金、インフレ予想、米CPI、米ドル、テクニカル分析 - トーキング・ポイント



ニューヨーク商品取引所で金先物相場は11日朝方、2021年9月以来の安値まで下落したが、日中の下落分は取り戻し、アジア太平洋地域市場の取引ではやや上昇している。中央銀行が積極的な引き締めに動く中、世界経済の成長見通しは悪化しており、市場は守りの体勢に入った。最新型のオミクロン変異株BA5株への感染が確認された中国では新型コロナ感染症再拡大への懸念が強まっており、アジア太平洋地域市場全体のセンチメントに影を落としている。香港ハンセン指数(HSI)は2日続落している。
米ドルは、投資家が安全資産に逃避する流れから恩恵を受け、それが逆に金価格には下落圧力となっている。米ドル指数(DXY)は現在、3週連続で上昇している。ドル高が進むと、外国人にとって金の購入価格は高くなる。 一方、ユーロと円は米ドルに対してさらに下落しそうである。ユーロ/米ドルは等価(パリティ)に近い水準にあり、米ドル/円は1998年以来の高水準で推移している。
米インフレ上昇でも金の反発は期待薄
金はインフレヘッジ効果があると見る向きがある。インフレ期待が高まっていた2022年初頭には、この仮説は成り立っていた。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)はタカ派的な姿勢を強めており、市場はインフレ率の低下を織り込み始めた。固定利付国債と物価連動国債の利回りの差で求められる米国のブレークイーブン・インフレ率(BEI)は、インフレの先行指標として使用されている。下図は、市場が予想する期待インフレ率と金価格の相関関係を示している。
今週水曜13日に発表される米国の消費者物価指数(CPI)では、6月のインフレ率が上昇となる可能性がある。ブルームバーグの調査によれば、総合インフレ率のエコノミスト予想中央値は前年同月比8.8%上昇となっている。これは、5月からは0.2%の上昇となる。食品とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は、前年同月比6.0%上昇から5.7%上昇に緩和されると見られている。
市場予想を上回った場合、これに呼応する形で金価格は反発するかもしれないが、市場はFRBの反応により関心を持って動く可能性が高いと見ている。金利の上昇は、金利のつかない資産である金にとってはマイナス要因である。全体としては、FRBがインフレ対策に取り組んでいることを考えると、CPIが上昇しても、短期的に金相場を支えることにはならないだろう。

金相場テクニカル分析
金価格は先週、心理的に重要な水準である1800を割り込み、7月1日から4%超下落した水準で軟調に推移している。50日単純移動平均線(SMA)が200日SMAを下回るデスクロスも、相場の先行きに弱気なシグナルとして注目された。
価格は現在、2021年9月の安値(1721.71)付近で推移している。下降すれば、1680の水準付近が下値サポートゾーンとして視野に入ってくる。この水準は、2021年に何度かサポートとなっており、下降トレンドにおいては、トレンド反転を試みる格好の水準として意識されよう。
金レート/米ドル 日足チャート

資料:TradingView
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--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
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