※2023年8月29日17時45分更新
豪ドル見通し:対米ドル・NZドル・円



豪ドルは、30日に重要な豪インフレ指標の発表を控える中、直近の下落分を取り戻そうと、上昇を促すきっかけを待っているように見える。
オーストラリアの7月消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比5.2%と、前月(5.4%)から鈍化した。ディスインフレが進行する傾向は、インフレは恐らく最悪期を脱したと見るオーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)の見解と一致している。RBAは過去2回の理事会で政策金利を4.1%に据え置いた。豪労働市場に減速の兆しが見え、中国の経済成長見通しが悪化する中、来週開催される理事会でも利上げは見送られる可能性が高いと市場は見ている。
豪ドル/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
中国政府が先週後半から先週末にかけて実施した追加の景気刺激策は、これまでのところ豪ドルの押し上げ材料にはなっていない。中国のマクロ経済指標は依然として予想を下回る傾向が続いており、不動産セクターが苦境にあえぐなか、中国経済成長見通しは下振れるリスクがある。中国のエコノミックサプライズ指数は2020年半ば(新型コロナウイルス感染症拡大期)の水準をわずかに上回っている。そして中国はオーストラリアにとって最大の輸出先である。
豪ドル/米ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
主要各国の経済を比較すると、力強く回復している米国経済に対し、米国以外、特に中国と欧州は成長が鈍化している。このような経済見通しの相違が米ドルを支えている。先週のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言は、ほぼバランスの取れたものだったが、ややタカ派的なトーンも示され、米ドルをいくらか下支えした。CMEグループのフェドウォッチによると、FRBが11月に利上げを実施する可能性は、1週間前の38%から、現在は約50%まで上がっている。
豪ドル/米ドル 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
豪ドル/米ドル:下降トレンドは一服?
豪ドル/米ドルの短期チャートには、下降トレンドが一服する兆候が見られる。これは、価格が6月以降の下降ピッチフォークチャネルの中央線および2023年末を始点とする下降トレンドラインという重要な収束サポートを上回る水準を保持し続けていることに起因している。とはいえ、ここ1カ月続いた下落を一服させるには、先週金曜の高値0.6440を上方ブレイクする必要がある。さらに、先週の高値0.6590を上抜ければ、もみ合い局面入りをより決定的とするシグナルになるだろう。詳細については、8月28日付記事「米ドル見通し:レジスタンス試す展開、パウエル議長講演を受けて」をご覧ください。
豪ドル/円 4時間足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
豪ドル/円:弱気見通しはまだ反転せず
豪ドル/円は、4時間足チャートで右肩下がりの200期間移動平均線にうまく誘導されている。200期間移動平均線については、7月31日付記事「円相場見通し:YCC修正後、対米ドル・豪ドル・ユーロのトレンドは変化した?」でも言及している。93.00付近に位置する水平トレンドラインというサポートを上回る水準の維持は、強気派にとって心強いサインだが、下落圧力を消失させるには、200期間移動平均線と8月中旬の高値を含む94.00-95.00エリアを突破する必要がある。
豪ドル/NZドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
豪ドル/NZドル:動き始める
豪ドル/ニュージーランドドルは数カ月間、方向感のない展開が続いていたが、最近上昇の勢いが強まっており、これは相場が動き出したシグナルに見える。上昇の勢いに弾みがついた背景には、4月から続く上昇チャネルの下端というかなり強いサポートを繰り返し上回ったことがある。7月の高値1.0925という最初の障壁を上方ブレイクすれば、6月の高値1.1050に向けて上昇する可能性が開かれる。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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