※2023年12月6日10時50分更新
サウジアラビアがOPECプラスの減産を支持するなか、米国は戦略石油備蓄(SPR)の補充に注力している。ただ、米国の原油生産量は2カ月連続で過去最高を記録し、需給引き締めの動きを打ち消す形となっており、原油価格の軌道修正にはつながっていない。
ブレント原油先物 ニュースと分析
- 米国は戦略石油備蓄(SPR)の購入を表明したが、原油価格の下落は食い止められない
- サウジアラビアは価格安定のため、追加的な供給削減および減産の撤回は緩やかなペースでの実施を支持すると表明
- このレポートは、チャートパターンと主要なサポート/レジスタンスを利用して分析しています。テクニカル分析について詳しく知りたい方は、当社の学習コンテンツをご覧ください
SPR購入でも、下げ止まらない原油価格
米エネルギー省は、インフレ抑制のため昨年は記録的な量の石油備蓄を放出したが、ここ最近は備蓄の補充に努めている。同省は、原油価格の下落を利用して備蓄を積み増そうと画策しているようで、来夏ではなく翌年2月までに400万バレルを備蓄に戻す予定という。下図は、米国が11月第2週に30万バレルを追加した後、SPR在庫がわずかに増加したことを示している。
資料:米エネルギー情報局、チャート作成:リチャード・スノー
さらに、サウジアラビアは、追加的な自主減産を歓迎し、減産の撤回は管理されたペースで行われるとの考えを明らかにした。
原油価格:注目すべきテクニカルレベル
3営業日続落した原油価格は現在、4日続落に向かっており、それほど注目されてはいないフィボナッチ・リトレースメント50%の水準77ドルを試している。多くの原油市場関係者は、供給削減の発表にもかかわらず、弱気な姿勢を崩していない。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成されるOPECプラスは来年の生産方針について合意に至っていないと見ているからだ。アフリカ諸国の中には、生産割当量の引き下げに反対する国もあり、当初の閣僚級会合は延期された経緯がある。決定がなされた後も、その決定に納得していない国があるようだ。
71.50ドルを探る動きを阻むものはほとんどない。71.50ドルは価格下落を食い止めた過去のサポート水準である。RSI(相対力指数)が売られ過ぎの状態に近づいているため、今後数日間、RSIを含めた原油価格の動きを注意深く観察する必要がある。世界的な景気減速も原油価格の支えにはならず、市場参加者は将来の石油需要の減少を織り込んでいる。さらに、米国の原油生産量は2カ月連続で過去最高を記録した。世界的に原油供給量を増やすこの動きは、OPECプラスの追加減産の流れに拮抗している。
ブレント原油先物 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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