ボラティリティの測定におけるATRの使い方: ポイント
- ボラティリティは指定期間における価格変動の測定値です。
- ボラティリティの測定方法としてのアベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)について説明します。
テクニカル分析はトレーダーに大きな価値をもたらします。
どのような指標も、あるいは指標の組み合わせも、未来を完璧に予測することはできませんが、トレーダーは過去の値動きを使って将来何が起こり得るかについて予想することができます。
本稿では、テクニカル分析の議論を一歩進め、マーケット状態を判断する重要な要素の一つであるボラティリティに焦点をあてます。



ボラティリティがFXトレーダーに与えるリスク
ボラティリティの高い状態が魅力的であることは明らかです。ボラティリティ水準が高いということは、値動きが大きいことを意味し、値動きが大きいということは、潜在的なリターンが大きいことを意味するからです。しかし同時に、潜在的なリスクも大きくなります。
トレーダーはこの状況の全体像を見る必要があります。ボラティリティの高い状態とは、値動きを予測しにくいことも意味します。トレンド反転の予測は一層難しく、トレーダーが相場と反対の動きをした場合、ボラティリティの高い環境における潜在的な損失はより大きくなります。動きが大きいことはトレーダーにとって有利な動きも不利な動きも大きくなるためです。
アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)とは
アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)はボラティリティの測定に関しては他に引けを取りません。ATRはJ・ウエルズ・ワイルダー (RSI、パラボリックSAR、ADX指標の作成者)によって、指定期間における真の値幅を測定するために設計されました。
トゥルーレンジ(真の値幅)は以下のうち最も大きいものとなります。
- 現在の期間の高値から、現在の期間の安値を引いた値
- 現在の期間の高値から、直前の期間の終値を引いた値
- 現在の期間の安値から、直前の期間の終値を引いた値
ボラティリティを測定することが目的であるため、上の計算を使用して得られた絶対値が「トゥルーレンジ(真の値幅)」を決定するために使用されます。値が正になるか負になるに関わらず、上の3つのうち最大のもの(絶対値)が「トゥルーレンジ(真の値幅)」となります。
上の値を計算したら、足元の変動を平滑して見るため一定期間(通常は14期間)の平均を出します。その数字がATRです。
下のチャートでは、ATRを追加し、値動きのレンジが大きくなるとATRの指標の値が大きくなる様子を示しています。
GBP/USD (2020年1月~8月)ATR適用

TradingViewでチャート作成:James Stanley
FXにおけるATRの使い方
ATRの測定方法を修得後、トレーダーはATRを次のいずれかの方法で戦略に組み込むことができます。
- 採用する戦略または手法を決定するボラティリティフィルター
- トレードを開始する際にリスクを測ったりストップまでの値幅を測定したりする
FXにおけるボラティリティフィルターとしてのATRの使い方
ボラティリティの低い環境においては、2つのアプローチ方法があります。
単純にボラティリティの低い状況の継続を探すか、またはその状況の変化を探す方法です。つまり、トレーダーはボラティリティの低い状況に対し、レンジ取引(ボラティリティの低い状態の継続)またはブレイクアウトでのトレード(ボラティリティの上昇)の手法を採ることができます。
2つのトレードには大きな違いがあります。レンジ取引では、レジスタンスラインで売りサポートラインで買いますが、ブレイクアウトでのトレードではその逆をおこないます。
さらにレンジ取引では通常ストップを置くために明確に決められたサポートラインとレジスタンスラインがありますが、ブレイクアウトでのトレードにはそれらがありません。ブレイクアウトでのトレードは潜在的に大きな動きにつながりますが、成功の可能性は低くなります。要するに、ダマシのブレイクアウトが数多く存在し、ブレイクアウトでのトレードにはより高いリスク・リワード比率(成功率の低さを埋め合わせるため)が必要となります。



FXにおけるリスク管理のためのATRの使い方
初心者トレーダーにとって最初の難題は、新しいポジションを仕掛ける時に口座資産を保護するためのストップをどこに置くかを知ることです。ここでATRが役立ちます。
ATRはマーケットの値動きにもとづくため、その指標はボラティリティに比例します。これによりトレーダーはボラティリティの高い相場ではより広いストップを使用し、ボラティリティの低い環境では狭いストップを置くことができます。
ATRは通貨ペアと同じ価格形式で表示されます。EUR/USD上の「0.00458」という値は45.8ピップスを意味します。USD/JPY上の「0.455」は45.5ピップスを意味します。ボラティリティの増減とともにこれらの値も増減します。
トレーダーは、これを指標(ATR50%など)として、または直接的な指標の値として利用し、ATRの値にもとづきストップを置くことができます。ここで鍵となるのは、この指標の値は最近のマーケットの状態を反映しており、この指標を使用するトレーダーによる調整を可能にする点です。