MACDを利用したトレード戦略：トレンドを発見する3ステップ

このページの内容

MACDとは
MACDでトレンドを判断する際の基本的な見方
MACDのメリット・デメリット
MACDを利用してトレンドを発見するためのステップ3つ
MACDを利用したトレード戦略に関するよくある質問
まとめ

※2024年5月30日更新

MACDを用いてトレード計画を利用すれば、トレードの成功率を高められます。特に、トレンドを見極めてエントリーしたいトレーダーにおすすめです。

本記事では、MACD（移動平均収束拡散手法）の概要、メリット・デメリット、MACDを用いたトレード戦略、トレンドの方向とモメンタムの両方を見極めるためにMACDを利用する方法について解説します。

MACDとは

MACDとは、「Moving Average Convergence Divergence」の略で、移動平均収束拡散線と呼ばれる分析指標のことです。長期と短期の移動平均線2本の差を利用して、価格の動きからトレンドの強さを視覚化します。

MACDは、2つの線と1つの棒グラフから構成されています。

MACD線（赤）	短期の移動平均線から長期の移動平均線を差し引いた値を表したもの
シグナル線（青）	MACD線の値を任意の期間（一般的には9日間）で平均したもの
ヒストグラム（緑）	MACD線とシグナル線の差を棒グラフで表している。正の場合と負の場合で色が異なる

MACDは単に価格の上昇と下落を示すだけでなく、トレンドの勢いの強弱も表します。そのため、単に価格の動きを追うのではなく、市場の勢いを先取りしてトレンドに乗り遅れずにエントリーできる可能性があります。

MACDでトレンドを判断する際の基本的な見方

ここでは、MACDの基本的な見方を紹介します。

MACDの正負でトレンドを判断する

MACDの値が正の領域にあるときは上昇トレンド、負の領域にあるときは下落トレンドと判断できます。ただし、単にMACDの値の正負のみで判断するのではなく、以下の点にも注意しなければなりません。

MACD値がゼロ付近で上下していれば、トレンドが明確ではない「レンジ相場」と判断する
MACD値の絶対値が大きい程、トレンドの勢いが強いと判断できる

つまり、MACDの正負でトレンド方向を把握したうえで、さらにMACDの値の大小を見ることで、そのトレンドの勢いを確認できます。MACDの値が大きければ大きいほど、トレンドの勢いが強いということです。

ゴールデンクロス・デッドクロス

MACDのMACD線とシグナル線の動きに注目します。MACD線がシグナル線を下から上に抜けるゴールデンクロスが発生すると、比較的短期間における上昇トレンドへの転換を示唆するため、買いタイミングとみなされます。

反対に、MACD線がシグナル線を上から下に抜けるデッドクロスが発生した場合は、比較的短期間における下落トレンドへの転換を示唆するシグナルとなるため、売りタイミングとなります。

ヒストグラム

ヒストグラムの棒グラフの色によって、上昇トレンドと下落トレンドを視覚的に判断できます。また、ヒストグラムの高さが大きいほど、トレンドの勢いが強いことを示します。一方、ヒストグラムが0に近づくほど、トレンドの勢いが弱まっていることを意味します。ヒストグラムが0を上下に行き来する状態が続けば、レンジ相場に入ったサインです。

ヒストグラムを見ることで、比較的短期のトレンド方向とその勢いを把握できます。ただし、単独での売買判断は避け、他のテクニカル指標と組み合わせて総合的に判断することが重要です。

【関連記事】MACDのヒストグラムについて、さらに詳しくは「MACDヒストグラムとは？正しい見方やトレード手法をプロが解説！」をご覧ください。

MACDのメリット・デメリット

MACDを利用するメリットとデメリットを理解することは大切です。

メリット：トレンド転換の先行指標となる

MACDは移動平均線の交差から生成されているため、トレンド転換の動きを先行して示す指標となります。

また、MACD線がシグナル線を上抜ける「ゴールデンクロス」となると、上昇トレンド転換の兆しとなります。反対にMACD線がシグナル線を下抜ける「デッドクロス」は下降トレンド転換の兆候です。

MACDはトレンド転換の動きを先行して示すことから、エントリータイミングを逃さずトレンド転換に乗れるメリットがあります。

デメリット：ダマシが発生する可能性があり、レンジ相場では機能しにくい

ダマシとは、売買シグナルが発生しても、期待した価格動向と逆の動きに転じてしまう現象のことです。MACDでは、以下のようなダマシが起こりやすい傾向があります。

レンジ相場でゴールデンクロス・デッドクロスが頻発する
価格がレンジを上下しているだけなのに、売買シグナルが連発してしまう
急激な価格変動時に一時的にクロスする

MACDは、トレンド転換の確信を得るためには時間を要する指標と言えます。早期の売買シグナルに惑わされず、慎重に見極めるスキルが必要でしょう。

【関連記事】ダマシを避ける方法について、詳しくは「FXのブレイクアウト手法とは？ダマシの見極め方や4つのステップ」をご覧ください。

MACDを利用してトレンドを発見するためのステップ3つ

トレンドを見つけることは、全てのテクニカルトレーダーが取り組まなくてはならない重要なステップの1つです。難しいタスクに見えるかもしれませんが、MACDを活用すればトレンドの発見に役立ちます。

