連邦準備制度(FRB)は、1913年に米国議会によって設立されました。FRBの行動や政策は通貨価値に大きな影響を与え、米ドル を含む多くの取引に対しても影響を与えます。ここでは、FRBの歴史、FRBの米ドル への影響、FRBの金融政策の決定を活用した取引方法について紹介していきます。

連邦準備制度(FRB)とは
連邦準備制度は、米国の 中央銀行 で、安定で柔軟な通貨・金融システムを構築することを目的に設立されました。その一般的な責務は、金融政策を決定し、効果的な経済運営を監督し、最終的に公共の利益に貢献することです。
こうしたトップレベルの指示に応えるために、FRBは5つの総合的な機能を果たしています。
- 雇用の最大化、物価の安定、適切な長期金利を促進する
- 可能な限りリスクを低減し、安定した金融システムを構築する
- 金融機関の安全性を高める
- 支払・決済システムの安全性を高める
- 監督的な立場で消費者保護を提唱する
日々の業務を遂行するために、全米を12の連邦準備地区に分け、各地域にはそれぞれ独立した準備銀行が存在しています。これらの地区と加盟銀行は、連邦準備理事会の理事の監督を受けながら、独立して運営されています。



FRBの所有者
FRBは民間機関であると同時に公的機関でもあります。理事会は政府機関ですが、銀行自体は民間企業のように構成されており、加盟銀行が株式を保有し、配当を得ています。
米連邦準備理事会(FRB)の議長
2019年8月現在、米連邦準備理事会(FRB)の議長はジェローム・パウエル氏で、2018年2月5日から同職を務めています。第16代目の議長として就任し、その任期は4年間です。就任前、パウエル氏は、2012年5月25日から理事会の理事を務めていました。また現在、金融政策を担当する 連邦公開市場委員会の議長も兼任しています。
連邦準備制度を構成する銀行とは
12の地区連邦銀行はそれぞれ連邦準備銀行を所有しています。
- ボストン
- ニューヨーク
- フィラデルフィア
- クリーブランド
- リッチモンド
- アトランタ
- シカゴ
- セントルイス
- ミネアポリス
- カンサス
- ダラス
- サンフランシスコ
FRBはその機能に対してどのような説明責任を負っているのか
FRBは、国民ならびに米国議会に対しても説明責任を負っています。議長と連邦準備理事会の理事は議会で証言し、金融政策を決定するシステムは明確で透明性をもたせるように設計されています。説明責任を果たすために、連邦公開市場委員会(FOMC)はすべての会合後に声明を発表します。財務諸表はすべて年に一度、独立した監査を受けており、財務の説明責任を果たしています。
連邦準備制度(FRB)の経済活動に関する主な使命
米国の金融政策は、連邦準備銀行の中核的な使命です。この金融政策の法定目的は、議会によって以下の通り概説されています。
- 雇用の最大化: 連邦公開市場委員会(FOMC)が設定する金融政策は、失業率を低水準に抑え、必要に応じて経済を活性化させて、企業が繁栄し、利益を上げ、より多くの人材を雇用して成長できるようにします。
- 物価の安定: FRBは、長期的にインフレ率が2%になることを物価の安定と定義しています。
- 適切な長期金利: これは、物価の安定と共に機能し、経済が安定しているときには、長期金利は適度な水準に保たれます。
FRBは、金融政策の実現のため、金利や一般的な金融環境に影響を与えます。そのため、FRBの発表や政策変更の前には、米ドルが不安定になることがあります。
連邦公開市場委員会(FOMC)
金融政策は、連邦準備制度の公開市場操作を監督する連邦公開市場委員会(FOMC)によって決定されます。FOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を設定します。FF金利は、銀行が翌日物の貸出に対してそれぞれ提示する金利です。FOMCは金利を操作しませんが、主に3つの方法で影響を与えることができます。
- 公開市場操作: これは、公開市場での国債の売買を意味し、国債を売ることで通貨供給量を減らし、金利を上げることを目的としています。債券を買うことで経済に資金を還元し、金利の低下を目指します。
- 公定歩合: これは、銀行がFRBから資金を借りる際に支払う金利です。この金利が低下すれば、FF金利も低下する可能性が高くなります。
- 準備預金: 銀行は、顧客の預金のうち一定の割合を、引き出しに備えるために保有する必要がありますが、これが「準備預金」です。預金準備率が引き上げられると、銀行は多くの資金を貸し出しできなくなり、より高い金利を要求しなければなりません。預金準備率が引き下げられると、銀行はより多くの資金を貸し出しできるようになり、より低い金利を求めることができます。



FRBのフェデラルファンド(FF)金利は米ドルにどう影響するか
FRBの金利(フェデラルファンド(FF)金利とも呼ばれる)は、連邦準備理事会で設定されます。現在の金利と将来の金利変動に対する予想は、いずれも米ドルの価値に影響を与えます。理事会からの発表にもとづいてトレーダーが金利の変化を予想すると、ドルの価値が他の通貨に対して高くなったり低くなったりすることがあります。
この表は、市場の見通しと金利の変更がドルの価値に与える影響を示しています。
市場の見通し | 実際の結果 | その結果がもたらすFXへの影響 |
---|---|---|
利上げ | 金利据え置き | 通貨の下落 |
利下げ | 金利据え置き | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利上げ | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利下げ | 通貨の下落 |
下のチャートでわかるように、ドルは、2016年12月のFRBの利上げ発表までの間、 円に対して上昇しました。FF金利の誘導目標の引き上げが広く予想されていたからです。このペアは、発表当日の2016年12月14日に118.371付近でピーク を迎えました。
2016年のFRBによる利上げ前後のUSD/JPYのチャート

FRBの金融政策決定を活用したFXの取引方法
FRBの金利変更の決定に備えるために、トレーダーは以下の2つの重要なステップを踏む必要があります。
- FRBからの最新ニュースを追う: FOMCは年に8回の定期会合を開催し、政策や金利について議論し、見解を一致させます。このような会合の前にニュースをチェックしておくことは、金利や為替レートを予想する上で、そして米ドルを買うか売るかを判断するために、最適な方法です。
- マーケットの最新ニュースを追う: 金利で投機する のはあなただけではありません。連邦準備理事会(FRB)の会合や発表を前に、多くのFXトレーダーはその動向を注視しています。他の人の予想や見通しを確認し、自分で考えた理論を重ねられるだけの情報を入手しましょう。
金利決定を完全に正確に予想できる方法はありませんし、サプライズも起こります。FXでは常に自分の身を守ることが大切なので、市場が不利に動いても損失を最小限に抑えるために、事前にストップロスを設定しておくようにしましょう。
取引プランを守ることを忘れずに、損失を許容できないようなトレードは決しておこなわないようにしましょう。トレードはどちらの方向にも行けます。どんなに自分に有利に動くと思っていても、そうならない可能性もあるのです。
FRBとFXに関するまとめ
- トレーダーは、FRBの動向を把握し、FOMCの会合の前後におこなわれる発表に注目する必要があります。
- 中央銀行カレンダーを活用すると重要な会合の日程を確認することができます。
- 米ドルは最も広く取引されている通貨 の一つですが、だからといってリスクがないかというと、そうではありません。損失が出る可能性があることを意識し、トレードは必ず成功するとは限らないことを心得ておきましょう。取引を始めたばかりの方は、FX初心者向けガイド をダウンロードして、基礎を学んでおきましょう。
- 金融政策やFRBの一般的な動向は常に把握しておく必要があります。通貨価値と金融政策 は、密接につながっています。


