※2023年11月27日12時14分更新
日本の10月インフレ率が前月比で大幅に上昇したにもかかわらず、ドル/円は小動きにとどまった。とはいえ、日銀が金融政策の「正常化」に向けて動き出すことも考えられ、ドルの下振れリスクが高まっている。
円に関するニュースと分析
- 日本のインフレ率、前月比で10年ぶりの上昇率
- 休暇シーズンの薄商いの中、極端な円ショートポジションが試される
- 米GDP、PCE発表までドル/円は横ばいの展開か
- このレポートは、チャートパターンと主要なサポート/レジスタンスを使用して分析しています。テクニカル分析に関する詳細については、当社の学習コンテンツをご覧ください
日本のインフレ率、10年ぶりの上昇率
10月の日本の消費者物価指数(CPI)総合指数は3.3%上昇と、9月の3.0%上昇から伸びが加速したが、世界的な指標であるコアインフレ率(食品やエネルギーなど変動の大きい項目を除いたインフレ率)の伸び率は4.2%から4%に低下した。しかし、今回のデータで特筆すべきは前月比の数字で、年末に向けてインフレが顕著に加速していることが明らかになった。日本銀行の植田和男総裁は以前、政策の正常化、つまりマイナス金利の撤廃を決定するのに十分なデータを年末までに入手できるだろうと話していた。
下図は、日本のインフレ率の前月比での推移を示したもので、一進一退を繰り返しながらも値を切り上げてきている。日銀は、需要主導で押し上げ圧力を高水準で持続できるかどうかを見極めるうえで、インフレ率と賃金上昇率のデータを注視している。
日本のインフレ率(前月比)
資料:Refinitiv、チャート作成:リチャード・スノー
下図の円指数チャートからも分かるように、円相場は先週の上昇分の大半を失った。円指数は、4つの主要通貨ペアで構成される均等加重指数である。
円指数(ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円、豪ドル/円)
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
ドル/円はほとんど動かず、レジスタンスを試す
ドル/円は23日、横ばいで推移し、2日連続で始値と終値がほとんど変わらない展開となった。価格は先週上昇しており、週足では再び150付近を上限に上昇する勢いだ。
50日単純移動平均線はサポートとして機能していたが、現在はレジスタンスに転換し、価格の上値を抑えている。今週の米国内総生産成長率(GDP)やインフレ率が予想を下回る内容となった場合、ドルは再び下落に転じる可能性がある。欧州連合(EU)のGDPは昨日下方修正された。米国は欧州と同じ轍を踏まないことを望んでいるが、警告のサインは出ている。
ドル/円 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
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ポジション状況は依然として大きく円ショートに傾き、ドル/円のロングは過密状態
最新のCoT(大口取引報告)によると、スマートマネーのポジション状況は過去3年間と比較して、依然として大幅なショートとなっており、その差はさらに拡大しているようだ。リスクなのは、政府・日銀が喫緊で為替介入を実施する可能性は低いものの、ドル/円の上値余地が、市場が注目している150までに限られているように思われる点である。また、ドル/円が急落した場合、ロングポジションは整理を余儀なくされ、さらにドル安に動く可能性も否定できない。米国は経済指標が軟化しており、景気回復のスピードが米国より遅い他の主要国と同じ方向に向かっているため、圧力を受けているドルにはまだ下落余地がありそうだ。
資料:Refinitiv、チャート作成:リチャード・スノー
今週のドル/円は、水曜と木曜にそれぞれ米GDPと個人消費支出(PCE)が発表されるまで、方向感のない展開となるかもしれない。
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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