※2024年1月12日11時56分更新
金価格とナスダック100は現在、リスクリターンの魅力が低下している。米国のインフレが粘り強く、労働市場が底堅いため、今年見込まれている積極的な利下げを実施できない可能性が出てきたためだ。
ナスダック100、金価格の見通し
- 最近の米経済指標を受け、金価格とナスダック100は現在、リスクリターンの魅力が低下
- 米国のインフレ率が目標の2.0%を上回り、労働市場が並外れた回復力を見せていることから、FRBの姿勢は短期的にタカ派的な方向にシフトし始める可能性がある
- 目先はFRB当局者による発言がカギを握る
11日に米国で発表された最新の消費者物価指数(CPI)と新規失業保険申請件数の結果を受け、金価格とナスダック100指数はさらに下降するリスクが出てきた。つまり、貴金属と同指数の史上最高値の更新はもう少し先になるかもしれない。
インフレ面では、2023年12月の米CPIの伸び率が3.1%から3.4%に加速し、予想を上回った。労働市場のデータに関しては、先週の新規失業給付申請件数が過去3カ月で最低の水準に落ち込み、失業者数は引き続きかなり抑えられていることが示された。
米経済指標データ
消費者物価が米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2.0%を大幅に上回り、雇用市場が並外れた回復力を見せていることから、FRBは2024年の大幅利下げに消極的になるだろう。年内の利下げ幅は135ベーシスポイント程度と予想されているため、これは市場に衝撃を与える可能性がある。
この日の米国債利回りは直感に反して低下したが、これは11日のデータに関連した動きではなく、米国が英国とともにイエメンの反政府武装勢力フーシに対する空爆を実施する可能性があるとの報道を受け、安全資産に対する需要が高まったためだと見ている。
地政学的リスクは常に不確定要素だが、今回の事態は、中東におけるより広範な地域紛争にエスカレートすることなく、収束するはずだ。この点から、事態が一旦落ち着けば、米国債利回りは再び上昇する可能性が高いが、その軌道をよりよく把握するために、トレーダーはFRB当局者の発言を注意深く見守る必要がある。
下図は、CPIの総合指数とコア指数を用いて最近のインフレ動向を示している。
資料:BLS
最近の経済指標や経済環境を考慮すると、FRBの姿勢がよりタカ派的な方向にシフトし始め、政策立案者がディスインフレに関するより多くの証拠が必要だと主張し3月の利下げに反対しても、驚くべきことではない。そうなると貴金属やハイテク株はかなり弱気ムードになる可能性がある。
先に述べた理由から、金価格とナスダック100指数のリスクリターンは現時点では魅力的に見えない。新たな情報が入り見通しが変わる可能性はあるが、トレーダーは今のところ慎重を期すべきであり、やみくもに不審な上昇を追うことは避けるべきである。
--- DailyFX.com マーケットストラテジスト ディエゴ・コルマン著
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