金利とFXには、強い相関関係があります。外国為替は多くの要因に左右されますが、通貨の金利はそうした要因すべてに勝る基本的な要因なのです。
簡単に言うと、お金は実質金利の最も高い通貨に向かおうとします。実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた金利です。
FXトレーダーは、各国の 中央銀行の金利 を注視し、さらに金利変更の見通しが浮上した時の通貨の動きを予想することが重要です。
この記事では、外国為替と金利を対象に以下の点を深く掘り下げていきます。
- 金利とは何か。金利は通貨にどのような影響を与えるのか
- 外国為替の金利差
- トレーダーは中央銀行の金利をどのように予想するのか。外国為替市場にどのような影響を与えるのか
- 主要なFXの金利取引戦略



金利とは何か?なぜFXトレーダーにとって重要なのか?
トレーダーが「金利」というと、通常は中央銀行の金利を指します。金利はFXトレーダーにとって最も重要なものです。金利見通しが変化すると、一般的に通貨はそれに追随する動きをみせるからです。中央銀行は、金利に影響を与えることのできるいくつかの金融政策手段を持っています。最も一般的なものはこちらです。
- 公開市場操作: 金利に影響を与えることを目的として、市場で有価証券を売買すること
- 公定歩合: 商業銀行やその他の預金取扱機関が、地域の連邦準備銀行の融資ファシリティから受ける融資に対して課される金利
中央銀行の主な任務は、インフレ率の管理と自国の為替レートの安定化の2つです。そのために、金利を変更したり、国の通貨供給量を管理したりします。インフレ率が中央銀行の目標値を超えて上昇している場合、中央銀行は(政策手段を用いて)中央銀行の金利を引き上げ、景気拡大を制限してインフレ率を抑制します。
景気循環と金利
経済は、拡大しているか縮小しているかのどちらかです。経済が拡大しているときは、誰もが良い状態となり、経済が縮小しているとき(景気後退)は、悪い状態になります。中央銀行は、常に金利を管理することで、インフレを抑制しつつ、経済を緩やかに成長させることを目指しています。
経済が拡大している(GDP成長率がプラス)と、消費者はより多くの収入を得るようになります。収入が増えれば支出も増え、より多くのお金がより少ない商品を追い求めるようになり、インフレが発生します。インフレを放置すると大変なことになるため、中央銀行は金利を引き上げてインフレ率を目標値の2%(ほとんどの中央銀行の場合)に抑えようとします。金利が上昇すれば借入コストが増えるので、消費やインフレが抑制されます。
経済が縮小している(GDP成長率がマイナス)場合は、デフレ(物価の下落)が問題になります。中央銀行は金利を引き下げて、消費や投資の促進をはかります。企業は低い金利で資金を借りてプロジェクトに投資するようになり、雇用が増えて成長が高まり、そして最終的にはインフレ率が上昇します。
そのサイクルは次のようなものです。

金利が為替に与える影響とは?
金利の予想が変化することで、通貨に対する需要が変化する ― これが、金利が外国為替市場に影響を与える仕組です。下の表は、金利の見通しが変化した場合に起こりうるシナリオを示しています。
市場の見通し | 実際の結果 | その結果がもたらす外国為替への影響 |
---|---|---|
利上げ | 金利据え置き | 通貨の下落 |
利下げ | 金利据え置き | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利上げ | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利下げ | 通貨の下落 |
外国為替取引と金利との関係性
あなたが英国の投資家だとして、仮に国債のような低リスクの資産に多額の資金を投資する必要があるとします。米国の金利が上昇しているので、米ドルを買って、米国債への投資を始めます。
金利の高い国に投資するのは、(英国の投資家である)あなただけではありません。他の多くの投資家が金利の上昇の流れを追随することで、米ドルの需要が高まり、それによって通貨の価値を上昇します。これが、金利が通貨に与える影響の本質です。トレーダーは、通貨に大きな影響を与える金利の見通しの変化を予想しようとします。
ここでは、市場では中央銀行の金利据え置きが予想されていたのに、中央銀行が金利を引き下げた場合の例を紹介します。この例では、オーストラリア準備銀行は金利を2%に据え置くと予想されていましたが、代わりに1.75%に引き下げました。市場は利下げを予想していなかったため、AUD/USDは下落しました。

