サマリー
- 昨日の外為市場は中国のコロナ懸念でリスク回避の米ドル買い優勢の展開に
- 利上げペースの減速観測を意識した米ドル売りはひとまず後退の局面にある
- ドル円は新たなレジスタンスポイントを探る局面にある
- ユーロドルは再び下落幅の拡大を警戒する局面へシフトしている
リスク回避の米ドル買い
21日の外為市場は米ドル買い優勢の展開となった。中国のコロナ感染拡大と行動制限が嫌気され、この日の主要な欧米株価指数は上値の重い展開となった。
一方、国際商品市況では中国経済の先行き不透明感に加えて、主要産油国で構成される「OPECプラス」の増産協議の報道を受け、原油先物価格が急落する局面が見られた。原油先物価格の下落は米エネルギー株の売り要因となった。
リスク回避の相場を受け、昨日の外為市場では米ドル買い優勢の展開となった。
米ドル相場のパフォーマンス:21日
データ:Bloomberg L.P.基準日:2022年11月18日
ドル円(USDJPY)の焦点とチャートポイント
昨日のドル円(USDJPY)は、レジスタンスポイントとして意識されていた141.00レベル、そして10日線(MA)の突破にも成功し142円台へ上昇した。
上で述べた「リスク回避の相場→米ドル買い」がドル円のサポート要因となった。
一方、この日の米債市場では、短中期ゾーンを中心に米金利の反発基調が続いた。
インフレがピークアウトする可能性と直近のFRB要人達の発言を受け、12月連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅は50ベーシスポイント(bp)が有力視されている。
しかし現在の米債市場では、利上げペースの減速が意識される状況にある中でも利回りの低下圧力が後退している。この状況は、利上げペースの減速観測により米金利が再び急低下する可能性が現在は低下していることを示唆している。
ゆえに、昨日のようなリスク回避相場では米ドルを買い戻す動きが散見されると予想する。
米金利のチャート
チャート:Bloomberg L.P. 10分足(11月15日以降)
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -6% | 0% | -2% |
週次 | -11% | 12% | 5% |
通貨オプション市場のリスクリバーサルを確認すると、ドルプットの勢いが後退し続けている。1週間のそれはドルコールへ転じる可能性がある。
141.00と10日MAという重要なポイントを大陽線で突破した地合いの強さも考えるならば、現在のドル円は新たなレジスタンスポイントを探る局面にある。
目先は、今月11日の大陰線高値142.48レベルの突破に成功するか?この点を確認したい。
ドル円がこの水準(142.48レベル)を難なく突破する場合は、143.00そしてフィボナッチ・リトレースメント(137.66-151.95レベル)38.2%の水準143.12レベルのトライおよびブレイクとなるか?この点が次の焦点となろう。
38.2%戻しのすぐ上の水準143.28レベルには21日線(EMA)が推移している。テクニカルの面で143円前半は重要なレジスタンスゾーンと想定しておきたい。
米金利の反発がさらに進行し(このケースでは株安も進行することが予想される)、ドル円が143円前半の攻防を制する場合は、144円台への上昇および半値戻しの水準144.80レベルのトライとなるか?これらの点に注目したい。
一方、ドル円が反落する局面では、141.00レベルがレジスタンスからサポートのポイントへ転換するかどうか?この点が焦点となろう。
今日現在、10日MAが141.00レベル(140.97)で推移している。10日MAの “サポート転換” という観点からも、今日は141.00レベルの維持に注目したい。
ドル円のチャート
チャート:Trading View 日足(今年8月以降)
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 1% | -5% | -2% |
週次 | 9% | 5% | 7% |
ユーロドル(EURUSD)の焦点とチャートポイント
12月15日の欧州中央銀行(ECB)理事会が近づくにつれて、利上げ幅の縮小観測が高まっている。先週は、この件に関する観測報道が見られた(Bloomberg)。
そして短期金融市場では50bpの利上げを織り込む向きが見られる。
ECBによる利上げペースの減速観測が浮上しているタイミングで、米金利が下げ止まっている。そしてユーロドル(EURUSD)は200日線(MA)の突破に失敗し、サポートポイントの1.02レベルをトライする局面へと転じている。
リスク回避相場や米金利の反発でユーロドルが1.02を完全に下方ブレイクする場合、次の焦点は1.01レベルのトライおよびブレイクとなろう。この水準は、11月以降に発生した反転相場の高安50.0%(半値戻し)の水準にあたる。また、21日線(MA)も1.01レベルまで上昇している。
1.02での “サポート転換の失敗”が確認される場合、外為市場では米ドルの買い戻し圧力がさらに強まっている状況が予想される(その要因となり得るのがリスク回避相場の進行と米金利の反発維持)。
また、今年はユーロドルが反落基調へ転じる場合、短期間で下落幅が拡大する傾向が見られる。ゆえにユーロドルが1.02レベルをあっさりと下方ブレイクする場合は、1.01レベルまで一気に下値トライとなる展開を警戒しておきたい。
一方、ユーロドルが反発する局面では、1.03台への再上昇が目先の焦点となろう。
昨日NYタイムで相場の戻りを止めた1.0260台の突破は、1.03トライのシグナルの一つと想定しておきたい。
ユーロドルのチャート
チャート:Trading View 日足(今年8月中旬以降)