米国株式市場 – トーキングポイント
- 8日のS&P 500、NYダウ、ナスダック100は不安定な値動きで始まったが、欧州中銀による利上げの幅が過去最大だったにもかかわらず、上昇して取引を終了
- パウエルFRB議長はインフレ抑制の重要性を強調し、タカ派的な発言を繰り返した
- 来週の米CPI、再来週のFOMCに注目が集まる
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8日の米国株は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて下落して始まった。ジャクソンホール経済シンポジウムの時と同様、パウエル議長はインフレの抑制に「コミットしている」と表明し、売りを誘った。
パウエル議長はこの日行われた米シンクタンク、ケイトー研究所の金融政策に関する討論会で、同機関の独立性を再確認する一方、物価の安定はFRBの責務であることも改めて強調した。議長は、労働市場の需要が非常に強い状態が続く一方で、賃金は高止まりしており、FOMCはまだインフレを抑制できていないと指摘した。そして、この点に関しては、9月3日に終わる週の新規失業保険申請件数が5月以来の低水準に達し、ポジティブサプライズとなった。
パウエル議長のタカ派発言直後の市場の反応は予想通りだった。米国債利回りが上昇し、ドル高が進み、株式などのリスク資産は売りに押された。しかし、取引時間が進むにつれ、米国株は一進一退の展開となり、結局上昇して取引を終了した。
他のFRB高官が金融引き締めを継続し、市場のインフレ期待を注視する必要があるとコメントしているにもかかわらず、買い手は金利上昇のリスクを軽視しているかのように見える。
8日午前、欧州中央銀行(ECB)は高騰するインフレに対抗するため、予想通り75ベーシスポイントの利上げを実施した。記者会見でタカ派的な姿勢を示したラガルドECB総裁は、将来の利上げについての明確な指針は示さなかったものの、ECB高官はインフレ率を目標の2%に戻すためにさらなる積極的な引き締めを実施する可能性を排除しなかった。その背景には、最新のユーロ圏消費者物価指数(CPI)が9%を超えていたことがある。
8日の米国株価指数は不安定な値動きとなり、取引終了間際に上げ幅を拡大し、プラス圏で取引を終えた。ダウ工業株30種平均は前日比0.61%高、S&P 500種株価指数は同0.66%高だった。セクター別では、一般消費財やヘルスケアが上昇をけん引した。米ゲーム販売ゲームストップの暗号資産(仮想通貨)交換所との新たな提携、新興電気自動車(EV)メーカーの米リビアンとドイツ自動車メーカーの合弁のニュースがS&P 500種指数を押し上げた。テクニカル分析面では、S&P 500種指数 の3,886 と 4,018 の水準は、次の動きを見極めるうえで注目しておくと良いだろう。
S&P 500(ES)日足チャート

資料:TradingView
一方、ナスダック100指数は前日比0.50%高で取引を終了。米バイオ企業リジェネロン・ファーマシューティカルズが公表した眼治療薬の臨床試験結果や、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が業績見通しを上方修正したことが好感された。指数は重要なサポートゾーンからの反発を試みているが、100日単純移動平均線(SMA)を抵抗線に上値が重い。
ナスダック100 日足チャート

資料:TradingView
それにしても、景気減速がより多くの国に打撃を与えるリスクがあるにもかかわらず、世界的に金利が上昇しそうな事態に対し、市場がいかに早くそのプレッシャーを受け流すような態度を取っているかに驚かされる。
今後については、明日9日もFRB高官の発言は続き、より積極的な利上げの意向を市場に印象づけようとするだろう。FOMCまで公的発言を控える「ブラックアウト期間」に入る10日(土)以降は、9月の金融政策決定会合までFRB高官による発言はない。来週9月13日に米消費者物価指数(CPI)が発表されるが、その結果は9月21日のFOMCでの金融政策に影響を与える可能性がある。



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--- DailyFX.com リサーチチーム セシリア・サンチェス-コロナ著