WTI原油、ロシア、サウジアラビア、原油在庫、SPR、OPECプラス、減産―トーキングポイント



ロシアのノバク副首相は6月4日のOPECプラス会合で新たな措置は予想されない旨について言及し、OPECプラスの追加減産に否定的な見方を示した。先日サウジアラビアのエネルギー大臣は、OPECプラスの追加減産の可能性について言及しており、相反する見方を示している。原油価格はOPECプラスの追加減産の可能性が後退したとの見方から下落した。
投機筋の原油ポジション:上昇の可能性
WTI原油先物市場のヘッジファンド等の投機筋のポジションを確認すると、2021年以降、一貫してロングポジション(原油買い持ち)が減少し、原油に強気な投機筋が減少していることを示している。このことは、原油に対して強気に見通しを転換、ロングポジションを積み増し、原油価格の上昇圧力となる可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
ロシアとサウジアラビアは相反する見解であるが、6月4日OPECプラスの会合に向けて追加減産に対する不確実性は継続する可能性がある。追加減産が実際に決定された場合には、原油価格は4月のOPECプラス会合での追加減産決定時のように大きく上昇する可能性がある。



原油の需給
原油価格は需給の影響を強く受ける。原油在庫が高水準であるときは需給の緩みから原油価格は低迷する傾向がある。一方、原油在庫が低水準であるときは需給引き締まりから原油価格は上昇する傾向がある。現状、米国原油在庫は歴史的な低水準である。米国エネルギー省も減少した戦略的石油備蓄(SPR)の補充のために原油300万バレル購入する方針を先週示している。SPRの補充のための米エネルギー省による購入は、今後も断続的に実施することが予想され、原油価格のサポート要因になろう。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
原油価格の上値及び下値の目途
OPECプラスにて追加減産が決定された場合、一段の需給の引き締まりが意識され、現在50日指数移動平均線が位置する74.31ドル、水平レジスタンスである76.92ドル、更には80ドルが上値の目処として視野に入る。一方、米国債務上限問題等により原油価格が下落した場合、心理的節目である70ドル、更に米エネルギー省から戦略石油備蓄(SPR)補充のための原油購入観測が高まる67ドルが下値の目途として挙げられる。
WTI原油価格日足チャート




資料:Trading View
-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著