※2024年5月30日更新
MACDは、トレードのエントリー時にデフォルト設定のまま使用されることがよくあります。しかし、MACDの設定値はトレードのエグジット時に役立てるためにカスタマイズすることが有効です。
本記事では、MACDの一般的な設定値や、トレードのエグジットに合わせてMACDの設定値を変更する方法、MACDを効果的に利用するためのポイントを解説します。
MACDの設定値とは
まず、MACDの概要と設定値について解説します。
そもそもMACDとは
MACDとは「Moving Average Convergence Divergence(移動平均線収束拡散)」の略称で、移動平均線の差を利用して売買シグナルを判断するテクニカル指標を指します。トレンドの特定や売買のタイミングを判断するのに役立ちます。
以下は、チャートにMACDを反映させた例です。
![グラフ 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/2CNGSI/image1.jpg)
長期EMAを短期EMAから差し引いたものがMACD線(赤)となり、さらにMACDラインの単純移動平均線がシグナル線(青)です。EMAとは、指数平滑移動平均線のことです。
ヒストグラム(緑)は、MACDラインとシグナルラインの差を示しており、トレンドの強さを表します。ヒストグラムが0を上回れば上昇トレンド、下回れば下落トレンドと判断できます。
![グラフ 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/3dA7kF/image2.png)
MACDラインがシグナルラインを上抜く(ゴールデンクロス)か下抜く(デッドクロス)かで、買いや売りのタイミングを捉えられます。
![ダイアグラム, 多角形 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/0LMxUT/image3.jpg)
MACDの一般的な設定値
FXや株のトレードで使われる一般的なMACDのデフォルト設定値は、以下の通りです。
適用先 | 設定値 |
---|---|
短期EMA(速い線) | 12 |
長期EMA(遅い線) | 26 |
シグナル線 | 9 |
この設定値は、中期から長期のトレンドを捉えやすいことが特徴ですが、短期の値動きには鈍感になる傾向があります。相場の種類や時間足によっては、この一般的な設定値が最適とは限りません。中長期の相場展開を重視するトレーダーには適していますが、短期トレードを重視したい場合は他の設定値を検討する必要があります。
短期トレーダー向けの設定値
短期トレンドの特定や短期的な売買シグナルを捉えたい場合は、標準的な設定値(12、26、9)よりも短い期間を設定することが効果的です。例えば、以下のように設定します。
適用先 | 設定値 |
---|---|
短期EMA(速い線) | 9 |
長期EMA(遅い線) | 17 |
シグナル線 | 9 |
短期的な値動きによって、投資判断が鈍りやすくなるデメリットがありますが、その分、短期トレンドの転換をいち早く捉えられるメリットがあります。相場環境や時間足によっては、この短期トレンド向けの設定値を採用することで、より適切なエントリーポイントを見つけやすくなる場合があります。
ジョー・ディナポリ氏の設定値
有名トレーダーであるジョー・ディナポリ氏が推奨するMACDの設定値は、以下の通りです。
適用先 | 設定値 |
---|---|
短期EMA(速い線) | 8 |
長期EMA(遅い線) | 17 |
シグナル線 | 9 |
短期EMAが8と短めに設定されているため、短期の変動に敏感で、長期EMAも17と比較的短めなので、短期的な動きを捉えやすい特徴があります。
ジョー・ディナポリ氏の設定値は一般的なものよりも素早く値動きを捉えられるメリットがあります。ただし、過剰に反応するリスクもあるため、他の指標と組み合わせるなどの戦略が必要です。
【関連記事】初心者トレーダーやMACDの基礎をおさらいしたい方は、「MACDの使い方とは?取引サインや注意点、デメリットと対策を解説【動画付き】」を参照してください。
FXのエグジットに合わせて異なる設定値のMACDを2つ使用する方法
続いて、エグジットに合わせてMACDの設定値を変更する方法を解説します。
多くのトレーダーはエントリーに時間と努力を過度に費やしますが、エグジットについてはあまり注意を払いません。しかしトレードにおいて、マーケットから利益を得るか、マーケットで損するかを最終的に決めるのはエグジットです。
ここでは、エグジットに合わせてMACDの設定値を変更する方法を解説します。
一般的なMACDのエントリーとエグジットのポイントを決める基準
一般的なMACDのエントリートリガーを探す方法は、0ラインとのクロスまたは従来のシグナルであるMACD線とシグナル線のクロスをエグジットのトレードに合わせて調整します。
ただし、このアプローチはMACD線やシグナル線によって複数のクロスがあり、トレーダーが必要以上に頻繁にトレードを仕掛けたり手仕舞いしたりすることで失敗する可能性があります。
適切にエグジットすることはトレードにおいて最も難しい部分であるため、2本目のMACDを追加することも選択肢の1つです。
エグジットのために2本目の遅いMACDを設定する
2本のMACDを引くことは、潜在的なトレンドを素早く捉えるために有効です。2本目のMACDの設定値は19、39、9です。1本目のMACDより反応が遅くなる設定値と言えます。
![グラフ, ヒストグラム 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/00z2kd/image4.png)
1本目のMACDは12、26、9の設定値を使用し、0ラインとのクロスでトレードのエントリーにのみ使用します。一方で、2本目のMACDは19、39、9の設定値を使用し、MACDがシグナルとクロスしたときのエグジットにのみ使用します。
MACDの設定値とエントリー・エグジット条件を以下の表にまとめました。参考にしてください。
エントリー条件 | |
---|---|
MACDの設定値 | 速いMACD(12,26,9) |
シグナル | 0ラインクロスオーバー |
エグジット条件 | |
MACDの設定値 | 遅いMACD(19,39,9) |