MACDを利用してトレンドを見つけてエントリーするためのステップは、以下の通りです。

トレンドの方向を見極める
MACDのクロスを使用してトレンド方向にトレードの機会を見つける
MACDの0ラインを使用してリスクを管理する

それぞれ詳しく解説しましょう。

1. トレンドの方向を見極める

トレンドを見極める方法の1つに、200日移動平均線を使用することが挙げられます。買いのポジションを探すトレーダーは、価格チャートへ200日移動平均線を適用し、トレードがその線より一貫して上でトレードされていることを確認します。

以下のユーロ/ドルのチャートは、現在上昇トレンドを示しており、価格が200日移動平均線より一貫して上でトレードされていることを確認できます。この場合、買い手は潜在的なエントリーポイントを判断するステップに進んでください。

2. MACDのクロスを使用してトレンド方向にトレードの機会を見つける

トレードの傾向を確認したら、現在のトレンドと同じ方向で買いのシグナルを探し始めます。上記のチャートでは、価格が200日移動平均線より上にあるため、潜在的なエントリーシグナルとしてMACDのクロスを使用できます。

チャートに示したように、ハイライトした1つ目のMACDのクロスで、ロングポジションのエントリーを検討できます。この時点で、MACD（青）はシグナル（赤）より上にあり、価格は依然として200日移動平均線より上でトレードされています。

3. MACDの0ラインを使用してリスクを管理する

トレンドフォローでトレードする場合、最終的にトレンドがいつ終息するかを予測することが重要です。ユーロ/ドルの上昇トレンドに見られるように、弱気のクロスは上昇トレンドの勢いが減衰しつつあり、方向性が変化する可能性があることを示唆しています。

ロングポジションを持っているトレーダーは、この時点でエクジットを検討できますが、これは一時的な押し目かもしれません。弱気のクロスが起こった場合、下降トレンドを確認するため、シグナルが0ラインとクロスするまで待ち、クロスした時点でトレードをエグジットすることも可能です。

MACDのトレード戦略：勢いを失ったトレンドを見つける

トレンドフォロー戦略は、初心者トレーダーにも経験豊富なトレーダーにも人気があります。多くのトレーダーは、トレンドが終わるところでトレードをエントリーし、トレンドが反転してしまうのを見たことがあるでしょう。MACDを使ったトレード戦略では、終わりそうなトレンドを見つけるために役立ちます。

変化しつつあるトレンドを見極める方法は、MACDのダイバージェンス（逆行）を使用する方法です。ダイバージェンスは通常、この指標が価格とは逆方向に動く場合に発生し、そのトレンドのモメンタムが低下しつつあることを示唆します。

以下のチャートでは、ドイツ株価指数が価格チャートでは高値切り上げとなり、MACDは高値切り下げとなっています。この現象がダイバージェンスとなり、現在のトレンドのモメンタムが低下していることを示す最初の兆候です。この時点でトレーダーは既存のロングポジションを減らす、または手仕舞いを検討すべきでしょう。

また、ダイバージェンスが確認されたら、トレーダーはMACDのクロスを使用して新規注文を検討できます。ロングポジションを持っているトレーダーは、次の弱気のクロス（MACDが下降トレンドにある赤のシグナルを下に抜けたとき）でトレードをエクジットし、反転が起きた場合に被る損失を避けられます。

MACDを使ったトレード戦略は潜在的なエントリートリガーを見極めるためによく使用されますが、ダイバージェンスを確認してエグジットトリガーを判断するうえでも効果的です。エントリーのタイミングは極めて重要ですが、リスク管理を決して怠らないでください。

【関連記事】リスク管理について、詳しくは「FXトレードにおける適切なリスク管理の基礎をプロが解説」を参考にしてください。

MACDを利用したトレード戦略に関するよくある質問

ここでは、MACDを利用したトレード戦略に関するよくある質問と答えをまとめています。

MACD値が正から負に転じた場合、どのようにトレードすべきですか？

MACD値が正から負に転じた場合は、上昇トレンドから下落トレンドに転換したサインです。この場合、売り注文を入れるタイミングですが、MACD値の正負だけでなく、ゴールデンクロス・デッドクロスの確認も大切です。

MACDを使用してトレードをより速くエントリーする方法はありますか？

MACDのクロスはエントリーシグナルを判断する最も一般的な方法ですが、MACDヒストグラムを代替手法として使用できます。この方法はアクティブなトレーダーがよく使用します。

MACDを使用してトレードをエントリーする際、他に便利なツールは何ですか？

他のトレーダーがどのようにマーケットに反応しているかを評価するクライアントセンチメントを、追加ツールとして使用できます。MACDと組み合わせることにより、トレーダーはマーケットの全体像を確認でき、その後MACDを使用して潜在的なエントリーとエグジットポイントを判断できます。

【関連記事】センチメント分析について詳しくは、「FXにおけるセンチメント分析の方法｜分析ツールも2つ紹介！」をご覧ください。

ヒストグラムの形状からどのようなことがわかりますか？

ヒストグラムの形状から、以下のように判断できます。

ヒストグラムの形状	内容
高くなっている	トレンドの勢いが強い
低くなっている	トレンドの勢いが弱い
正から負への転換	上昇から下落への転換を示唆している
負から正への転換	下落から上昇への転換を示唆している