金、XAU/USD、米非農業部門雇用者数の発表、IGクライアントセンチメント – 金相場概況
- 金相場はここ約2カ月で最悪の週に
- 米非農業部門雇用者数の発表が、さらにボラティリティを高める可能性あり
- XAU/USDは個人トレーダーの買い持ち増加のリスクも



週末を間近に控えた金相場は約3.7%下落した水準で推移しており、ここ約2カ月で最悪の週となりそうである。今週、金相場が下落した主な要因はドル高である。今週のドル高は、主に外部要因が起因しているようだ。経済成長に鈍化の兆しが見えた欧州ほか先進国では、金融政策の舵取りが難しく、先行きが不透明感で欧州通貨などには買いが入りにくい状況となった。
7日(木)は、米連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言 が市場心理の改善に重要な役割を果たしたようだ。FRBのクリストファー・ウォラー理事とセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は、米国経済はソフトランディングする可能性が高いと強調した。このFRBタカ派2人の確信に満ちた発言が米ドルを押し下げ、今週初めに大幅下落した金価格はしっかりとした底固めの展開となったようだ。
残り24時間は、さらに興味深い展開となりそうだ。間もなく6月の米雇用統計が発表されるが、市場では非農業部門雇用者数に注目が集まっている。市場予想では前月比26万8000人増が見込まれており、5月の39万人増からは減少している。しかし、より注目されるのは平均時給かもしれない。平均時給(前年同月比)の市場予想は5.0%で、5月の5.2%からは伸びが鈍化する見通しとなっている。FRBがインフレ期待を封じ込めたいのであれば、賃金の伸びを注視することが最も重要であろう。
経済指標の発表と予想との乖離度を示すシティグループ米国エコノミック・サプライズ指数は、依然として深いマイナス領域にある。これはアナリストが経済の健全性を過大評価し、ネガティブサプライズが増える可能性があることを示している。FRBが懸念するのは、企業収益は堅調さを維持しているにもかかわら ず、雇用者数の伸びが鈍化、あるいは減少するという現象が起きることである。これにより、スタグフレーションへの懸念が浮上する可能性があり、そうなった場合は、金相場のボラティリティは高水準で推移する可能性がある。
金のテクニカル分析
金価格は、1787-1810の下値サポートゾーンを下抜けしたことが確認された後、2021年12月の安値1753も割り込んでいる。過去24時間ではトウバ十字線のローソク足パターンを残した。これは、上昇したとしても、今後のさらなる上昇を示唆するとは言い切れない優柔不断な状態を示している。こうした場合、20日単純移動平均(SMA)が重要な上値レジスタンスとして機能する可能性がある。さらに下落する展開となれば、2021年9月の安値である1722近辺がサポートとして意識されるだろう。



金(XAU/USD) 日足チャート

資料:TradingView
金のセンチメント見通し - 弱気
IGCSの指標によると、個人トレーダーの約87%が金を買い持ち(ネットロング)している。IGCSは逆張り指標として機能する傾向がある。トレーダーの大多数が買い持ちとなっており、これは金価格(XAU/USD)が下落し続けることを示唆している。買い持ちは昨日、先週に比べ、それぞれ5.36%、8.29%の増加なっている。現在のセンチメントと最近のポジショニングの変化からは、弱気の逆張りスタンスが増えていることがうかがえる。

*IGクライアントセンチメントのチャートとポジショニングのデータは、7月7日付のレポートから引用しています。
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
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