【過去の相場を調査】株価が米国大統領選挙に与える影響とは
株価が米国大統領選挙に与える影響 はじめに
米国大統領選挙の結果には、経済情勢、有権者の背景、投票率、選挙結果を左右する激戦州の結果など、多くの要因が影響する可能性がある。だが、株式マーケットのリターンは影響するのだろうか。
この特集記事では、1932年以降の大統領選挙22回までのS&P500とダウ平均のパフォーマンスを分析する。そして、選挙から1年前と3ヶ月前の平均パフォーマンスと、現職政党の勝敗を比較しながら、2つのインデックスにおけるパフォーマンスを検証する。
株価と米国大統領選挙の関係性の背景
そもそも株式のパフォーマンスが選挙に与える影響を考慮してみる。株式の価格は、企業の一部の所有権を表し、その企業の予想される業績を反映した需要と供給の影響を受ける。一部の株式は配当金を支払い、株主総会での議決権も付与される。ただし、将来的にその株式を売却できる権利を得ることが最重要だと言える。
株価が上昇した場合、保有者は購入したときよりも高い値段で売却することで、利益を得られる。投資家がその企業が将来的により多くの利益を得られると予想し、株式の需要を高めると株価は上昇する可能性がある。株価の方向性を決定する要因には、特定の要因と組織的な要因がある。この記事では、後者、つまり米国経済全体が株価に与える影響について注目する。
S&P500とダウ平均は、IT(情報技術)、不動産、エネルギーなど、経済の主要セクターに異なる比重を置く株価指数である。これらのリターンが選挙に向けてプラスになる場合、投資家が基盤となる事業が将来的により多くの利益を生み出すことを期待している可能性がある。これは経済成長の見通しが明るく、現職の政党が政権を維持する可能性が高くなるからだろう。
反対に、選挙前に株価がマイナスになる場合は、経済成長に対する見通しが悲観的であるためと考えられる。この場合、再選を目指す政党は政権を失うリスクが高くなる可能性がある。もっとも、これらの仮定は、有権者が株式のパフォーマンスを評価している場合にのみ当てはまる。この点については、記事の最後で詳しく述べるが、調査の限界があるとも言える。
株価(S&P500、ダウ平均)の大統領選挙1年前におけるリターン
1932年以降の22回の選挙において、大統領選挙1年前にS&P500とダウ平均のリターンが平均してプラスとなったのは18回である。そのうち、現職が11回勝利している(約61.11%)。株式のリターンがマイナスになったのは残りの4回である。そのうち、3回は現職政党が敗北している(約75%)。詳しくは以下の表を参考にしてほしい。

株価(S&P500とダウ平均)の大統領選挙3ヶ月前におけるリターン
この調査において、選挙の1年前から3ヶ月前に変更した場合を考えてみる。この場合、22回のうち、株式のリターンがプラスになったのは13回である。そのうち11回は現職政党が勝利している(84.62%)。一方、株式のリターンがマイナスになったのは8回である。この場合、現職政党が敗北した回数は7回だ(88.89%)。




株価が米国大統領選挙に与える影響 結論
結論としては、1年前のデータと比較して3ヶ月前のデータは、より一貫した結果を示していることがわかった。選挙日に近づくほど、株式マーケットのパフォーマンスと現職政党の勝利に相関関係がある可能性が高い。ただし、相関関係は因果関係を意味するものではないことに注意すべきだ。有権者は選挙の3ヶ月前に株式を重視し、投票に備えて時事問題に注目している可能性があるからだ。このように、この調査ではいくつかの限界がある。



株価が米国大統領選挙に与える影響の調査の限界について
選挙のサンプルは22回に限定されており、より多くの観測が結果の精度を高める傾向がある。
このデータには、有権者が選挙前後の株式のリターンをどの程度重視しているかは考慮されていない。Gallup社によると、米国人の約55%が株式を保有している(2020年4月現在)。
またこのデータには、選挙年前後における株式の損益との関係性の深さについても考慮されていない。株式のリターンが高いほど現職政党が勝つ可能性が高いのか、またその反対も同様に考慮されていない。