※2023年11月7日13時59分更新
6日のニューヨーク原油先物相場は、序盤の上昇を維持できず、下落に転じた。100日移動平均線を下回る水準では、さらなる下落の可能性がありそうだ。
原油価格見通し
- サウジアラビアとロシアが自主減産を再確認したが、5日のニューヨーク原油先物相場は序盤の上昇を維持できなかった
- ベネズエラは、増産のため民間企業との取引を検討中
- IGクライアントセンチメントによると、WTIを取引するトレーダーの79%が現在、ネットロングを保持している
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サウジアラビアとロシアが5日、供給削減する方針を確認したと伝わると、本レポート執筆時点で原油先物相場は約1.3%上昇した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国の2国は、2023年末まで自主減産を継続する方針を確認した。
原油減産は2024年まで延長?
米国や欧州の大半(最近の購買担当者景気指数PMI)ですでに見え始めている景気鈍化の兆候を考慮すると、自主的な減産が2024年第1四半期(1-3月期)まで延長される可能性は十分にある。OPECは継続的に、価格の安定と石油市場に均衡をもたらすことを目標に掲げているため、需要と世界的な成長が鈍化すれば、2024年にも削減が必要になる可能性がある。
ベネズエラ、生産量回復に向けて油田会社と協議中
最近の(一時的な)制裁解除は、OPECが予告していたように市場に重大な影響は与えていない。ベネズエラ政府当局が制裁を受けているのは、生産水準の低下とインフラ整備の不足が原因である。米エネルギー・サービス会社ベーカー・ヒューズが最近発表したリグ稼働数によると、ベネズエラでは2014年に80基稼働していた油田掘削機が現在は1基しか稼動していないという。これが、OPECが指摘していた要因であり、前回の石油レポートでも取り上げたように、この状況は生産量を急速に拡大する障害となり、石油供給に重大な影響を与える。過去1カ月間に原油価格が急騰したことを考えると、当初、ベネズエラ産原油の流入は価格下落につながるかもしれないと期待されていた。
資料:Refinitiv、ベーカー・ヒューズ社の国際リグカウント
報道によると、ベネズエラ政府当局者は増産のため、小規模の民間石油会社にベネズエラ国営石油会社PDVSAの一部の油田を運営する提案を持ちかけたという。情報筋によると、PDVSAとの取引再開を打診した企業の中には、ベネズエラ軍が所有する石油・採掘サービス会社カミンペグを紹介された企業もあるという。米国による制裁が緩和される前、PDVSAは、破損・盗掘された設備を救出するために選ばれた有力企業のひとつ、地元企業のオペラドーラとともに、坑井やリグを増やして生産量を回復する計画を立てていたようだ。今後数週間、この提案がどのように進展するか、また制裁緩和が今後も続くのかどうかに注目したい。
原油価格にとっての経済指標と今後のリスク
今週は経済指標の発表が少ないが、中国の貿易収支(10月)の発表があり、中国経済が正しい方向に進んでいるかどうかに注目が集まる。世界貿易における中国の輸出市場の重要性を考えると、輸出もまた重要であり、世界経済が健全かどうかをも示すことになる。先週は、中国の製造業関連データが芳しくなかったことに加え、アップルの中国での売上が予想を下回ったため、市場参加者は再び警戒感を強めている。
しかし、興味深いのは、2023年の中国経済が浮き沈みしているにもかかわらず、中国が備蓄の回復と補充を図っているため、石油の購入と需要が高水準を維持していることだ。これは明らかに、需要の落ち込みがまだ実感されていないことを意味するが、中国が在庫水準に満足すれば、実感するかもしれない。そうなれば、中国からの原油購入量が経済状況をより反映するようになり、需要の落ち込みが原油価格を押し下げる可能性がある。
市場を動かすすべての経済指標やイベントについては、DailyFXカレンダーをご覧ください。
テクニカル分析見通しとまとめ
テクニカル分析の観点からは、米原油先物指標のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)はここ5日間、狭いレンジで取引されているが、依然として100日移動平均線を下回っている。現状では、80ドルを割り込むと、78.15ドルに位置する200日移動平均線を試す可能性が出てくる。この水準は、95ドルに達した長期上昇相場が始まった水準でもあり、重要なサポート水準となる可能性がある。
あるいは、ここから上昇した場合、82.92ドルが当面のレジスタンスとなり、その後は84.60ドルに位置する20日移動平均線と心理的水準85.00ドルに注意が向けられるだろう。
WTI原油先物 日足チャート - 2023年11月6日
資料:TradingView
注目すべき主要レベル
サポート水準
- 80.00
- 78.15
- 76.95
レジスタンス水準
- 81.71
- 82.92
- 84.60
IGクライアントセンチメント
IGクライアントセンチメント(IGCS)指標によると、原油を取引する79%のトレーダーが現在、ショートポジションを保有している。DailyFXで集計しているIGCSは群集心理に対して逆張り的な見方をしている点を考慮すると、原油価格は今後も下落し続ける可能性がある。
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変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 0% | 3% | 0% |
週次 | -2% | 8% | 0% |
--- DailyFX.com ザイン・バウダ著
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