外国為替の金利差を理解する
金利差とは、単に2国間の金利の差のことです。
米国が予想外の利上げをおこなうとトレーダーが考えたならば、米ドルが上昇する可能性を予想します。トレーダーは、2つの通貨がそれぞれの金利の方向に乖離しているときに、低金利の通貨を売り、米ドルを買うことで成功率を高めることができます。
金利と金利差は、通貨ペアの上昇・下落に大きな影響を与えます。金利差の変化は、通貨ペアの上昇・下落に相関します。図で見るとわかりやすいでしょう。下のチャートは、AUD/USDの通貨ペア(ローソク足グラフ)と、AUDの2年国債と USDの3年国債(オレンジ色のグラフ)の差を比較しています。豪州国債利回りが米国債利回りに比べて低下すると、通貨も下落するという関係がみられます。

金利差は キャリートレードで広く使われています。 キャリートレードとは、低金利の国から資金を借りて、高金利の国に投資することをいいます。しかし、キャリートレードには、投資した通貨がトレードの資金調達源の通貨に比べて下落するなどのリスクを伴います。
中央銀行の金利予想がどう外国為替市場に影響するか
フェデラルファンド(FF)金利先物とは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されている商品で、毎日のフェデラルファンド(FF)金利の実効レートが、商品の期日にどの程度になるかという市場の予想が反映されています。市場には、常に金利が将来的にどの水準に達するかという見通しがあります。トレーダーの仕事は、その見通しの変化を予想することなのです。
トレーダーが中央銀行の金利を予想するには、中央銀行が現在何に注目しているのかを追う必要があります。中央銀行は、「いつ利上げに踏み切るのか」、「現在どのような経済指標に注目しているのか」について、一般に向けてできる限り透明性を高めようとします。
中央銀行は、いくつかの経済指標に基づいて、金利の引き上げや引き下げを判断します。これらのデータは、発表されると経済指標カレンダーでいつでも見ることができます。主要なデータとしては、インフレ率、失業率、為替レートなどが挙げられます。トレーダーは、中央銀行の政策決定者の見方を理解し、どう行動するかを一般に公表される前に予想しようとしなければなりません。このようにして、トレーダーは市場見通しの変化の恩恵を受けることができるのです。この取引方法は、テクニカル分析を活用した取引とは異なり、ファンダメンタルズに基づいています。外国為替の分析方法の違いを理解するには テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の記事をご覧ください。



外国為替の金利を利用したFXの戦略
FXトレーダーは、金利関連のニュースが発表された瞬間に通貨を売買して、それをもとに取引をすることが可能です。より専門的な方法については、「ニュースでトレード」ガイドをご覧ください。
上級者のFXトレーダーは、市場の見通しを変化させるような中央銀行の語調の変化を予想しようとするかもしれません。トレーダーは、インフレ率のような主要な経済要因を確認し、中央銀行の発言前に取引をおこないます。当社の 中央銀行ウィークリーのウェビナー(英語) では、今後の中央銀行の決定に関する専門家のコメントをご覧いただけます。
また、金利に関連する結果を受けて、通貨ペアの反落を待つという方法もあります。中央銀行が予想外の利上げをおこなった場合、その通貨は上昇するはずですが、トレーダーは通貨が下落するのを待ってから、その通貨が続伸すると期待して買いポジションを取ります。
主なポイント
- 金利に関する決定自体は、将来の金利の動きに対する予想ほど重要でない傾向があります
- 金利差が拡大している通貨を取引することで、トレードの成功率が高まる可能性があります
- 市場の見通しの変化を予想するためには、経済指標カレンダーを活用して、経済指標を常に把握しておくことが重要です
外国為替市場における取引方法の詳細については、外国為替のローソク足 の記事をご覧ください。
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