※2023年12月18日11時36分更新
ニューヨーク地区連銀のジョン・ウィリアムズ総裁が12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合でのパウエル議長の発言に反論し、金相場は上昇の勢いが弱まっている。しかし、これはFRBがハト派的トーンから再びタカ派寄りに舵を切り直すというよりも、ダメージコントロールのためかもしれない。
金価格見通し
- ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、パウエル議長が示したハト派トーンを否定し、金価格は上昇の勢いが鈍っている
- ただ、ウィリアムズ総裁の反論は、現在の政策を完全に覆すというよりも、ダメージコントロールの意味合いが強いかもしれない
- このレポートでは、金/ドルをテクニカル面で精査し、今後数日間にサポートまたはレジスタンスとして機能する可能性のある極めて重要な水準について分析する
ニューヨーク地区連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は、先週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)会合でパウエル議長が示したハト派的な姿勢をけん制し、それを受けて先週金曜の金相場は上昇の勢いが弱まった。このような背景から、金/ドルは先週末に向けてほぼ横ばいとなり、2,035ドル付近の小幅なレンジで上下に振れる展開となった。
ウィリアムズ総裁は、利下げは時期尚早であり、現時点では議論の対象にはならないと指摘した。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げについて話し始めたと述べたFRB議長の見解(12月14日付レポート「金価格見通し:ドルと明暗分ける、FOMCで来年の利下げを示唆」参照)とは相反している。奇妙ではあるが、この矛盾は必ずしも金融政策が再びトーン変化することを意味していない。むしろ、ダメージコントロール、つまり金融情勢がこれ以上緩まないようにするための戦略なのかもしれない。
タカ派姿勢への完全な逆戻りがなければ(12月15日付レポート「ドル/円の下値模索続く:FOMC後は全面安のドル、ユーロ/ドル見通しとは」参照)、トレーダーは2024年1―3月期のある時点で始まると予想される金融緩和サイクルを前倒しで織り込むため、米国債利回りとドルは下落基調が続く可能性が高い。これは、貴金属相場がさらに上げ幅が拡大し、金価格は史上最高値を更新する可能性があることを意味する。
テクニカル分析に目を向けると、金/ドルは上向きな見通しを維持しているが、短期的には上値が重い展開となる可能性がある。これは、特に相場が上昇しすぎた場合、より広い上昇トレンドの中で、あや押し(一時的な小幅下落)に見舞われるかもしれないことを意味する。RSI(相対力指数)は、買われ過ぎの状況に達したときにヒントを与えてくれるだろう。
注目すべき主な価格水準としては、2,050ドルが最初のレジスタンスとなり、5月 の高値である2,075ドル付近がそれに続く。過去にこの上限を何度も突破しようと試みたものの、失敗に終わっているため、再トライでは歴史が繰り返される可能性がある。もし明確なブレイクアウトが実現すれば、2023年のスイングハイに向けて上昇するシナリオも十分に考えられる。
逆に、売り手が大挙して戻り、しっかりとした反転を引き起こした場合、まずは2,010ドル付近での攻防が予想される。これを守れない場合は、売り圧力が強まり、1,990ドル付近のトレンドライン(サポート)が意識されよう。この水準を下回ると、50日単純移動平均線の維持が焦点となる。
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変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -8% | 7% | -1% |
週次 | -14% | 20% | 0% |
金価格 テクニカルチャート
資料:TradingView
--- DailyFX.com マーケットストラテジスト ディエゴ・コルマン著
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