※2023年4月28日16時05分更新
ドル、円、ドル/円 - 値動き
- 日銀は、イールドカーブ・コントロール政策を中心とした大規模緩和政策を維持
- 日銀は、先行きの政策指針であるフォワードガイダンスを廃止
- ドル/円は、最近確立されたレンジの上限に向かって上昇中



28日アジア時間の外国為替市場で円相場は、日銀(BOJ)が大規模緩和政策の継続を決めたことを受け、下落した。特に注目されていたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策は維持したものの、現状またはそれ以下の水準に維持することを約束したフォワードガイダンス(先行きの政策指針)は廃止した。
日銀の金融政策決定発表の約1時間前、日経新聞が「日銀はYCCの修正は見送るが、追加緩和の可能性についてフォワードガイダンスの表現を変えることを検討している」と報じたことから、ドル/円は乱高下していた。
ドル/円 5分足チャート
資料:TradingView
植田和男日銀新総裁が今月初めの就任記者会見で、イールドカーブ・コントロール(YCC)を中心とした大規模緩和政策の変更を急がないことを強調したため、きょう開催の日銀会合に向けた市場の期待は高くなかった。しかし、大規模な景気刺激策から最終的に撤退する準備として、フォワードガイダンスの微調整を予想する声も聞かれていた。
日銀が市場にサプライズを与えることは珍しいことではないと考えると、1週間物のドル/円のリスクリバーサルは大きく円選好に偏っており、オプション市場がタカ派的の日銀政策を予想していたことを示唆している。日銀は昨年12月に10年物国債金利の上限を引き上げて市場を驚かせた。1月に上限がさらに拡大されるとの憶測があったが、日銀は静観した。
ドル/円 25%デルタのリスクリバーサル1週間物
チャート:エクセルで作成、資料:ブルームバーグ
日本のインフレ率は引き続き、日銀の目標値である2%を上回っており、先週発表された3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.2%上昇と、2月(同3.3%上昇)から軟化した。新総裁は大規模緩和政策を維持する論拠として、最近のインフレ圧力はコストプッシュ型(生産コストの上昇による起こるインフレ)であり、一過性であることが証明されるとの予測を挙げている。
また植田氏は今月初め、YCC政策を大幅変更する前に、経済、物価、金融の動向を見て決めるべきだとの考えを示した。同時に、日銀は金融政策の正常化が遅すぎないようにし、6月の会合では政策を微調整する可能性も残しておくべきだとも述べた。今後の焦点は、きょう28日夜(日本時間21時半)に発表される3月の米個人消費支出(PCE)価格指数、3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合、4日の欧州中央銀行(ECB)理事会に移る。ドル/円の上昇が持続可能かどうかは、来週の米連邦準備制度理事会(FRB)会合でのFRBの姿勢次第だろう。
ドル/円 日足チャート
資料:TradingView
テクニカルチャートでは、ドル/円はここ数週間、基本的には方向感のない展開となっているが、最近の記事で指摘したように、全体的には弱気なままとなっている。「円が上昇する時が来た?:日銀会合を控えたドル/円、ユーロ/円。豪ドル/円の見通し」(4月21日付記事)、「円相場の週間見通し: 対ドルで上昇型のトライアングルかダブルトップか?」(4月17日付記事)をご参照ください。
ドル/円を短い時間軸で見ると、逆流の動きが見られるようだ。価格は、240分足チャートの右肩上がりのチャネルに反映されているように、3月末から見通しはわずかに上向きになっている。直近では、4月中旬以降、下降トレンドが続いている。
ドル/円 240分足チャート
資料:TradingView
3月からの水平トレンドラインである135.00付近、あるいは4月中旬の安値132.00を上方ブレイクしない限り、価格は横ばいで推移することになりそうだ。135.00を明確に上抜けた場合、3月の高値138.00に向けて上昇する可能性が開かれ、132.00を下抜けた場合、1月の安値127.20に向かって下落するリスクが出てくる。
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--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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