米ドル相場(為替)第4四半期の概要
米ドル指数(DXY)で示される米ドル相場は、第4四半期に入ってから上昇に転じ、一時は約1年ぶりの高水準となった。米ドルの上昇を下支えしたのは、米国債利回りが安定的かつ一貫した上昇を見せたことで、これは米連邦準備制度理事会(FRB)が物価を安定させるために、金融引き締めを今後も維持するとの観測に後押しされたものだった。
その一方で、米ドル上昇の勢いは長くは続かなかった。10月初頭に2023年の最高値を更新した直後にDXYは下落に転じたが、これは発表されたインフレ率が控えめだったことを受けて、米国債の実質利回りと名目利回りが急落したためである。
インフレ圧力が後退したことで、マーケットは米連邦公開市場委員会(FOMC)の次の緩和サイクルを見越して、今後数年間に実施されるだろう積極的な利下げを織り込み始めている。FRBは当初こうした方向転換への圧力に抵抗していたが、昨年12月の会合ではこれに屈する形で、「利下げを検討し、議論している」とした。
FRBの方向転換は、米国債利回りの低下を加速させ、米国債(2年物)利回りはサイクルの高値の5.25%から大きく後退して4.40%を割り込んだ。これと同様に、数週間前には心理的な水準の5.0%を突破する勢いがあった米国債(10年物)利回りも、節目となる4.0%を割り込んだ。このような状況で、DXYは急落して昨年8月以来の最安値を記録した。
次の図は、第4四半期の米国債利回りの推移を示している。
第4四半期の米国債利回りの推移
出所:TradingView、チャート作成:ディエゴ・コルマン
米ドル相場(為替)2024年第1四半期見通し
FRBが予想に反してハト派的な姿勢へシフトした背景には、米国経済をソフトランディングさせるのに間に合うタイミングで金融政策を転換したいという意図があり、インフレ率よりも経済成長を優先させるという明確なメッセージといえる。このような観測が一夜にして広がることはないだろうが、そう長くはかからずに浸透していく可能性が高いため、米国債利回りと米ドル相場は、少なくとも2024年最初の数カ月間はいずれも低下するというのが、両者が辿る最も可能性が高い道筋だろう。
とはいえ、マクロ経済の動向を探るために必要な最新の経済指標が公表される第1四半期末までには、米ドルに有利な風向きに変わっている可能性がある。
昨年11月と12月の株価高騰のきっかけとなった金融緩和の兆しは、新年に向けて資産効果を増幅させる可能性が高く、結果的に国内総生産(GDP)の主な原動力である家計消費の堅調な推移に一役買うだろう。こうした背景から、中期的に景気が上向く可能性を完全に排除することはできない。
経済成長が再び加速すれば、雇用が増加して労働市場が逼迫し、賃金上昇圧力がかかることが予想される。このような状況になれば、インフレ率は目標値の2.0%を大幅に上回る水準で落ち着く可能性があるが、その一方で、インフレ率の高止まりを受けたFRBは、強力な金融緩和策に踏み切ることはできないだろう。
2023年下半期の消費者物価指数(CPI)や個人消費支出(PCE)コア価格指数の公表を受けて、米国のインフレ率見通しについては楽観的な見方が強まっているが、インフレとの闘いに勝利宣言するのは時期尚早と考えられる。今年、消費者物価の推移に大きな変化が見られたり、上昇基調に転じたりするようなことがあれば、センチメントに激震が走り、政策金利に対するタカ派的な観測が、再び強まる可能性がある。
下図は、2024年の金融緩和に対するマーケットの観測を示したものである。
2024年 FF金利先物予想利回り(限月別)
出所:TradingView、チャート作成:ディエゴ・コルマン
第1四半期後半には米ドルに有利な風向きになる可能性がある
第1四半期から第2四半期へ移行する時期は、FRBにはかつて期待していたほど積極的な利下げをおこなう柔軟性はないという現実に、市場関係者がようやく対処し始めるころかもしれない。こうした新たな現実とマーケットの情勢に適応することで、米国債利回りが緩やかに回復し、米ドルが主要通貨に対して持続的に値を戻すために最適な条件が整っていくだろう。
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