シグナル | MACDのシグナルラインとのクロス |
以下のカナダドル/スイスフランのチャートでは、2本のMACDを組み合わせて、どのようにエントリーとエグジットが示されるかを示しています。
![グラフ が含まれている画像 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/12XTr0/image5.png)
MACDの設定値を変えることで、エントリーとエグジットのポイントをより明確にできます。
MACDを効果的に利用するためのポイント
MACDを効果的に利用するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
市場の種類や時間足に合わせた設定値を選択する
MACDの設定値は、相場の種類によって適切なものを選ぶ必要があります。例えば、以下のような組み合わせが挙げられます。
市場の種類 | 設定値 |
---|---|
FX | 短期用(9、17、7) |
株式 | 標準(12、26、9) |
商品 | 長期用(19、39,9) |
FX市場は短期的な値動きが多いため、短期用の設定値を選ぶことで早めのトレンド転換をつかめます。一方、株式市場は中期的なトレンドが見られるため、標準の設定値が適しています。また、商品市場ではトレンド転換が緩やかなことから、長期用の設定値を用いるのがよいでしょう。
このように、市場の特性に合わせてMACDの設定値を変更することで、より適切なタイミングで売買シグナルを捉えられます。自分のトレード環境に合った設定値を見つけることが重要です。
単独ではなく他の指標と併用することで予測精度が向上する
MACDは非常に優れた指標ですが、単独で使うと見逃してしまう重要なサインもあります。そこで他の指標と併用することで、より確実な売買サインを見逃さずにトレードできるようになります。
例えば、以下の組み合わせがおすすめです。
指標 | メリット |
---|---|
ボリンジャーバンド | 値動きの上下の範囲を把握でき、トレンド転換の判断をMACDのサインで裏付けできる |
RSI | MACDがデッドクロスして、RSIが20%以下を示した際に利益確定ポイントと判断できる |
移動平均線 | 移動平均線でトレンドの方向性を確認し、MACDでエントリーポイントを判断する |
指標を組み合わせることで、MACDの弱点を補い、より精度の高い売買判断が可能になります。ただし、指標が多過ぎると混乱しやすいため、目的に応じて使い分けることがベストな方法です。
ダイバージェンスを確認する
ダイバージェンスとは、MACDの値動きと実際の価格の動きが乖離していく現象のことです。例えば、価格が新しい高値を付けているのに、MACDは低くなっている(弱気のダイバージェンス)現象です。反対に、価格が新しい安値を付けているのに、MACDは高くなっている(強気のダイバージェンス)現象も理解しておきましょう。
![ホワイトボード 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/4liXpn/image6.jpg)
上記のダイバージェンスが発生すると、トレンドが転換する可能性があります。
【関連記事】MACDのダイバージェンスについて、さらに詳しくは「MACDのダイバージェンスとは?見つけ方や使い方、手法をプロがわかりやすく解説」をご覧ください。
ダマシに注意する
MACDはさまざまな売買シグナルを示してくれますが、ダマシが起きることもあります。ダマシとは、一旦売買シグナルが出た後に価格が逆行し、結果として損失を生み出してしまう現象のことです。
ダマシ現象の主な原因は以下の通りです。
- 一時的な値動きに過剰に反応してしまう
- MACDの設定値が不適切である
- その他の裏付けとなる指標が少ない
特に値動きが荒い相場ではダマシが起きやすいため、売買シグナルに惑わされないように注意が必要です。ダマシへの対策としては、以下の点に注意する必要があります。
- 複数の指標を組み合わせて分析する
- 適切なMACDの設定値を選択する
- 値動きが落ち着いた時間足で確認する
FXにおけるMACDの設定値に関するよくある質問
ここでは、MACDの設定値に関するよくある質問とその答えを紹介します。
MACDの標準的な設定値は何ですか?
標準的な設定値は、短期EMA(12)、長期EMA(26)、シグナル線(9)です。この設定では中期的な動きを捉えやすくなっています。
MACDの設定値を変更すると、どのように挙動が変わりますか?
設定値を小さくすると短期の動きをより敏感に捉えられますが、ノイズも多くなります。逆に大きい値では長期トレンドに沿った動きとなりますが、短期的な売買タイミングを逃しやすくなります。
どのようなマーケット状態のときに遅いMACDの設定の使用を検討すべきですか?
遅いMACDの設定は、よりボラティリティの高い通貨ペアのトレードで非常に役立ちます。例えば、ドル/南アフリカランド、英ポンド/豪ドル、カナダドル/円などです。これらの相場に適用した遅いMACDの設定は、ダマシのシグナルを避けるために有効でしょう。
さらに、遅いMACDの設定は英ポンドのクロスに特に役立ちます。これらの通貨ペアはより価格が高いため、同じ数の保有ポジションで比較した場合、他のペアよりも大きな証拠金が必要です。
MACDの設定値を変えるメリットはありますか?
相場環境や時間足に合わせて設定値を変更することで、より精度の高いエントリーが可能になります。自分のトレード手法に合った設定値を見つけることが重要です。
まとめ
MACDはシンプルで使いやすい指標であり、初心者の方でも簡単に取り入れられます。一般的な設定値は、短期EMAを12、長期EMAを26、シグナルを9と設定することが多いでしょう。この設定値であれば、トレンドの特定や売買シグナルを捉えやすくなります。
ただし、エントリーとエグジットのポイントを判断するために、違う設定値を採用して2つのMACDを利用することも選択肢の1つです。また、MACDは単独で利用するよりも他の指標と組み合わせることで、より精度の高いトレードシグナルを得られるようになります。そのため、自分のトレード戦略に合わせた指標を使いこなすことが大切です。
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