トレンド・トレーディング
3つの相場環境の中でも、トレンドは注目されることが多い。トレンドがトレーダーにとって魅力的な相場環境である理由として、値動きの方向性がわかりやすいことが挙げられる。
未来は不確実であり、それは不変である。だが、トレーダーがトレンドに注目した際に、トレンドが継続する可能性があることは確かだ。そして、代表的な中央銀行が金利を引き上げている、あるいは、インフレ率が上昇しており中央銀行が将来的に金利を引き上げるとトレーダーが予想しているなど、トレンドが存在する理由がある場合、それらの根拠によりインフレ率のトレンドが継続すればさらなる価格上昇につながると論理的に予測できるはずだ。



ただし、トレードにおける他の相場環境と同様に、トレンドは相対的な評価である。そして、トレンドを示す手法には、それぞれ利点と欠点がある。トレーダーにおけるトレンドフォローの目標は、強いトレンドに注目し、その値動きにあわせてトレードのきっかけを得る方法を仮説として立てることだ。そして、「安値で買い、高値で売る」という昔からのロジックは、この状況下でトレーダーが取り入れることが多い。
FXのトレンドの見極め方1. 時間軸を決める
時間軸でトレンドを定義する方法は、初心者トレーダーにとって重要なポイントである。5分足チャートでトレンドに注目しても、1時間足や日足チャートで見ると全く別の値動きにとらえられる可能性があるからだ。さらに、中級者のトレーダーが日足チャートでトレンドに注目したとしても、スイング戦略でよく利用される週足チャートのトレンドとは異なる場合がある。
トレーダーはまず、マーケットとセットアップを同一条件で評価する必要がある。そのためには、戦略で利用している時間軸を固定しなければならない。
これは、トレンドフォローにおいて特に重要である。なぜなら、多くのトレーダーはトレンドを評価し、その後エントリーのきっかけを探すために短期チャートを確認して「安値で買い、高値で売る」ことを目指しているからである。
トレーダーがさまざまなアプローチで利用するチャートの時間軸について詳しくは、教育セクションにこのトピックに関するすべての記事が掲載されている。
テクニカル分析入門
タイムフレーム分析
推薦者: James Stanley
この記事では、「スイングトレーダー」のアプローチを利用する。このアプローチでは、トレンドについては日足チャート、エントリーに利用できる具体的な戦略情報については、4時間足チャートを参考にする。
FXのトレンドの見極め方2. テクニカル指標を使う
チャートの時間軸を固定したら、次に分析方法を考慮する。トレンドを定義するにはさまざまな手法があるが、この記事では適用されることが多いものを取り上げる。
移動平均線
移動平均線は、トレンドを評価する上で一般的に使用されることが多い方法である。200日移動平均線は、当然のように利用されることが多く、経験豊富なトレーダーや初心者トレーダーなど、多くのトレーダーがチャート上に適用している人気の指標である。
この指標については、トレーダーのための移動平均線の説明と使い方をプロが解説!の記事で詳しく解説している。



200日移動平均線の欠点は、値動きに対して反応が遅いことを考慮すると、あまり実用的ではない可能性があることだ。強いトレンドが発生すると、価格は非常に長い期間に渡って移動平均線を上回り続けることがある。そして、トレンドが終息し、価格が大きく離れた場合、移動平均線と再び交わるまでに長時間がかかることが考えられる。そのため、移動平均線は強力なトレンドフィルターとして、テクニカル分析を利用するトレーダーから支持されているが、トレンドの評価に関しては、多くのトレーダーが求めるほど有用ではない可能性がある。
上記を考慮して、トレーダーは20日、50日、100日など短期間の移動平均線を利用することで、トレンドフォローにおける重要性を高めている。以下のチャートでは、20日、100日、200日の移動平均線を適用している。より短期間の移動平均線ほど短期の値動きに対して、すばやく反応していることが確認できる。一方、青色の200日移動平均線は比較的反応が遅いことがわかる。
チャート作成:ジェームズ・スタンリー
移動平均線のクロス
上記のロジックを考慮すると、トレーダーはモメンタムを評価するために複数の移動平均線を組み込むことが有効である。例えば、50日移動平均線を利用している場合、その指標は200日移動平均線など長期間の移動平均線よりも、新しい値動きに対してすばやく反応するはずだ。さらに、50日移動平均線が200日移動平均線と交差すること自体をトレンドツールとしてとらえられるため、交差した時点でトレンドが継続する可能性を考慮することが可能だ。
移動平均線が交差することをトレンドの判断に使うことは、非常に認知度が高く、テレビやメディアで言及されているのを見たことがある方も多いだろう。50日移動平均線(短期移動平均線)が200日移動平均線(長期移動平均線)を上回り交差することを「ゴールデンクロス」と呼び、反対に50日移動平均線が200日移動平均線を下回り交差することを「デッドクロス」と呼ぶ。
これらの指標はトレンドフィルターとしても利用することが可能で、「ゴールデンクロス」は強気の指標として機能し、「デッドクロス」は弱気の指標として機能する。トレーダーはこれらの指標を利用し、エントリーとエグジットの判断を決定できる。
テクニカル分析入門
移動平均線
推薦者: James Stanley
以下の英ポンド/米ドルのチャートでは、「デッドクロス」の周りを赤い丸、「ゴールデンクロス」の周りを青い丸で囲んでいる。相場のトレンドが継続する場合、移動平均線のクロスのシグナルがうまく機能する可能性があることを確認できるだろう。だが、以下のチャート左側のように、相場がやや不安定な場合、シグナルはうまく機能しない可能性がある。
ゴールデンクロスとデッドクロスが確認された英ポンド/米ドル 日足チャート
チャート作成:ジェームズ・スタンリー
FXのトレンドの見極め方3. プライスアクションを使う
プライスアクションは移動平均線よりも少し主観的だが、トレンドを評価するためによく利用される分析方法である。上昇トレンドの場合は、より高い高値とより高い安値が連続して現れる。一方、下落トレンドは反対に、より低い安値とより低い高値が連続することが多い。
この点については、プライスアクションの章に掲載されているプライスアクション・トレンドの記事で詳しく解説している。
英ポンド/米ドル 日足チャート
チャート作成:ジェームズ・スタンリー