この記事では、CPIとFXについて、特にトレーダーが情報にもとづいた意思決定をおこなうために知っておくべき消費者物価指数の詳細を見ていきましょう。CPIとはどのような概念なのか、CPIの発表日、CPIの解釈方法、CPIデータを参考にFXをする際の注意点などを説明していきます。
CPIとは何か、そしてなぜそれがFXトレーダーにとって重要なのか
CPIという略称でよく知られている消費者物価指数は、主要国が定期的に発表する重要な経済指標であり、現在の成長率やインフレ率をタイムリーに把握することができるものです。
CPIで追跡されるインフレ率は、経済における購買力や財・サービスの価格上昇を具体的に示すものであり、国の金融政策に影響を及ぼしています。
CPIは、食品、エネルギー、そして医療費などのサービスを含む消費財からなる所定のバスケットにおける各品目の価格変動を平均して算出されます。
前述のように金融政策に影響を与え、ひいては通貨の強さに直接影響する金利にもインパクトが大きいため、FXトレーダーにとって有用な指標となっています。FXトレーダーとして、CPIの解釈方法を知っておくことの有用性について、この記事で解説します。



CPIの発表日
CPIの発表日は通常毎月ですが、ニュージーランドやオーストラリアなど一部の国では四半期ごととなります。国によっては、ドイツの指数のように年間の結果を提供している国もあります。米労働統計局は、1913年から毎月CPIを発表しています。
以下の表は、主要国の一部とその国のCPI発表に関する情報を示しています。
国/管轄区域 | 統計作成機関 | 発表の頻度 |
---|---|---|
オーストラリア | オーストラリア統計局 | 四半期 |
カナダ | カナダ統計局 | 毎月 |
中国 | 中国国家統計局 | 毎月 |
ユーロ圏 | 欧州中央銀行 | 月2回 |
ドイツ | ドイツ連邦統計局 | 毎月、毎年 |
イタリア | イタリア国家統計局(Istat) | 毎月 |
インド | 統計及び事業実施省 | 毎月 |
日本 | 総務省統計局 | 毎月 |
英国 | 金融政策委員会 | 毎月 |
米国 | 米労働統計局 | 毎月 |
FXトレーダーがCPIデータに注目すべき理由
CPIはインフレ率に関して説得力をもつ指標であり、インフレ率は中央銀行の金融政策に大きな影響を与える可能性があることから、CPIデータを理解することは、FXトレーダーにとって重要なことです。
それでは、CPIは経済にどのような影響を与えるのでしょうか。多くの場合、インフレ率が上昇すると、政策決定者が設定する 指標金利の引き上げにつながり、その結果経済を抑制し、インフレ傾向を抑えることができます。つまり、金利が高ければ高いほど、その国の通貨は上昇しやすく、逆に、金利の低い国は通貨安になることが多いのです。
CPIの発表と改定値は、ある通貨の他の通貨に対する価値の変動をもたらし、熟練したトレーダーが恩恵を受けられる可能性のある、有利なボラティリティが生じます。
また、CPIデータは、各国政府の経済政策の有効性を示す指標としても認識されており、トレーダーが為替レート変動の可能性を判断する際に検討する要素です。
CPIは、FXトレーダーがインフレ圧力をより明確に把握するために、生産者物価指数(PPI) のような他の指標と組み合わせて使用することもできます。
CPIデータを活用してFXをおこなう際の注意点
CPIデータをFXでの意思決定に活用する場合、トレーダーはインフレに対する市場予想と、その予想が一致した場合と外れた場合に通貨に何が起こりうるかを考慮する必要があります。
他の重要発表と同様に、直前に新規ポジションを持つことは避けた方が良いかもしれません。FXのスプレッドは、指標発表の直前と直後に大きく拡大する可能性があります。そのため、トレーダーは発表後数分待ってから取引を検討する必要があります。
これは、米国の毎月のインフレ率を示すチャートです。直近の予想は、昨年のデータと比較して1.6%のインフレ率に設定されています。CPIの発表が予想を上回ったり下回ったりした場合、そのニュースイベントは市場に影響を与える可能性があります。

2018/19年の米国のインフレ水準を示すチャート
出典:TradingEconomics.com.米労働統計局
CPIデータの影響を把握する方法として、下記の2018/19年のチャート例のように米ドル指数 に注目する方法があげられます。もしCPIが予想外の結果となった場合には、それが指数の最高値更新、あるいはレジスタンスの反発のきっかけになると考えるのが妥当でしょう。
指数は、EUR/USD、USD/JPY、GBP/USD で構成されているため、米ドル に注目することで、イベントの結果を完全に解釈することができます。

米ドル指数の動向を示すチャート
出典:TradingView.com
上の例でもわかるように、2018年上半期にインフレ率が上昇すると、それに伴って米ドル指数も上昇しました。しかし、その後、米国のインフレ率が低下し、目標の2%に届かなかったため、米国の利上げは議題から外れてしまいました。その結果、ドルは他の通貨のバスケットに対して苦戦し、ドル安となりました。
ファンダメンタルズ関連のニュースの発表は、期待通りに価格に反映するとは限りません。
CPIデータが発表され分析された後、トレーダーは、市場価格がテクニカル的に重要な領域を突破しているか反発しているかを確認する必要があります。これにより、短期的な動きの強さやテクニカル分析でサポート水準やレジスタンス水準の強さを理解し、より多くの情報にもとづいた取引をおこなうことができます。
CPI、インフレ、FXに関する記事
経済指標カレンダーをブックマークして、各国で発表される最新のCPIデータや、DailyFXのニュースや分析の最新情報をチェックしましょう。ニュース発表、市場の反応、マクロトレンドなどを把握するには、中央銀行ウィークリーウェビナーに登録してご活用ください。


