脱したわけではない
日足チャートを見ると、英ポンド/ドルは、89日移動平均線、一目均衡表の雲下端、そして6月末の安値1.2600が収束した強固なサポートからわずかながら反発している。この反発の可能性については前回の記事で指摘している。8月4日付記事「英ポンド見通し:反発が視野に、英中銀の利上げを受けて」をご参照ください。
しかし、短期的な観点からは、英ポンド/ドルはもみ合い局面から抜け出したわけではない。7月末の高値1.3000を上回らない限り、当面の弱気圧力は薄れないだろう。それまでは、短期バイアスは横ばいから下向きのままである。
より長期のチャートを見ると、上昇の勢いが衰え始めている。月足チャートでは、英ポンド/ドルは89カ月移動平均線、一目均衡表の雲上限、2014年からの下降トレンドラインなどがある堅いレジスタンスに直面している。今月は7月の安値を割り込んだことで、調整局面がもう少し続くリスクが高まっている。
英ポンド/ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
公正を期すために、中期トレンドが弱気に転じたわけではないことを記しておく。実際、以前の記事で指摘したように、中期的な観点から見れば、7月に数カ月ぶりの高値まで上昇したことで、2022年後半に始まった高値圏での高値・安値の切り上げパターンの継続が確認され、中期的には上昇の可能性が残されている(5月8日付記事「英中銀の金利発表控え、英ポンド堅調:英ポンド/ドルの上昇余地とは?」参照)。
重要なのは、昨年末に指摘したように、今年の新高値は単なる自律反発以上のものになる可能性があること、つまり、中期的な下落トレンドが反転するきっかけになるかもしれないということだ。この点を最初に指摘した10月3日付記事(英語のみ)をご参照ください。
ユーロ/英ポンド 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/英ポンド:再び下値を目指す展開?
一服後のユーロ/英ポンドは、再び下値を目指す展開となりそうに見える。このリスクについては前回の記事で指摘している。8月4日付記事「英ポンド見通し:反発が視野に、英中銀の利上げを受けて」をご参照ください。価格は現在、昨年12月の安値0.8550という重要な底値を試しており、これを決定的に下方ブレイクした場合は、2022年8月の安値0.8350に向かって下落する可能性がある。
英ポンド/円 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/円:レジスタンス付近で失速
英ポンド/円の上昇は、2023年初頭から続く右肩上がりのピッチフォークチャネル上端に位置する重要なレジスタンス辺りで失速している。日足チャートでは弱気のダイバージェンスが示現しており(14日RSIは低下し、価格は上昇)、今年の上昇は勢いを失いつつあることを示している。それでも、7月の高値184.00という当面のサポートを割り込まない限り、短期的に上昇圧力が弱まることはないだろう。ただし、7月の安値176.25を下方ブレイクすると、広範な上昇トレンドに亀裂が生じることになる。



--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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