※2023年6月16日14時38分更新
ドル、円、ドル/円、日銀 - トーキングポイント
- 日銀は予想通り、大規模緩和政策を維持した
- 政策の現状維持に反応し、ドル/円は若干上昇した
- ドル/円の見通しと注目すべき手掛かりとは？
16日アジア時間に円はドルに対してわずかに下落した。日銀（BOJ）は、始まったばかりの景気回復を支え、インフレ目標を持続的に達成するために大規模緩和政策を維持し、特に注目されていたイールドカーブ・コントロール（YCC）政策の枠組みも据え置いた。これに反応し、円売り・ドル買いの動きが若干見られた。
日銀はきょうの会合で、大規模緩和政策を維持すると広く予想されていたため、YCC政策に何らかの微調整が加わるかどうかが焦点だった。植田和男日銀総裁は、2％のインフレ目標を安定的かつ持続的に達成するためには、まだいくつかの方法があるため、日銀は現在の政策を「辛抱強く」維持するとの見解を示している。
ドル/円 5分足チャート
資料：TradingView
植田総裁は、日銀は今年度半ばにかけてインフレ率が2％を下回り、その後は上昇に転じると予想していると述べている。植田氏は16日、日本の企業の価格設定行動に変化が見られ、インフレ率を予想以上に押し上げる可能性があると付け加えた。
日本の4月のコアインフレ率は3.4%に達し、日銀の目標水準である2%を大きく上回っているため、YCC政策が調整されるのは時間の問題であろう。日銀は4月の会合で、経済活動や物価の動きに機敏に対応しつつ、フォワードガイダンスに長期にわたって盛り込まれていた新型コロナの影響を注視の文言や政策金利に関する文言を削除した。このため、7月28日の会合では新たな文言があるかどうかが注目される。
日本のインフレ率と日銀のバランスシート
資料：ブルームバーグ、マイクロフト・エクセルで作成
金利の低い円は、いくつかの通貨に対して、以下の根拠を背景にさらに弱気な見通しとなっている。その根拠とは、米長期金利の上昇、米国ハードランディング懸念の後退、継続する世界の中央銀行のタカ派姿勢である。詳細については、6月15日付記事「FOMCを受けた円見通し： 軟調、対米ドル・豪ドル・英ポンドでの値動き」をご覧ください。
最近の円安は、オーストラリア準備銀行（RBA）、カナダ銀行（BOC）、イングランド銀行（BOE）、欧州中央銀行（ECB）など中央銀行が引き締めモードにある通貨に対してより顕著だが、利上げが見送られた通貨（米連邦準備制度理事会＝FRB）や利上げサイクルがピークに達していると中央銀行が指摘した通貨（ニュージーランドドル）に対してはそれほど進んではいない。より詳しい内容は、6月1日付記事「円相場見通し：最近の円安に納得、円一段安の始まり？」、6月5日付記事「円週間見通し：米利上げ観測後退の中、軟調。対米ドル・ユーロ・豪ドルでの値動きとは？」をご覧ください。
ドル/円 日足チャート
資料：TradingView
テクニカルチャートでは、ドル/円は、2023年初頭から続く上昇チャネルの上端、2022年の最高値142.25と重なり、1月からのピッチフォークチャネルの中心線（143.75付近）からそれほど離れていない水準に位置する堅い収束レジスタンス近辺で推移している。
15日の日足チャートでは、弱気なローソク足パターンである逆ハンマーが示現し、重要なレジスタンスを短期的に上方ブレイクするハードルを上げている。しかし、前回の記事で指摘したように、6月上旬の安値138.50を下方ブレイクしない限り、上昇の勢いが衰えることはないだろう。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。
