天然ガスは暖房や冷房、発電などに利用できる重要なエネルギー源です。また、製造業における動力源であり、肥料や医薬品などの工業製品では原料にもなっています。現在、天然ガスは世界で最も取引されている商品の一つとなっています。本記事では、天然ガスとは何か、取引可能な資産としての歴史、天然ガス価格に影響を与える要因について説明します。



天然ガスとは何か?何に使われているのか?
天然ガスは石炭や原油と同様に、数百年前に堆積した動植物の死骸が地中深くで圧縮され、さらに地熱や地圧を受けることで生成された化石燃料です。
18世紀の英国でエネルギー源として利用されていた天然ガスは、20世紀以降のパイプライン敷設によって世界中に新たな市場が開拓されました。
天然ガスの歴史と取引価格
天然ガスの歴史は紀元前500年頃の古代中国から始まりました。当時は竹で天然のパイプラインを作り、地上に湧き出た天然ガスを輸送していました。その後、今から3世紀ほど前、18世紀のイギリスで天然ガスが商業化され、家や街灯を照らすことができるようになりました。1816年にはアメリカで初めてガスが製造され、さらに1885年にはブンゼンバーナーが発明され炎の調整が可能になったことで、料理や暖房に新たな可能性が生まれました。
それ以降2009年までの間に、天然ガスの推定可採埋蔵量85万km³のうち8%が使用されたと推測されています。天然ガス価格は、供給過剰、貯蔵量の増加、需要パターンの変化などにより、2010年以降、4ドル(百万英国熱量単位、MMBtu)を下回る水準で推移しています。今では取引商品になっている天然ガスは、以下のような要因によって歴史的に価格が変動してきました。
下のチャートは今世紀以降の大きな値動きと、その原因を示しています。
天然ガス価格(2000~2019年)

天然ガス最大の生産者は?
天然ガスは生産における上位10ヶ国が世界の埋蔵量の約80%を占めています。2018年のデータにおける、それらの地域と平均的な年間生産量(単位:10億立方メートル)は以下の通りです。
- 米国 – 766.2
- ロシア - 598.6
- イラン - 184.8
- カタール - 164
- カナダ - 149.9
- 中国– 138.4
- EU - 118.2
- ノルウェー - 117.2
- サウジアラビア - 102.3
- インドネシア - 86.9
出典:「ザ・ワールド・ファクトブック」、CIA(2018年)
企業別に見ると、2019年時点での天然ガス市場の最大手は、ガスプロム、ロイヤル・ダッチ・シェル、エクソン・モービル、ペトロチャイナ、BPです。



天然ガスの取引価格に影響を与える要因
天然ガス価格に影響を与える主な要因は 需要と供給であり、これは生産量、貯蔵量、経済成長、競合の燃料、天候などの要素が影響します。
生産量
悪天候で掘削が困難になるケースなど、生産に支障が生じることで供給量が減少すると天然ガスの価格が上昇します。
貯蔵水準
天然ガスの貯蔵庫は、需要が高い時に不足するのを防ぐ、または過剰生産分を吸収するなどの役割があります。通常は貯蔵量が少なくなると商品価格は上昇します。
経済成長
経済が好調な時は商業・産業部門がより多くのエネルギーを消費しますので、天然ガス価格が上昇する傾向があります。
他燃料との競合
石炭や太陽光発電など、他のエネルギー源との競合により天然ガス価格が下落することがあります。
天候
寒波や熱波などの気象条件が天然ガスの生産量に影響を与えることがあります。また、天然ガスの需要を高める場合もあります。



天然ガスの取引方法
天然ガスは商品市場での先物やオプション、ETF(上場投資信託)など多くの方法で取引できます。また、スプレッドベッティングやCFDでも天然ガス価格の取引をすることができます。天然ガスの取引方法の記事で安定した取引に役立つテクニカル分析戦略を詳しく説明しています。
天然ガスを取引する理由
天然ガスは世界的にクリーンな化石燃料への需要が高まっていることに加えて、ボラティリティの可能性やマーケットの流動性など、多くの理由から取引対象として人気のある商品です。
成長の可能性
トタルSAやエクソン・モービルといったエネルギー業界の大手企業は、天然ガスの用途や利用可能性を広げるために多額の資金を投入しており、天然ガスの将来性に大きく期待しています。
クリーンな化石燃料としての需要
天然ガスは他の化石燃料である石炭や原油に比べて燃焼効率が高く、さらに二酸化炭素の排出量も少ないため、環境意識の高い現代において人気の選択肢となっています。また、現時点では規制も少ない状況にあります。
技術開発
パイプラインを使用せずに輸送できる圧縮天然ガス(CNG)の大量生産を可能にする技術が開発されると新しいマーケットが生まれる可能性があります。
潜在的なボラティリティ
エネルギー商品に関連する市場は2010年頃から価格が低迷していますが、これらの商品は極端なボラティリティが発生する可能性が常にあり、経験豊富なトレーダーが虎視眈々とチャンスを狙っています。
流動性
天然ガスは人気のある資産のため、マーケットには多くの売り手と買い手が存在しています。この流動性の高さによって、トレーダーが希望する価格でポジションのエントリーやエグジットをできる可能性が高くなります。
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