インフレとは
インフレとは、ある期間の経済における財やサービスの価格が上昇することであり、通常はパーセントで表す。例えば、インフレ率が2%の場合、価格は前の期間より(平均)2%上昇していることを意味している。したがって、水のボトルの価格が、昨年1本1ドルの場合、今年の価格は約1.02ドルになるだろう。インフレになると、個人の購買力が低下するため、経済に大きな損失をもたらす可能性がある。
デフレとはインフレの反対
デフレとはインフレの反対であり、物価が下落することを意味している。財やサービスの需要が低いことを示唆し、低金利をもたらす可能性が高い。先進国においてデフレは、通常あまり発生しないといえる。
スタグフレーション、ハイパーインフレーションとは
スタグフレーションとは、経済が停滞している(低成長)のにかかわらず、インフレが依然として進行している状態のことだ。原油価格のような外部要因が経済に影響を与えている場合に発生する。
ハイパーインフレーションとは、ある経済においてインフレ率が極端に高くなっている状態のことだ。通貨供給量の増加によって引き起こされる可能性があり、その結果、消費支出が上昇し、財やサービスに対する需要が増加する。
デフレとハイパーインフレーションはいずれも経済にとって悪影響を及ぼし、失業率の上昇と成長率の低下をもたらす可能性がある。そのため、インフレを抑制する中央銀行の役割は極めて重要だ。経済安定性の欠如は、破滅的な不利益を引き起こす可能性があるからだ。
FXで重要なインフレの測定方法3選
CPI(消費者物価指数)
CPI は一般的なインフレの測定方法であり、「生計費指数」と呼ばれる財とサービスの主要要素によって計算される。一般的な生計費指数は、CPIとRPI(小売物価指数)である。これらの指標は、消費者が日常的に触れているインフレ率に関連している。各中央銀行は、インフレ率の計算に含めるべき適切な項目を選択する上で、独自の問題を抱えている。
コアCPI・ヘッドラインCPI
インフレを表す際に一般的には、コアCPIと総合CPIを用いる。コアCPIは消費者物価指数から食品とエネルギー価格を除いたものであり、総合CPIは食品とエネルギー価格の両方を含んだものであるため、これらの用語の違いはわかりやすいだろう。
PPI(生産者物価指数)
PPIは、生産の初期段階におけるインフレに焦点を当てており、製造業や産業界に必要な情報を提供している。以下の図は、異なるインフレ率指標(CPI・PPI・GDPデフレーター)における過去の比較を示している。PPIの変動が最も大きいことがわかり、その理由の一部は、世界金融危機のような困難な時期において、生産者が消費者に生産コストを転嫁できないことが一因と考えられている。
GDPデフレーター
CPIやRPIが外国製品を含むのに対し、GDPデフレーターは国内生産品のみを対象としている。さらに重要な違いとして、GDPデフレーターはすべての財・サービスを対象としているのに対し、CPIやRPIでは消費者が購入した財・サービスのみを対象としている。このように、GDPデフレーターは他の方法と比べて、要素の項目が固定されていないことが優位点だといえる。
GDPデフレーター = (名目GDP/実質GDP)x 100
各指標は異なる特徴を有しており、注目する業界も変化するため、インフレを計算する「最善」の方法はないといえる。むしろ各指標は、異なる要件や用途に適した独自の側面があるといえるだろう。
PPI・CPI・GDPデフレーターの比較
出所:世界銀行
インフレの原因とは
インフレはさまざまな要因が合わさり1つになる、または複合的に経由して発生する。以下は、世界中の国に悪影響を与え得るインフレの原因を挙げている。
為替レート
自国通貨の下落は、輸入品を購入するためにより多くの自国通貨が必要になることを意味する。この増加したコストは最終消費者に転嫁されて、インフレの一因となり得る。
一次産品価格
多くの製造業では、製品を生産するために鉄鉱石や石油などの原材料が必要だ。原材料の価格が上昇した場合、そのコストは消費者に転嫁され、コスト上昇がインフレの一形態となり得る。
金利
金利が下がれば理論的には、消費者の支出が増えて、最終的には商品の需要とコストが増加する。そして、すべての要因が当てはまれば、インフレをもたらすだろう。
政府債務
政府債務の増加は、政府の債務不履行の可能性が高まっていることを示唆し、それにより潜在的な投資家に高いリスクを補償するために、国債の利回り上昇につながる可能性がある。その結果、より多くの税収が政府債務の高い利払いに割り当てられ、国民の生活水準を低下させるという影響が出る。一方で、企業が政府支出の減少を補うために財やサービスの価格を上昇させ、インフレを引き起こす可能性がある。
上記に挙げたインフレの原因は、以下2つのカテゴリーに分けられる。
