経済成長とは何か、FXで重要な理由とは
トップニュースの見出しで、GDP(国内総生産)が発表されている機会が多いが、これには十分な理由がある。GDPの発表は、そのシグナル効果と金融マーケットを動かす力があるため、トレーダーやマーケット参加者から多くの注目を集めているからだ。
この記事では、「成長」という概念を経済的な観点から考察し、トレーダーがこの概念を理解することが有益である理由を解説する。
GDP成長率とは何か、どのように報告されるのか
報道機関や金融専門誌が「成長」について言及する場合、一般的にはGDPを意味する。
GDPは、ある国が1年間に生産した財やサービスの価値を測定し、その国の経済の健全性を示す指標である。本質的には、その国の経済状況が時間の経過により改善、または悪化したことを客観的に表す指標となるものだ。
GDPはどのように報告されるのか
GDPは四半期ごとに4回報告があり、Q1、Q2、Q3、Q4と表記されるが、毎月のGDPも報告されている。これはGDPが遅行性の経済指標であり、季節性を考慮してデータを収集、分析、調整されるまでには時差があるからだ。遅行性の経済指標は、遅行性のテクニカル指標と混同してはならない。
GDPの数値は、主に前期比(QoQ)、あるいは前年同期比(YoY)で報告される。以下の図は、実質GDP*(QoQ)の変化率を示している。
*実質GDPは、経済における財やサービスの価値に物価上昇の影響が及ばないため、より正確な生産高の指標となる
以下の3つは、各四半期で報告される数値である。
- 速報値/第一次速報値
- 改定値/第二次速報値
- 確報値
改定値/第二次速報値と確報値は、最初の数値にわずかな修正を加えるものとなるため、速報値/第一次速報値は、トレードに最も大きな影響を与える傾向がある。GDPを構成する各要素は、発表前に確認・集計できることが多いため、NFP(非農業部門雇用者数)など他のデータ発表に比べてマーケットに影響を与える可能性は低い。
ただし、主要国の場合、GDPの速報値が確報値と0.3%、あるいは0.2%異なると、その規模は数十億ドルになることは念頭に置いてほしい。そうなると、経済状況に関するさまざまな意見が集まり、発表後のボラティリティが上昇する可能性がある。
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GDP成長率とそのシグナル
経済状況は、政府や中央銀行が非常に注目している。経済成長(GDP)が停滞しているとき、あるいはテクニカル・リセッション(2四半期連続のマイナス成長)にある場合、中央銀行の政策はより「緩和的」になり、流動性を供給し、金利を低下させる。一方、政府支出の増加はそれに追随することが多い。好況時には、中央銀行は加熱する経済を抑えようとし、金融政策は自然に「引き締め」になり、金利を引き上げ、政府支出は削減されることが多い。
長期的なマクロトレーダーは、トレードを計画する際に、経済が好況、不況、または後退期や回復期であるのかを分析できる。「タカ派姿勢」の中央銀行に連動する通貨は、利上げサイクルの開始時に上昇する傾向がある。一方で、「ハト派姿勢」の中央銀行に連動する通貨は、利上げサイクルの開始時に下落する傾向がある。
株式に関しては、金利の低下により、個人や企業が低金利で融資を受けやすくなり、その資金を株式マーケットに投資できるようになる。また、金利の低下は、将来の企業キャッシュフローに適用される割引率が低下することで、一般的に株式の評価額が上昇する。
株式マーケットの詳細については、Daily FXの学習コンテンツ「株式市場を理解する」をご覧ください。
さらにトレーダーは、政策金利が発表された後に開かれる記者会見で、中央銀行総裁の口調や言葉から、将来の金融政策の方向性を知る手がかりを得ることが多い。 decision has been released.
主要中央銀行の重要な日程は、中央銀行カレンダーよりご確認ください。
GDP:成長の構成要素
経済的観点から、成長の主要な構成要素は以下のカテゴリーに大まかに分類できる。
- 消費
- 投資
- 政府支出
- 純輸出
生産高(GDP)= 消費+ 投資+ 政府支出+ 純輸出
消費とは、食料品の購入や、インターネットサービス・プロバイダーへの支払いなど、日常的にお金を財とサービスを交換することを指す。投資とは、民間の現地投資や資本支出を指す。例えば、企業が生産性を高め、雇用水準を引き上げるために事業に再投資することである。
政府は、インフラや設備、政府職員の給与に資金を支出しており、一般支出や企業投資が減少している場合には、この支出が重要な役割を果たす。純輸出とは、輸出総額から輸入総額を差し引いたものであり、国際貿易の結果である。
成長を示す先行経済指標
GDPの成長率だけが、経済の状態を示すわけではない。GDPは本質的に遅行性である一方、トレーダーはGDPデータが発表される前に、さまざまな経済セクターの状態を洞察できる多くの先行経済指標を考慮することが可能だ。
以下に挙げるデータも、GDPデータが発表されるまでに、根底となる経済環境を明らかにするものである。
- 新規住宅建築許可数 – 政府が発行した新規住宅建築許可数の変化を測定する。住宅建築許可数は、住宅市場の需要を示す重要な指標であり、住宅市場・建築は経済状態の基調と密接に連動する傾向がある。
- 消費者信用 – この数値は、個人消費と信頼性に強く関係している。債務水準の上昇は、銀行の信用供与枠の発行をうながすため、経済の強さを示しており、一方で、消費者側に関しては、毎月返済できるだけの財務的な安定性を感じていることを示す。
- 小売売上高 – 経済活動全体における大部分を占める個人消費の主要な指標と考えられている。
- 消費者信頼感指数 – 経済活動に対する消費者における信頼度の水準を測定する。経済活動全体の中で主要部分を占める消費支出を予測できるため、先行指標となる。数値が高いほど、消費者の楽観性が高いことを示す。
- ISM製造業指数・サービス業PMI(購買担当者景気指数) – 購買担当者は、企業の経済観に関して最新かつ適切な見識を有しているため、現在の経済状況に対するセンチメントは非常に価値があるといえる。50以上の数値は楽観的であることを示し、50以下の場合は悲観的であるとみなされる。
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