※2023年5月9日10時37分更新。
原油、景気後退、米国戦略的石油備蓄(SPR)、IG顧客センチメント―トーキングポイント
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原油を割安と見ている個人トレーダーが増加
IGグループのプラットフォーム上で実際に行われた取引データに基づいたセンチメント指標であるIG顧客センチメント(IGCS)によると、原油を取引する個人トレーダーのネットロング(原油を買い持ち)の割合が過去と比べても高く、一段のロングの割合の増加余地は限定的であろう。ロングの個人トレーダーの割合が多いことは、原油価格に強気な個人トレーダーが多いことを示唆しているが、IGCSは逆張りの指標として機能する傾向がある。逆張り指標の観点では、今後強気の個人トレーダーが弱気に転換、弱気の個人トレーダーが増える局面で、原油価格が上昇する可能性がありそうだ。現状のIG顧客センチメントの動向は、今後原油価格が上昇する可能性を示唆している。
IG顧客センチメント:原油ポジション動向

資料:IG顧客センチメントより抜粋
原油先物ポジションは原油価格上昇の可能性を示唆
原油先物市場の投機筋によるネットロングのポジションは2016年来の低い水準である。ロングポジションが極端な場合、ポジション解消に伴い、原油価格に下落圧力となる。また、現在はロングポジションが歴史的に低い水準であり、投機筋がロングポジションを積み増す余地がある。ロングポジションの積み増しは原油価格の上昇圧力となり、原油先物ポジションは今後原油価格が上昇することを示唆している。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成
米国戦略的石油備蓄(SPR)による買い支え?
米国の戦略的石油備蓄(SPR)が減少している。米国エネルギー省のグランホルム長官は、大幅に減少したSPRを補充するのに望ましい原油価格の水準は67ドルから72ドルの間、あるいは70ドル以下での推移が長く続くと考えられる時と述べている。現在の備蓄量は、大幅に減少した水準が継続しており、減少したSPRを補充するための介入は行われていない。原油価格が70ドル以下まで低下した際には、SPRの補充のための米国政府からの原油購入の思惑が高まり、強固なレジスタンスとして機能することが期待される。
米国の原油在庫(SPR)の週足チャート

出所:EIA
景気後退は織り込み済み
原油価格低迷の一因として、世界景気の後退懸念が上げられる。世界景気の後退が、原油需要が減少を招くとの思惑から、原油価格の低下圧力になっている。一方、Bloombergが算出する米国景気後退確率(1年以内)を確認すると、景気後退確率は70%近い水準となっている。既に金融市場の参加者は米国景気後退を織り込んでおり、金融市場の先取りする性質から、実際に景気後退局面入りしても、景気後退に伴う原油価格の低下圧力は限定的な可能性がある。

出所:BloombergよりDailyFX.comが作成。
原油価格見通し:上昇を見込む
日足チャートを確認すると、移動平均線は下向きであるものの、RSIは原油価格が一時売られ過ぎの水準に達したことを示唆している。また、中国の経済再開(リオープン)に伴う原油需要の高まりも原油価格の上昇圧力となる可能性があり、水平レジスタンスである80ドルへの上昇を見込む。一方、金融不安や米国債務上限問題に対する懸念が一段と高まった際には、リスク資産である原油価格が下落する可能性もあり、米国政府のSPR補充のための購入の可能性が高まり、3月安値近辺である67ドルまで下落する可能性がある。
原油価格日足チャート

資料:Trading View



-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著