原油価格見通し、米国非農業部門雇用者数、ウクライナ戦争、中国経済指標に関する要点
- 地政学的緊張とサプライチェーンの慢性的なボトルネックにより、原油価格は強気の見通し
- 米国非農業部門雇用者数と中国PMI(購買担当者景気指数)の数値が原油価格を上昇させる可能性がある
- 原油価格は123.71ドルに向けて上昇しているが、強気相場は続くだろうか
コロンビア大統領選 最新情報 今後の原油価格への影響に注目
日曜日、コロンビア大統領選の投票が開催されましたが、どの候補者も投票率50%を満たせませんでした。左派のポピュリストであるグスタボ・ペトロ氏は得票率40%を獲得し、右派の産業界の大物であるロドルフォ・エルナンデス氏は得票率28%を獲得しています。両者とも過半数を確保できなかったため、6月19日に決選投票が開催されます。
最初の投票を前に、コロンビアペソは米ドルに対して約0.3%下落しましたが、この下落は月曜日にすぐに回復しています。コロンビアペソはさまざまな通貨に対して急騰しており、米ドルに対しては1日で3.4%以上、上昇しています。前日比では2014年12月以来、1日で最大の上昇です。
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ウクライナ戦争 最新情報 ロシア産石油の輸入禁止問題が原油価格の懸念に
EU首脳陣はロシア産石油の輸入禁止に関する合意をめぐって対立を続けており、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、欧米主導の追加制裁を強く求めています。欧州のエネルギー需要と地政学的利益を一致させるためには、まず海上輸入を禁止し、その後パイプラインを禁止する妥協案が成立する可能性があるでしょう。
ハンガリーは、パイプランを先に停止すると内陸国が石油にアクセスできなくなるとして交渉を引き止めており、これまでに妥協案を迫ってきました。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、交渉について「(状況の行き詰まりが)48時間以内に解決することは期待できない」とコメントしています。
この問題が原油価格に与える影響を考慮して、投資家は動向を注視しています。現在、原油価格のベンチマークは1バレルあたり123ドル以上を目指している状況です。世界的なインフレを背景とした追加の供給制限は、各地の経済活動に悪影響を与える可能性があります。
さらに、ECB(欧州中央銀行)が金融引き締めを引き続き計画しており、スタグフレーションへの懸念が高まる可能性もあります。短期的に政治に利益をもたらすことは、長期的に見ると経済損失をもたらす可能性があるため、外交政策が国内の経済活動に与える影響を注視する必要があるでしょう。
一方、ロシアはセベロドネツクとドンバス地方の一部に対して、ロケット弾、空爆、戦車配備による攻撃を続けています。ゼレンスキー大統領は長距離ミサイルシステム「MLRS」の提供を米国に要請しましたが、ジョー・バイデン大統領は拒否しています。モスクワまで達するミサイルの提供は紛争をエスカレートさせて、欧州のNATO加盟国を危険にさらす可能性があります。
NATOはスウェーデンとフィンランドの加盟交渉を支持していないトルコと協議を重ねています。トルコは米国に対して、テロ組織に関連のある北欧2ヵ国を受け入れることへの対処について「具体的な措置」を求めることを明言しました。この問題について詳しくは、前回の記事を参考にしてください。
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中国経済指標 結果次第では原油価格の上昇も
中国の製造業とサービス業のPMIは、それぞれ49.6と48.7に上昇しており、予想された49.0と 45.5を上回りました。総合指数も前回の42.7から48.4に大幅に上昇しています。国有企業(SOE)よりも中小企業に焦点を当てた公式調査であるCaixin(財新)PMIデータは、6月1日に発表される予定です。
これらの指標やその他の経済成長関連指標は、新型コロナウイルス感染症への対策である厳しいロックダウンを考慮して注視する必要があるでしょう。ロックダウンなどの政策が実施されると、金融の中心地である上海と工業の中心地である深センの活動が制限されるため、投資家にとってはより大きな悪影響を及ぼすのではないかと懸念されます。
米国非農業部門雇用者数 数値が著しく弱ければ原油価格への大きな影響も
投資家は週の終わりに米国で発表される一連の雇用統計に注目するでしょう。金曜日には5月の米国非農業部門雇用者数と失業率が重要な指標となります。米国非農業部門雇用者数は4月の42万8,000人を10万人以上下回る、32万5,000人と予想されています。
失業率は4月の3.6%から3.5%に低下すると予想されています。FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ対策に強い姿勢を示していることを考慮すると、多少弱いデータではマーケットが大きく動く可能性は低いでしょう。金融当局が利上げ計画の見直しや後退を検討するためには、経済状況が著しく悪化する必要があります。
またFRBは、過去2年間に5兆ドル以上が追加された9兆ドルのバランスシートの縮小を開始する予定です。金融当局は9月まで保有資産を毎月475億ドルずつ縮小し、その削減額は950億ドルに増加する予定です。このバランスシート縮小が減速する可能性は低く、投資家はそれをすでに考慮しているようです。
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6月の金利先物は、現在のフェデラル・ファンド金利からさらに0.5%の利上げを投資家は予想しています。雇用統計が予想を上回ると、金利の見通しはタカ派的な方向へ傾く可能性が高いでしょう。米ドルは利回り優位性が高くなるにつれて、G10(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア・オランダ・ベルギー・スウェーデン)通貨や新興国通貨に対して上昇する可能性があります。



原油価格 テクニカル分析見通し
原油価格は2月の上昇サポートチャネルラインを再び試した後、20%以上上昇しています。4月の記事で記載したように、原油価格のベンチマークは3つの主要レジスタンスゾーンのうち1つを試して突破しています。114.79ドルをクリアし、現在は123.71ドルの天井に向かっているように見えます。ファンダメンタルズは上昇をサポートしているように見えますが、勢いは弱まるのでしょうか。
原油価格 日足チャート

原油価格 TradingViewでチャート作成
マクロ経済環境を考慮すると、強気相場が加熱した後に冷却期間を経て、再び上昇トレンドが再開する可能性は高いと言えます。RSI(相対力指数)はいわゆる「買われすぎ」に達す勢いを見せています。さらに、123.71ドルの重要なレジスタンスラインを試すことで、冷却期間が開始する可能性があります。