※2023年15時29分更新
金価格見通し
- 12日の金相場は、今後数日間に影響力の大きい経済イベントを控える中、不透明感から下落した
- 市場は、今週発表の米インフレ指標とFRBの金融政策に注目している
- 本記事では、短期的に注目すべき重要な金/ドルのテクニカル水準について見ていく
12日の金先物相場は前週末比約0.3%安の1,970ドルと、小幅安で取引を終えた。米国債利回りが緩やかに上昇し、今週は影響力の大きい米経済イベントを2つ控えていることが買い手控え感につながった。13日（米国時間）に5月の米消費者物価指数（CPI）、14日（米国時間）には米連邦準備制度（FRB）の金利発表を控え、様子見ムードが広がっている。
まず、一つ目のイベントを見てみると、5月の米CPI上昇率は前年同月比4.1％と、4月の4.9％から低下すると予想されており、FRBにとっては好ましい展開と言える。しかし、変動の大きい品目を除き、長期的な物価水準を反映しているCPI総合指数は、5.5％から5.3％と、わずかに緩和されたのみとの見方が多く、より広範なトレンドとしては引き続き、インフレが高止まりしていることを示唆している。インフレ率の持続的な上昇は、FRBに長期にわたって制限的な金融政策の維持を強いる可能性があり、貴金属にとっては逆風となる。
今週2つ目の主要なイベントは、米連邦公開市場委員会（FOMC）会合での米金融政策の決定である。市場では、FRBは金利を現在の水準である5.00－5.25%に維持すると見られているが、米国経済の回復力の強さを鑑みると、7月には利上げが再開され、金利の据え置きは短期間で終わる可能性がある。先行き不透明感が増しているため、トレーダーはマクロ経済見通しだけでなく、フォワードガイダンス（先行き指針）を注意深く見守る必要がある。
経済指標イベント全体は、DailyFX経済指標カレンダーをご覧ください。
テクニカル分析入門
市場センチメント
推薦者： ディエゴ・コルマン
FRBが利上げを見送った場合、その後FRBはよりタカ派的な引き締め政策に動くかもしれない。例えば、最新のドットプロット（FOMCメンバーによる金利予想分布図）は、2023年に1回または2回の25ベーシスポイントの追加利上げが実施され、2024年に利下げはないとの見方を反映している。金利が以前の予想より高い水準となり、来年の利下げが実施されないとなれば、米国債利回りは上向き、それに伴いドルが上昇することになるだろう。このような環境下では、金相場は最近の軟調な動きから、意味のある上昇に転じるのは難しいように見受けられる。
金相場のテクニカル分析
金相場の最近の下落は、中期的な上昇トレンド局面における調整の動きのように見えるが、価格が2022年11月以来、金相場を上昇に導いてきた上昇トレンドラインを下方ブレイクすれば、市場のバイアスは弱気となる可能性がある。トレーダーは今後数日間、1,960ドルの水準を意識して値動きを注視する必要がある。
考えられるシナリオとしては、金先物が1,960ドルを割り込んだ場合、買い手が手を引いてポジションを整理するため売り圧力が増し、2022年9月から2023年5月にかけての上昇のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準1,905ドルを目指す可能性がある。さらなる下降局面では、1,880ドルに焦点が移る。
一方、金相場が現在の水準で値固めし、上昇に転じる場合は、1,980ドルが最初のレジスタンスになりそうだ。このレジスタンスを上抜けると、買い意欲が再燃し、心理的水準2,000ドルを目指して上昇する道が開けそうだ。
金先物 テクニカルチャート
資料：TradingView
--- DailyFX.com マーケットストラテジスト ディエゴ・コルマン著
