9月の米国株は、FRBの金融政策を巡る不透明感や米国「つなぎ予算」の動向が重荷となったが、S&P500指数、NASDAQ100指数の10月の見通しとは
サマリー
- 9月の米国株ふりかえり
- 10月は企業決算に注目
- S&P500指数、NASDAQ100指数の10月の見通し
9月の米国株振り返り
日米欧を含めた多くの中央銀行が金融政策決定会合を開催した。FOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRBが政策金利を「より高く、より長く」する方針であることが明らかになった。FRBの追加利上げ観測が高まり、早期の利下げ観測が後退したことから、米国金利が上昇し、金利と逆の動きをする傾向がある米国株は下落した。
また、米国にて、10月始まる新しい会計年度の予算をめぐり、当面の予算執行を続けるための「つなぎ予算」が成立せず、米政府機関が閉鎖されるとの思惑も米国株の重荷となった。「つなぎ予算」は、9月30日に米連邦議会上下院で可決、その後バイデン大統領の署名を経て成立した。ただし、「つなぎ予算」の可決後、米下院共和党の議員がマッカーシー下院議長の解任動議を提出ことを明らかにしており、今後も米国議会を巡る混迷は米国株の変動要因になろう。
資料:Trading EconomicsよりDailyFXが作成。2023年8月末を100として指数化。9月月間のパフォーマンス。
主要ハイテク株の動向
特に夏場までの米国株上昇の原動力であったハイテク株が米国株市場の下げを主導した。ハイテク株は、企業債務が多い傾向にあり、米国金利が上昇することで、債務の利払いが増加し、企業業績を圧迫するとの懸念から、金利上昇局面で株価が下落する傾向にある。
資料:Trading EconomicsよりDailyFXが作成。2023年8月末を100として指数化。9月月間のパフォーマンス。
10月の米株注目点
10月の米国株は上昇する傾向にある。過去10年間のS&P500指数の月別パフォーマンスを見ると、11月に次いで、10月の米国株は上昇する傾向にある。FRBの金融政策不透明感や米政府機関閉鎖の可能性などを背景に9月のS&P500は下落したものの、9月は例年下落しており、10月の上昇に向けた準備期間とみることもできる。
過去10年間のS&P500指数の月別騰落率(%)
資料:BloombergよりDaily FXが作成
マッカーシー米下院議長の解任動議など米国議会の動向に加え、10月米国株の動向を握る上でもっとも重要なものは、2023年7-9月期の米国企業決算であろう。FRBの積極的な利上げにもかかわらず、2023年1-3月期以降、投資家の事前予想を上回る決算が続いている。第3四半期も良好な決算トレンドが続くかに注目である。良好な企業決算が継続した場合、米国株に対する投資家の見方が改善し、過去同様に米国株が上昇する可能性がある。
資料:BloombergよりDaily FXが作成。予想はBloombergより集計値。
特にハイテク株の企業決算に注目したい。足元のS&P500、ナスダック100などの米国株が調整している背景として、ハイテク株が下落していることがあげられる。エヌビディア、グーグル、アップル、テスラ、フェイスブック、グーグルといった主力ハイテク企業の決算発表に注目である。これらの企業が良好な決算発表を示した場合、主力ハイテク株の上昇とあわせて、S&P500やナスダック100指数が上昇する可能性がある。
S&P500指数の見通し
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 2% | -2% | -1% |
週次 | -7% | 7% | 2% |
S&P500指数は、週足チャートで、MACDラインがシグナルラインを下抜けるS&P500に弱気の「デッドクロス」が示現している。また、3月から7月のS&P500の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準4,302レベルを下方ブレイクしている。テクニカル面のシグナルは、S&P500にとって弱気である。
10月の季節性はS&P500にとってサポート要因であるものの、FRBの積極的な利上げを受けて事前の期待を上回る企業決算が発表されなかった場合、テクニカル面も弱気の中、S&P500は一段と下落しよう。3月から7月のS&P500の上昇の半値戻しの水準である4,208レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、S&P500の下落圧力が一段と強まり、フィボナッチ61.8%水準4,113レベルへの下落が視野に入る。
一方、好決算に伴い、S&P500が上昇した局面では、フィボナッチ23.6%水準4,419レベルを上方ブレイクできるかに注目。上方ブレイクに成功した場合、S&P500の下落トレンド終了の可能性が高まる。
S&P500週足チャート
資料:Trading View
ナスダック100指数の見通し
ナスダック100指数は、週足チャートで、1月から7月までのナスダック100の上昇に基づいたフィボナッチリトレースメント23.6%水準14,696レベルを一時下方ブレイクし、下落圧力が強まっている。また、ナスダック100の下落トレンドへの転換を示唆する「ダブルトップ」パターンが示現している。テクニカル面では、ナスダック100に弱気である。
主要ハイテク企業の決算が期待を下回る内容のものが続いた場合、テクニカル面で弱気の中、ナスダック100はフィボナッチ38.2%水準13,932レベルをトライしよう。
一方、ナスダック100が上昇した局面では、8月28日の週の高値15,619レベルを上方ブレイクできるかに注目。上方ブレイクに成功した場合、弱気パターンである「ダブルトップ」が無効になる一方、ブレイクに失敗した場合、ナスダック100の上値が重いことを投資家に印象付けよう。
ナスダック100指数週足チャート
資料:Trading View
新たなレポートの配信等はtwitterアカウント@DailyFXJapanで確認できます。
-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著