豪ドル見通し:弱気
- 豪ドルは米ドルの動きに翻弄され続けている
- FRBは市場に何かを伝えようとしているが、その行動は影響を与えすぎているようだ
- 不安定な経済情勢で豪中銀は今週、難しい選択を迫られている。利上げは実施されるのか?
豪ドルは先週、豪経済指標とFRB高官による発言を背景に不安定な値動きとなったが、その後は高値追いの展開となっている。
オーストラリアでは、10月小売売上高が前月比0.2%減と、予想(同0.5%増)を大きく下回った。
10月の民間部門信用供与は予想通り、前月比0.6%の伸びとなった。前年同月比でも9.5%増となり、予想と一致した。
10月の建設許可件数は前月比6.0%減と、前月(同5.8%減)よりも減少幅が拡大し、事前予想(同2.0%減)を大きく下回った。
オーストラリア統計局(ABS)は初めて、月次の消費者物価指数(CPI)を発表した。月次値は四半期ごとの発表の間に2回発表され、加重された四半期CPIバスケットの62-73%をカバーする。
物価目標を2-3%とするオーストラリア準備銀行(中央銀行)にとってのCPIの公式数値はこれまで通り、四半期ごとの数値である。10月のCPIは前年同月比6.9%増と、予想(同7.6%増)を大きく下回る結果となった。
とはいえ、これらの経済指標の数値は、市場が注目していた先週30日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演に対する市場の反応に比べれば、ほとんど意味を持たなかった。
パウエル議長の発言に先立ち、FRB高官からは、今後の利上げ幅は過去4回の利上げ幅である75ベーシスポイント(bp)より小さくなることが示唆された。これは、金利市場が数カ月前に織り込んでいた12月の会合での50bpの利上げ実施を支持するものである。
パウエル議長の講演内容は、こうしたFRB高官と同じトーンだったものの、市場の解釈は違ったようだ。米国市場で株式は上昇し、国債利回りは低下、米ドルは急落した。
米ドルの大幅下落でオーストラリアドルは68セントを上回り、13週間ぶりの高値を付けた。年末に向けた今後の展開はやや読みづらくなってきた。
重要な経済イベントとしては、豪中銀が今週6日に政策金利を決定する。市場は、25bpの利上げ実施を50%の確率と見ており、13bpの利上げ実施を織り込んでいる。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、25bpの引き上げを予想する回答者が大半を占めている。12月の理事会後は、豪中銀による理事会開催は来年2月上旬までない。
7日に発表されるオーストラリアの2022年7-9月期国内総生産(GDP)は、前年同期比で6.1%伸びると見られている。これは、インフレは上昇し、実質成長率はマイナスという事実を除けば、素晴らしい数字だろう。
オーストラリア経済は他の多くの国に比べて絶好調であり、豪ドルが60セント近辺にとどまり続ければ、国内経済にプラスに働く。
短期的には、豪ドル/米ドルは国内要因よりもドル相場の動向に左右される可能性が高いように思われる。
今後、FRBによる米利上げ期待が再び高まれば、米ドルはやや堅調に推移し、オーストラリアの輸出業者が再び利益を拡大する可能性がある。
豪ドル/米ドル チャート
資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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