- 需要主導型インフレ:需要主導型インフレは、家計、政府、外国人バイヤー、企業を含む総需要が増加した結果で発生する。
- コストプッシュ型インフレ:コストプッシュ型インフレでは、供給がインフレ圧力の原動力となる。生産コストの上昇により供給が減少すると、消費者の最終価格が上昇する。
インフレの結果
貨幣価値
消費者の観点から見たインフレによる最大の悪影響は、財やサービスのコストが上昇することだ。インフレ率の上昇前に同じ金額で購入できる財やサービスの数が減少するため、貨幣価値が低下することを意味する。
貧富の格差
個人間におけるインフレ圧力が不公平に配分されると、富の変化をもたらす可能性がある。例えば、インフレ率の高い時期にローンを組んだ個人は、債務返済の実質的な価値が時間とともに低下するため恩恵を受けられるが、他の個人は恩恵を受けられない可能性がある。
インフレ率のボラティリティ
インフレ率の変動や不安定なデータは事業運営を複雑にするため、企業は価格設定が困難となり、企業と消費者は高いインフレ率に適応するため、経済に悪影響を及ぼす可能性がある。さらにインフレ率の変動は、ヘッジコストに対するリスクプレミアムの上昇を招くため、長期的なビジネスの取引はコストが上昇する可能性があり、外国人投資家の信頼を低下させる恐れがある。
中央銀行によるインフレ目標の設定
インフレ目標の設定は理論的には非常に単純で、中央銀行がパーセンテージで具体的なインフレ目標を設定し、金融政策を操作することで達成される。インフレ目標を設定することの目的は、中央銀行と国民が将来の予測をより明確にすることだ。インフレ目標の設定の背景には、物価のコントロールがあり、物価の安定はインフレをコントロールすることで達成される。
一般的に、1%〜2%のインフレ目標は、政府や中央銀行に一定の柔軟性を与えられるため、この低い水準がよく利用されている。そして、目標値から1%以上の乖離があると懸念材料となり、政府が介入してきた。
政府はどのようにしてインフレを操作するのか
政府がインフレをコントロールする方法は数多くあり、現在の経済状況に応じて、経済にプラスとマイナスの両面から影響を与える可能性がある。最も一般的な方法は、中央銀行が流動性を制限することでインフレを抑制する金融政策の引き締めである。以下3つの手段が用いられる。
1. 通貨供給量を減少させる
通貨供給量を減少させると、消費者全体の支出を減少させることにつながるため、インフレ抑制に寄与すると考えられる。実現する方法として、ソブリン債の支払利息を増加させて、より多くの投資家に債券購入をうながすことが挙げられる。
2. 準備金の制限
銀行が保有できるお金の量を制限することは、消費者に貸し出すお金の量に影響を与える可能性がある。つまり、銀行が法的な基準値として、より多くのお金を保有することを要求されれば、銀行が貸し出すお金の量は少なくなる。その結果、消費支出が減少し、インフレの抑制につながるはずだ。
3. 金利の引き上げ
金利が高くなると、借り入れを希望する個人が少なくなり、支出の減少につながる。さらに、資本市場を通じて得られる利益率が高いことから、事業に資本を投下する機会費用も増加する。
世界のインフレ率と関係性
先進国と発展途上国との比較
出所:世界銀行
上のグラフは、先進国のインフレ率が新興国及び発展途上国(EMDE)よりも低いという、一貫した論理的なパターンを示している。この背景には、以下の2つの理由がある。
- 新興国及び発展途上国は一般的に成長率が遅く、超過需要となる可能性がある。
- 多くの新興国及び発展途上国には価値が不安定な通貨が存在しており、中央銀行の金融政策の運営が先進国よりも困難になっている。
フィリップス曲線 失業率とインフレ率の関係性
失業率とインフレ率の歴史的な関係性は、おおむね反対であり、高い失業率は低いインフレ率と相関している。さらに、逆相関も存在しており、基本的な経済学で説明できる。例えば、需要主導型のインフレの結果である総需要が増加することは、財やサービスの価格を上昇させて、失業率を低下させる。失業率の低下は経済において、財やサービスに支出できる所得が増加することを意味する。この2つの要素は互いに反復的な影響を及ぼし、以下の図のように基本的なフィリップス曲線で表される。
作成:ウォーレン・ベンケタス
インフレの要点 FXで強力な効果を発揮できる
この記事では、インフレについて経済に対する局所的な影響や、世界的に相関している広範な影響を解説した。インフレはマクロ経済の観点から重要な経済ツールであるが、インフレ率のデータは多くの金融マーケットで価格変動を引き起こす。そのため、トレード戦略の中で理解し実行すれば、強力な効果を発揮できるだろう。
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