金価格、FOMC、米国債利回り、ブレークイーブン、テクニカル分析見通し-トーキング・ポイント-



金相場は、FRBによる75 bpsの利上げを受け、オーバーナイト取引時間後に僅かに上昇している。投資家が債券への投資に移行し、国債利回りが再び低下したため、地金価格が上昇する可能性が広がった。5年物国債の利回りは21 bps低下し、米ドル相場の風向きを変えた。米ドル指数(DXY)は0.5%以上下落した。ドル安と米国債金利の低下は、金投資の魅力を際立たせる一助となっている。
FOMCによる金利決定後に国債利回りが下落基調に戻ったことは、パウエル議長が市場の信頼を取り戻したことを示唆している。翌日物金利スワップやその他の市場ベースの利上げ予測指標は、依然として追加利上げを予想している一方で、大幅利上げに踏み切ったことで、債券及び株式の市場ではインフレ懸念が後退したように見受けられる。この利上げの動きは経済成長にも打撃を与えそうである。しかし、FRBの政策が早期に正常化される可能性もある。FRBのドット・プロットでは、利下げが2024年に始まる可能性があると見ている。
FOMCの参加者による夏季の経済見通し(SEP)によると、FRBは、積極的な利上げ実施にもかかわらず、今年のインフレ見通しを上方修正した。2022年におけるPCE(個人消費支出)のインフレ見通しは、4.3%から5.2%に引き上げられた。しかしながら、2023年と2024年の予測の中央値はそれぞれ2.7%から2.6%、2.3%から2.2%へと低下した。とはいえ、ブレークイーブン・インフレ率(市場ベースのインフレ先行指標)はFRBの予測より高い水準のままである。
もっともブレークイーブン・インフレ率は、FRBの最新の動きを市場が織り込むため、今後数日間で低下する可能性がある。その場合、金価格に下落圧力がかかる公算が大きい。先週、消費者物価指数(CPI)が急上昇したにもかかわらず、金価格が直近の高値から大きく離れていることは、金相場を予測するうえで弱気材料となる。それでも、名目利回りが今後数日間、低下し続ければ、金価格は上昇するはずだ。だが、ファンダメンタルズの背景を考えると、持続的な上昇は望めなさそうである。積極的な利上げが継続する公算が大きいとみられる中、債券相場は弱含みの地合いに戻る可能性が高いとみられる。

資料: federalreserve.gov
金価格の テクニカル分析見通し
金価格はオーバーナイト取引時間中に上昇したものの、その勢いはアジア市場の取引時間帯に失速している。RSI(相対力指数)は、オシレーターの中間値に接近した後、下降している。さらに、MACD(通称マックディー)は再びシグナルラインを割り込んだ。心理的に重要な1800の水準は、依然として弱気派にとって有力なターゲットである。1800を割り込むと、さらなる弱気相場への扉が開かれる可能性がある。代わりに強気相場が再来した場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%が上値抵抗線となりそうである。
金価格日足チャート

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--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
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