※2023年6月9日11時12分更新
金、金/ドル、ドル、米新規失業保険申請件数、テクニカル分析 – APAC市場まとめ



ドル安と米国債利回り低下の恩恵を享受する金相場
8日のニューヨーク金先物相場は前日比1.3%高と、1日の上昇率としては5月2日以来、1カ月超ぶりの大きさを記録した。金相場は、ドルが軟化するのにつれ、上昇した。8日のドル指数は前日比0.76%低下し、下落率としては3月13日以来、約3カ月ぶりの大きさとなった。
金は、商品価値の裏付けがない不換通貨(紙幣)と異なり、一定の価値が担保されている資産である。8日は米国債利回り、特に長期債利回りが低下したことに注目したい。米10年債利回りは8日、2.03%沈んだが、その前日には主要中央銀行による予想外の引き締めにより急伸し、3.74%を付けた。このように、ドルの軟化と米国債利回りの低下が重なり、金相場にとっては有利な環境となった。
8日の動きを詳しく見てみると、金融市場は8日に発表された米新規失業保険申請件数に大きな関心を寄せていたことが分かる。3日までの1週間の米新規失業保険申請件数は前週比2万8,000件増の26万1,000件と、市場予想の23万5,000件を大きく上回った。先週からの増加幅としては、2021年11月以来の大きさとなった。新規失業保険申請件数は、米労働市場の現状を我々が知り得る最もタイムリーなデータの一つである。
米失業保険申請件数が予想外に増加したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が7月に再び利上げを実施するとの観測には冷や水が浴びせられた。来週14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、利上げを見送るというのが大方の見方である。景気後退懸念は高まってはいるが、景気は概ね持ちこたえていることから、今回の米失業保険申請件数の結果だけで、差し迫った景気後退不安が市場にパニックをもたらすとは思えない。米国株は幅広く上昇した。
9日の金相場はこのような市場ムードを引き継ぐ可能性がある。週末に向け、経済指標の発表は少なくなるため、金/ドルは引き続き、センチメントの動向に左右されそうだ。
金相場のテクニカル分析
日足チャートを見ると、金相場は主要サポート1,936付近で陽の包み足(抱き線)のローソク足パターンが形成されている。これは、20日単純移動平均線(SMA)が50日SMAを下抜けたことで最近、示現した弱気のチャートパターンであるデッドクロスと相反するものである。このため、今後の動きに注視したい。上昇し続ける場合は、5月の高値が意識されよう。一方、値を切り下げると、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準1,903が視野に入る。
金/ドル 日足チャート
資料:TradingView
--- DailyFX.com シニアストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。